SHARE 白川在建築設計事務所による”栄福寺演仏堂”
以下、建築家によるテキストです。
愛媛県今治市の山あいにある寺院施設である。四国八十八か所巡りの第五十七番札所にあたるこの栄福寺では、毎日多くの参拝者が来られている。ここではこの賑やかな境内と住職の生活が適切な距離を保つことを検討した。
採光を確保しながら、外からの視線を遮るために開口を再考した。通常、開口部は当然室内側と屋外側の位置が一致しており、立面図と展開図は反転した関係となる。しかし、外側の要求と内側の要求は異なり、ここでは素直にそれぞれに従った。外側は隣り合う建物や廻りの木々、見たいと思う檀家の住む街の風景に対して適当なところを開口位置とし、周囲のお堂にも使用されている格子模様とすることにより敷地内で自然な佇まいとした。また内側は、棚の位置や机の位置、人の動作上邪魔にならないところを開口の位置とした。内側と外側の二つの要求により各々決めていったその開口位置を素直に繋げることにより、壁を「そぐ」ような不思議な開口をつくることができる。600㎜の壁をそぐ洞窟のような開口が境内と住職を適切な距離に保ってくれる計画としたい。