原田圭 / DO.DO.が会場構成を手掛けた、世田谷文学館での「イラストレーター安西水丸展」です。作家の制作方法から参照された“工作のように空間を構成する”方法を用い、空間と作品の調和が生まれることが意図されました。会期は2021年9月20日まで。展覧会の公式ページはこちら。
世田谷文学館で行われたイラストレーター安西水丸展の会場デザイン。
作家のモチーフに対するモノの見方や製作方法が伝わる空間を考えた。
元々常設展用に造られた展示室は特徴的な下天井や可動しない大型のガラスケースが空間を決定づける要素として既に存在していた。
それを無視して構成していく事は、空間の持つポテンシャルを発揮できないと思い、下天井のラインに合わせ壁を建て、空間における最大限の高さの壁をつくり、ガラスケースの周りの開口を空けながら壁を建てる事で、違和感を吸収し、既にあった特徴的な要素を取り込み、最小限で最大限の効果を生む事を考えた。
様々な開口部をあけたり、切り抜かれたシルエットが大きな書割になったりする事で、覗き込む楽しさや世界観を作り出すだけではなく、小さな作品が500点以上並んだ展示の中で良い意味で集中力が緩和されるような狙いもあった。
水丸さんのイラストの製作方法として、まず、線を引きその上に透明のフィルムを重ねカラーシートを切抜き貼っていくというものがある。その方法に習い、イラストを切り抜いたり、貼り付けたりして、工作のように空間を構成していった。その行為自体が空間と作品の調和を生み出してくれたように感じる。
以下の写真はクリックで拡大します
以下、建築家によるテキストです。
世田谷文学館で行われたイラストレーター安西水丸展の会場デザイン。作家のモチーフに対するモノの見方や製作方法が伝わる空間を考えた。
元々常設展用に造られた展示室は特徴的な下天井や可動しない大型のガラスケースが空間を決定づける要素として既に存在していた。
それを無視して構成していく事は、空間の持つポテンシャルを発揮できないと思い、下天井のラインに合わせ壁を建て、空間における最大限の高さの壁をつくり、ガラスケースの周りの開口を空けながら壁を建てる事で、違和感を吸収し、既にあった特徴的な要素を取り込み、最小限で最大限の効果を生む事を考えた。
様々な開口部をあけたり、切り抜かれたシルエットが大きな書割になったりする事で、覗き込む楽しさや世界観を作り出すだけではなく、小さな作品が500点以上並んだ展示の中で良い意味で集中力が緩和されるような狙いもあった。
水丸さんのイラストの製作方法として、まず、線を引きその上に透明のフィルムを重ねカラーシートを切抜き貼っていくというものがある。その方法に習い、イラストを切り抜いたり、貼り付けたりして、工作のように空間を構成していった。その行為自体が空間と作品の調和を生み出してくれたように感じる。
隠れ水丸さんというサブコンテンツをつくったのは、動線のない空間で見落とした作品と出会える機会をつくりたいという思いと、小説でいう伏線のように既に物語の中に入り込んでいたような気分を空間デザインに取り入れる事で疲労感の軽減や訪れた事への満足感を感じられるのではないかという実験でもあった。カオスのような表現の中に実は関係性を持って繋がり合っている、そんなデザインを文学館全体をつかって表現しようと試みた。
下記に記したのは、プレゼン時にコンセプトに掲げた三か条になります。
01.「あるものをいかす。」世田谷文学館の展示室の特徴を生かしたいと思います。普段は使いづらいと思われている部分を逆に個性ととらえます。文学館に既にあるものの見方を変え、新たな価値を見つけ利用する、そんな展示空間を目指します。
02.「視点。」水丸さんの独特のものへの眼差しは、きっといろんなものの見方によるものだと思います。見方にはいろんな見方がある事を作品と共に体感してもらうような展示空間を目指します。
03.「感覚(センス)。」水丸さんの持つ感覚(センス)が伝わる空間を目指します。新しいものより、よく使い込んだものが好きな水丸さん。そんな水丸さんだからこそできる設え。好きな音、空気感、ユニークさ、、、訪れた人が、きっともっと作品や水丸さんの事を好きになる展覧会を目指します。
■建築概要
イラストレーター安西水丸展(2021年/東京)
クライアント:世田谷文学館
計画地:東京都世田谷区南烏山1丁目10−10
設計:DO.DO.
施工:D-9
企画:クレヴィス、世田谷文学館
監修:安西水丸事務所
計画種別:展示会場構成
用途:展示会
計画期間:2020年9月~2021年4月
計画面積:660.64㎡
撮影:淺川敏