SHARE 山﨑智貴+ハビエール・ビヤール・ルイズ / happenstance collective [HaCo] による、東京・渋谷区の店舗「UPI表参道」
山﨑智貴+ハビエール・ビヤール・ルイズ / happenstance collective [HaCo] が設計した、東京・渋谷区の店舗「UPI表参道」です。店舗の公式サイトはこちら。
東京でも有数のショッピングエリアである、表参道の中心地に位置するこのアウトドアショップの設計にあたり、コロナ渦において特に顕著となった2つの現象について改めて考えるきっかけとなりました。
ひとつは、人々の自然とのつながりへの欲求が急激に増したこと、そして、ふたつめは、物理的なショッピング体験にとって代わろうとしているネットショッピングの隆盛です。
過去20年間、多くのショッピング空間は、インテリア空間そのものの溢れるようなエンターテイメント性と装飾に魅了されながらショッピングを楽しむ場として提示されてきました。しかし、ネットショッピング空間においても、ネット特有のエンターテイメント性や装飾を用いてこれまでの実体験と同程度に魅了される場として提示することが、可能になってきたいま、利便性において大きなアドバンテージがあるネットショッピング空間に対して、これからの実体験におけるショッピング空間においては、表面的なエンターテイメント性や装飾だけで魅了するだけではなく、実体験によってのみ得られる、より意味や学びを含んだ経験や楽しさを伴うショッピング体験が重要な要素となってきています。
空間は、外にいるかの様な本物の自然としての「自然エリア」と、自然を望む建物の内部としての「展示エリア」に分けられ、それぞれを散策するように歩き回ることができます。また、この二つのエリアを分ける、外部から続く斜めの軸線は、意図的に既存構造体のジオメトリーからずらされており、既存建物の外部と内部の境界を上書きするほどの視覚的感覚的な強さとなっています。
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以下、建築家によるテキストです。
東京でも有数のショッピングエリアである、表参道の中心地に位置するこのアウトドアショップの設計にあたり、コロナ渦において特に顕著となった2つの現象について改めて考えるきっかけとなりました。
ひとつは、人々の自然とのつながりへの欲求が急激に増したこと、そして、ふたつめは、物理的なショッピング体験にとって代わろうとしているネットショッピングの隆盛です。
過去20年間、多くのショッピング空間は、インテリア空間そのものの溢れるようなエンターテイメント性と装飾に魅了されながらショッピングを楽しむ場として提示されてきました。しかし、ネットショッピング空間においても、ネット特有のエンターテイメント性や装飾を用いてこれまでの実体験と同程度に魅了される場として提示することが、可能になってきたいま、利便性において大きなアドバンテージがあるネットショッピング空間に対して、これからの実体験におけるショッピング空間においては、表面的なエンターテイメント性や装飾だけで魅了するだけではなく、実体験によってのみ得られる、より意味や学びを含んだ経験や楽しさを伴うショッピング体験が重要な要素となってきています。
北欧を中心とした厳選されたアウトドアブランドを、日本で総代理店として展開するUPIが初めて作る、ブランドコンセプトを表現する場となる旗艦店として、このお店は、自然史博物館などで多くの学びや経験を得られるジオラマと同様に、スタッフによるデモンストレーションやワークショップを通して商品を理解し試すことをコンテンツとした一種のジオラマとして考えられています。
空間は、外にいるかの様な本物の自然としての「自然エリア」と、自然を望む建物の内部としての「展示エリア」に分けられ、それぞれを散策するように歩き回ることができます。また、この二つのエリアを分ける、外部から続く斜めの軸線は、意図的に既存構造体のジオメトリーからずらされており、既存建物の外部と内部の境界を上書きするほどの視覚的感覚的な強さとなっています。
「自然エリア」は人の手の痕跡を可能な限り感じさせない、小川のせせらぎが聞こえる循環する自然の森として庭師山口陽介(西海園芸)の手でしつらえられました。照明デザイナー山口晋司(On&Off)の設計による一日の時間によって調光調色がプログラムされたLED照明システムにより木々の光合成を促し。サーキュレーターと換気システムによって、自然に近い規則性のない空気の動きをつくりだしています。
また、木、石、川や地形に敬意をこめて、手を加えずアウトドアを楽しむように、既存の柱や壁、梁、天井を、建物の歴史が刻まれた「自然」な状態のままとすることで都市の中での自然の一つの形としてその在り様を表現しています。
この一連のしつらえは商品の理解を深めるための自然ジオラマを見せるためだけではなく、室内で長期的かつ日々の絶え間ない木々や小川などのメンテナンスを行うことによって、常に変化する自然に、かかわること、つながることの意味を、より深く理解することに、クライアントであるUPIが挑戦するためのしつらえでもあります。
「展示エリア」は、有機的な「自然エリア」と対照的に、床壁天井を、仕上となる木パネルの規格サイズでジオメトリーを計画することで、秩序と反復によって構成しています。壁と天井はフレキシブルな展示が可能なラワン有孔ベニヤで、床は耐久性の高いロシア白樺耐水合板としています。外壁面の背面をすべて収納とし、大きな面積を必要とする倉庫を設けずに、すべてにの商品の在庫管理を可能としています。
そして、木パネルの規格サイズから来るジオメトリーにそった各所のディテールによって、有孔ベニヤの薄さや、その下地となるLGSが露出し、それが、機能性や仮設性を研ぎ澄ませたアウトドアギアの魅力を備えた空間を表現しています。
クライアントであるUPIのスタッフとアドバイザーの寒川一による、有孔ベニヤに設置される展示は、商品とその商品を物語るモノや写真、映像で構成することで、商品そのものだけではなく、それぞれのブランドの裏にある人間性や思いを表現し、それぞれの深い思いのこもったブランドを日本で代表して扱うことに対しての覚悟をも示しています。
唯一可動する家具として、スツールと展示カウンターがあります。それらは、「自然エリア」と「展示エリア」の中間的な存在として、縄文土器を想起するようなシンプルかつ原始的な形状を、茅葺職人相良育弥が茅で形作り、左官職人都倉達弥が漆喰で天板を仕上げました。
家具を大量生産のものではでなく、茅葺職人や左官職人の様なプリミティブな手仕事をを行う職人によって製作ることは、改めて、UPIの自然に対する人間的なアプローチを形にしています。
■建築概要
題名:UPI表参道
設計:山﨑智貴 Javier Viller Ruiz / happenstance collective[HaCo]
所在地:東京都
主用途:アウトドアギア販売店舗
施工:中田耕平 佐保章次 猪俣真史 / クレアプランニング株式会社
協力:
照明デザイン:山口晋司 青田弥生 / onoff
庭:山口陽介 / 西海園芸
縄文カウンター:相良育弥 / 株式会社くさかんむり
都倉達弥 / 左官都倉
スチール建具:末松貴久 / savor
階数:1階
延床面積:150.0㎡
構造:RC造
竣工:2021年1月
写真:田中克昌
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外装・床 | ウッドデッキ | |
外装・壁 | 外壁 | |
外装・建具 | スチール建具 | 制作(末松貴久 / savor) |
内装・床 | 店内床 | |
内装・壁 | 店内壁 | ラワン有孔ベニヤ |
内装・天井 | 店内天井 | ラワン有孔ベニヤ |
内装・照明 | 照明 | |
内装・造作家具 | 縄文カウンター | 制作(相良育弥 / くさかんむり)(都倉達弥 / 左官都倉) |
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