


A.C.E. 波多野一級建築士事務所 / 波多野崇が設計した、京都・城陽市の住宅「御旅所の家」です。神社の祭礼時に使われる“御旅所”の隣接地に計画、施主の求める“普遍性”に応える為に地域の風景・素材・スケールを再解釈して設計に反映、街の在り方を引継ぐ事で要望の具現化が目指されました。
「THE HOUSEと呼べる家が欲しい」。それが施主からの最初に提示された要望であった。
言い換えるなら「定番」「ベーシック」「普通」。
これからの住宅が持つべき普遍性を問われる依頼であり、それにどう答えるかが大きな課題であった。
敷地は京都府南部の城陽市。
東西に貫く大通と、そこから分岐するいくつかの路地で構成され、旧市街地には焼杉板と白漆喰を組み合わせた瓦屋根の家が今なお多く残る地域である。その一角、地域を代表する神社の「御旅所」に隣接した土地が計画地である。建物は隣の御旅所に対して威圧感を与えないよう、又地面に近い生活をイメージして平屋建てとしている。
敷地外周に沿うようにコの字型にボリュームを配置し、中心に庭を据え、そこから生活のイメージを展開することで、旧市街地に見られる路地がもつ奥行き感やその生活の雰囲気を敷地内でも表現できないかと考えた。
「THE HOUSE」について考えたとき、 単純な形態の話であれば、四角い箱に三角屋根のいわゆる家形と呼ばれる形態とすべきだったのかもしれない。
しかし建築とは、その土地に根ざし、周囲の環境や時代の影響を受け、街の一部となって形をかえていくものではないかと思う。だからこそ、形にとらわれることなくこの街の在り方を丁寧に紐解き、引き継ぐような家が「THE HOUSE」たり得るのではないかと考えた。
地域が持つ路地の奥行きとその風景、素材から感じられる歴史の積み重なりや、人々が歩く目線における街のスケール感。
それらを拾い集め再解釈し、この住宅にその要素を落とし込こんでいる。