SHARE 加藤孝司 BEYOND ARCHITECTURE “建築家・山口誠の本棚”
photo©Takashi Kato
最近、山口誠の活動が活発だ。これまでも「軽井沢の別荘」(2003年)や「狛江の住宅」(2007年)などの建築作品や、一昨年秋の岡田栄造ディレクションによるDEROLL COMMISIONS vol.1でのDRAWERと名付けられたアートオブジェのような家具、同じく岡田栄造ディレクションのデザインレーベル、リボンプロジェクトでのカトラリー作品など、イマジネーション豊かに、そこに既にある問題や疑問に正面から向きあいながら、それらにデザイナーとしてどう応えるのか。そんな確信とともにユーモアがこめられた小さな驚きと発見にみちた作品を発表してきた。
昨年秋のプロトタイプ展に出品されていた無垢の木材を使用した「WOODEN FRAME」は、木材が本来持つ素材感のありのままの姿にこだわりながらも、単なるクラフトとはまったく異なる作品だった。それは「木」という確たる実存をもったマテリアルと、「無垢」という多様で抽象的な概念に真正面から向きあったそんなプロダクトといえるだろう。
そんな山口誠の最新作である本棚とブックエンドがこのたび発表された。これらの作品はひょうひょうとしていながらも現代アートのような切れ味の鋭さを持ち、ミニマムな佇まいながらとらえどころのないユニークな、いかにも山口誠らしい作品に仕上がっている。
今回のBEYOND ARCHITECTUREは、そんな独自のスタンスで活動を展開する建築家 / デザイナーである山口誠の近況を報告するショート(ショート)インタヴューをおおくりする。
建築家・山口誠の本棚
山口誠による最新作の本棚とブックエンド
photo©清水謙
photo©清水謙
photo©清水謙
Q1:本棚とブックエンドといった新作ですが、それぞれ素材は何ですか?あわせて今回の作品のコンセプトを教えてください。
本棚はスチールをフレームとし、仕上げはホワイトオークです。
ブックエンドはステンレス製です。
本棚が自然にたわんでいる状態を、本棚のデザインそのものにしたいと思いました。
Q2:本棚は最初からたわんでいるようですが、強度はどのように保たれているのでしょうか?本をたくさん並べたらもっとたわんだりするのでしょうか。
棚のたわみが計算されているようで、されていない。それがこの本棚のなんでもないデザイン、意識しないデザインの魅力になっているような気がします。
でもそこは山口さんならではの、そのたわみ具合も、めちゃくちゃに意識されていると思うのですが、このたわみ幅に決めたいきさつを教えてください。
棚板の自重でたわんでいる様にも見え、本を載せすぎてたわんでいるようにも見えるようなたわみにしようと思いました。
A4雑誌を全スパンに載せても、設計上はこれ以上たわまない様になっています。
Q3:最新のプロジェクトを教えてください。
今は東京フォトという日本初のフォトアートフェアの総合的なデザインを行なっています。
空間デザインに加えて、グラフィックも含めたもので、写真の本質的な要素である「光」をテーマに総合的にデザインをディレクションしています。
建築ではある国の大使館の計画、バルコニーを特徴にした集合住宅、素材感を重視したカフェ併設の住宅、80年代に建てられたごく平凡な一戸建て住宅をアパートにリノベーションするプロジェクトなど、いろいろやっています。
去年のプロトタイプ展で発表した「WOODEN FRAME」がもうじき発売になるので、その最終的な調整などもしています。
Makoto Yamaguchi Design
http://www.ymgci.net/
東京フォト
http://www.tokyophoto.org/
photo©清水謙
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