TANK / 福元成武と磯野信+小松素宏 / 明治大学構法計画研究室の設計・施工による、東京・目黒区の店舗「保護猫喫茶 necoma」です。店舗の公式サイトはこちら。
「保護猫喫茶 necoma」は東急東横線学芸大学駅から徒歩十数分の住宅街の中にある、猫のいる喫茶と美術室である。
また、廃段ボールを用いた新たなリサイクルマテリアルの開発も行った。
段ボールを細かく裁断し水に溶かして押し固め乾燥させると、段ボールに含まれる糊の成分だけで固形化できることを発見した。これを型枠に流し込むことで、コンクリートのように自由造形が可能となる。この素材を利用し、壁付けのキャットステップを制作した。TANKは以前より動物保護活動に取り組む個人や団体を応援しており、本プロジェクトでもこれら家具類一式を寄贈した。
necomaという店名は「猫との間合いを考える」というコンセプトが元になっている。
内装においては間仕切壁や檻といった猫と人とを厳格に区切るような見えの要素を極力排することでこれを実現しようとした。家具についても、段ボールという普段捨てられてしまうものを美しく再利用するということが、”保護猫として”ではなく純粋に猫として接する姿勢と呼応することを企図した。
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以下、建築家によるテキストです。
「保護猫喫茶 necoma」は東急東横線学芸大学駅から徒歩十数分の住宅街の中にある、猫のいる喫茶と美術室である。
既存建物について
計画フロアは三階建テナントビルの最上階のため、斜線制限の切り欠きが内壁の三面に直接表出しており、平面的には単純だが立体的には少し複雑な形状であった。開口部も多数あったが、空間内の明るさは一様ではなかった。
それらがもたらす場の雰囲気の違いや各部の寸法を緻密に捉えて、水廻りを集約した箱を既存躯体に対して斜めに据えた。
斜めの箱によるプランニング
斜めの箱は鉤形の平面を分割し、動物業の運営に必要な4つの区画(玄関・ホール・厨房区画・飼養区画)を箱の周囲に領域付けている。
これによって、以下4つの側面から運営効率の最大化を図ると同時に、猫と人との関係性を調停している。
1.それぞれの区画の仕切りは裏側・向こう側に意識が行くようなアクリルやパンチングメタルの建具とし、猫の領域と人の領域に断絶を感じさせないようにした。
2.箱を回り込んでギャラリーからホールへ入る際、斜めの箱により視角に逆パースが効き、空間の第一印象が広く感じる。また、既存空間の対角線の長さを活かして猫が走り回って遊べる十分な広さを確保している。
3.猫の見守りのためスタッフの居る厨房からホールへの死角のない配置とした。これにより箱の壁面はホール側のどこからも見えるため、イベント時のスクリーンやアート展示等にも活用される。
4.箱の周囲に回遊動線が確保されている事で、玄関の来店対応・猫の世話・キッチン等の各業務を流動的に行える。
白について
猫や展示される作品を引き立たせるため、床壁天井は全て白色とした。最上階で周りがひらけているため、窓から入り込む景色や空の色の表情を映し込み刻一刻と印象の変化する空間となった。また、共用部の階段室の壁紙が白色だったことも相まって、建物の外から階段を登って店舗の中まで入るシークエンスを体験すると、視界から徐々に色が無くなっていくような印象になった。
最初は「猫が主役に見えるように」と選択された白であったが、設計した範囲ではないこうした風景の連続も、建物外から店舗の中まで体験が地続きになるような効果を生んでいる。
猫と人が一緒に使える家具
スツール・机・キャットタワーはコンクリートの空配管などに使われるヴォイド管(紙管)を素材としてnecomaのために特別に制作された。同じ素材の円柱が、大きさの違いによって猫にとっては隠れ家やキャットタワーとして、人間にとってはスツールや机として使えるようになっている。猫のために作った居場所がそのまま人間の居場所にもなっているような状態を目指した。
また、廃段ボールを用いた新たなリサイクルマテリアルの開発も行った。
段ボールを細かく裁断し水に溶かして押し固め乾燥させると、段ボールに含まれる糊の成分だけで固形化できることを発見した。これを型枠に流し込むことで、コンクリートのように自由造形が可能となる。この素材を利用し、壁付けのキャットステップを制作した。TANKは以前より動物保護活動に取り組む個人や団体を応援しており、本プロジェクトでもこれら家具類一式を寄贈した。
コンテクストとの距離感を設計する
necomaという店名は「猫との間合いを考える」というコンセプトが元になっている。
内装においては間仕切壁や檻といった猫と人とを厳格に区切るような見えの要素を極力排することでこれを実現しようとした。
家具についても、段ボールという普段捨てられてしまうものを美しく再利用するということが、”保護猫として”ではなく純粋に猫として接する姿勢と呼応することを企図した。
■建築概要
名称:「保護猫喫茶 necoma」
設計・施工:株式会社TANK/福元成武+磯野信・小松素宏(明治大学構法計画研究室)
ディレクション:小栗達矢・鈴木由香/PAG.TOKYO Inc.
ロゴ・サインデザイン :鈴木由香/PAG.TOKYO Inc.
所在地:東京都目黒区中町1-33-3,3階
用途:猫のいる喫茶・ギャラリー・ワークショップ
設計期間:2020年3月〜4月
施工期間:2020年5月〜9月
竣工:2020年9月
延床面積:59.1m²
構造:S造
写真:牧口英樹
建材情報種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) | 内装・床 | 床 | 木工床上げ+長尺シート貼り[フロアリューム プレーンNW 20FL1001](東リ)
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内装・壁 | 既存壁 | 既存ALC補修のうえAEP吹付塗装(N-93艶消し)
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内装・壁 | 水廻りボリューム壁 | シナ合板フラッシュパネル+AEP塗装(N-93三分艶)
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内装・天井 | 天井 | 既存デッキプレートAEP吹付塗装(N-93艶消し)
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内装・建具 | 製作建具 | 木枠+スチールFB+アルミパンチングメタル
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内装・造作家具 | ヴォイド管家具 | 紙管(エーワンチューブφ250)に総パテ+AEP塗装(N-93三分艶)、メラミン板K-6003KN(白コア)
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内装・照明 | ダクトレール照明 | ModuleX80 スポットライト SX-535CBP/M/R35B/W
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