久保秀朗+都島有美 / 久保都島建築設計事務所が会場構成を手掛けた、パナソニック汐留美術館での「サーリネンとフィンランドの美しい建築展」です。サーリネンゆかりの地であるヴィトレスク湖畔の風景を抽象的に表現した会場デザインが意図されました。会期は2021年9月20日まで。展覧会の公式ページはこちら。
フィンランドのモダニズムの原点を築いた建築家エリエル・サーリネンの展覧会の会場構成を行った。エリエル・サーリネンが49歳で渡米するまでのフィンランド時代にスポットをあて、図面や写真、家具や生活のデザインといった作品資料の展示を行っている。
サーリネンが設計事務所を設立してまもなく、彼が仲間のリンドグレン、ゲセリウスと共に静かに仕事に専念出来る環境を求め、住宅兼アトリエを建設したヴィトレスク湖畔。ヘルシンキ西方にあるこの美しい湖は、「光があたると白く染まる」という伝説をもつ。ヴィトレスク湖を想起させるようなやわらかい曲線と光の空間を全体のテーマとし、白く光沢感のある床仕上げで湖の水面を、グレーの経師紙と布で作った島状の展示台で湖畔の森を抽象的に表現した。展示台の縁にLEDのライン照明をほんのりと沿わせることで、水面の光の反射のような現象を生み出している。
本展覧会は、フィンランドで事務所を設立した初期の時代から始まり、息子エーロ・サーリネンのモダニズム家具の展示で幕を下ろす。エリエル・サーリネンの生涯から彼がつないだものを、フィンランドの光かがやく水面の湖畔の風景を感じながら時系列に巡ることができる展覧会となっている。