SHARE 藤田時彦 / atelier umiによる、滋賀・高島市の、築100年の古民家を改修した「umi」。設計者の自邸と事務所とイベント空間を兼ねた建築で、景色の良い琵琶湖沿いを敷地とし、職住分離ではなく職住一体とすることで新たな出会いを期待し計画
藤田時彦 / atelier umiが設計した、滋賀・高島市の、築100年の古民家を改修した「umi」です。設計者の自邸と事務所とイベント空間を兼ねた建築で、景色の良い琵琶湖沿いを敷地とし、職住分離ではなく職住一体とすることで新たな出会いを期待し計画されました
場所に縛られず様々なことが出来る時代。
景色の良い琵琶湖沿いの土地を探し始めて3年ほど経った時、築100年の空き家と出会い、私たちの住宅兼アトリエ・イベントスペースにリノベーションした。
玄関の大きな引き戸を開けると琵琶湖の景色が飛び込んでくる。訪れる人たちの視界から一旦琵琶湖を遮るように道路側の開口をあえて少なくし閉じることで生まれた情景。
一方で閉じるだけでは閉鎖感が出てしまうので、道路側の建物一部を減築し、縁側のような部分をつくることで街行く人が座ったり、コーヒーを淹れたりできるようなカウンターを設置し、家を街に開くような計画もしている。
延べ床面積28坪のスペース。ここに居住空間、事務所、イベントスペースを確保することは単純に考えると無理があった。しかしそれらの振り分ける空間をシェアすることとした。一階には普段居住空間であるフリースペースとキッチンスペースがある。それらのスペースを打合せやイベント時に使用することにより、限られたスペースでも全ての機能を満たす空間になると考えた。
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以下、建築家によるテキストです。
場所に縛られず様々なことが出来る時代。
景色の良い琵琶湖沿いの土地を探し始めて3年ほど経った時、築100年の空き家と出会い、私たちの住宅兼アトリエ・イベントスペースにリノベーションした。
20年間空き家であった家屋は、白蟻に喰われ柱は数本浮き梁にまで到達する勢いであった。
今回の様なリノベーションは意外に時間やお金や手間、制約もかかる。解体して新築する方が安く工事もやり易く早かったであろう。しかし、スクラップ&ビルドが繰り返される中、単純にその地にあったものは出来るだけ使い、新築では表現出来ない部分を残したい思いから、リノベーションすることを選んだ。
閉じることと開くこと。
玄関の大きな引き戸を開けると琵琶湖の景色が飛び込んでくる。訪れる人たちの視界から一旦琵琶湖を遮るように道路側の開口をあえて少なくし閉じることで生まれた情景。
一方で閉じるだけでは閉鎖感が出てしまうので、道路側の建物一部を減築し、縁側のような部分をつくることで街行く人が座ったり、コーヒーを淹れたりできるようなカウンターを設置し、家を街に開くような計画もしている。
中間期には玄関の扉を開け放ってみたいとも思う。家を街に開くことでどのようなことが起きるのか楽しみな部分もある。
空間のシェア
延べ床面積28坪のスペース。ここに居住空間、事務所、イベントスペースを確保することは単純に考えると無理があった。しかしそれらの振り分ける空間をシェアすることとした。一階には普段居住空間であるフリースペースとキッチンスペースがある。それらのスペースを打合せやイベント時に使用することにより、限られたスペースでも全ての機能を満たす空間になると考えた。ギャラリー展示期間中は作家さんの作品に触れながらの生活になるかもしれない。このように職住分離から職住一体になることは子供や私達にとっても新たな出会いとデザイン思考向上の始まりになるのかもしれない。
資源の再利用による新旧共存と職人・アーティストとの共創
この建物の解体時に出た床板、ガラス、石を再利用した。
鉄職人松本さんによる鉄のフレームを床板と組み合わせ、打合せテーブルに再生させた。
ガラスはアーティスト周防さんにより鏡へと生まれ変わった。
延べ石をエントランス踏み石に。
キッチン壁は左官職人下原さんと打合せを重ね出来上がったシンプルなモルタル左官を荒く仕上げた壁と、鉄職人松本さんによる無骨な鉄棚が壁から伸びる。対面階段吹抜にはそれらと呼応するように、和紙職人ハタノワタルさんによる柔らかな和紙貼が大きな壁面に広がる。木、モルタル、鉄、和紙…それらが調和する空間になった。
外観は細い杉板で目地を取りながら留めていくことで、新たな装いになりつつ、かつての風貌を延長させ、街に馴染ませた。
制約がかかることで新しく生まれるモノがある。
便利であることや、最新であること、部屋が広いこと…それらがなくとも、生活の場所、空間、自然との関わりで心地よく暮らすことが出来る。豊かさとは、心地よく暮らすことなのかもしれない。
■建築概要
所在地:滋賀県高島市今津町
主要用途:住宅+事務所+イベントスペース
家族構成:夫婦:子供1人
意匠・構造・設備設計:atelier umi 藤田時彦
外構設計:藤田由佳
施工:株式会社Blue Wood Work
和紙:ハタノワタル
テーブル・キッチン鉄棚:HALO 松本健司
鏡:HACOMIDORI 周防苑子
外構:鶴園外構店
撮影:貝出翔太郎
構造:木造在来工法
基礎:べた基礎
階数:地上2階
軒高:5,155mm
最高高さ:6,400mm
敷地面積:113㎡
1階床面積:58.07㎡
2階床面積:36.48㎡
延床面積:94.55㎡(容積率83.67% 許容200%)
建築面積:63.21㎡(建蔽率55.93% 許容60%)
地域地区:第1種住居地域
道路幅員:東7.0m
駐車場:1台
設計期間:2019年9月~2020年9月
施工期間:2020年10月~2021年3月
竣工年月:2021年3月
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外装・屋根 | 屋根 | 既存桟瓦葺き |
外装・壁 | 外壁 | |
外装・建具 | 開口部 | 玄関引戸:オキシデコールラスト黒錆左官特殊仕上(下原大輔) |
外装・照明 | 外部照明器具 | AU47329L(コイズミ照明) |
外装・その他 | ネームプレート | |
内装・床 | フリースペース・キッチン・ダイニング・事務所床 | |
内装・床 | WC1床 | |
内装・床 | ベッドルーム兼セカンドリビング床 | ラワン合板t=12底目地貼+ウレタン艶消しクリア |
内装・床 | 子供部屋床 | フローリング NORDO NAMIBU t=12(ADWORLD) |
内装・床 | WC2・洗面床 | |
内装・壁 | フリースペース・キッチン・ダイニング・事務所壁 | ラワン合板t=9底目地貼+ウレタン艶消しクリア |
内装・壁 | ベッドルーム兼セカンドリビング壁 | ラワン合板t=9底目地貼+ウレタン艶消しクリア |
内装・壁 | WC1壁 | Returnモルタル仕上(下原大輔) |
内装・壁 | 子供部屋壁 | PB=12.5+自主塗装(ミルクペイント) |
内装・壁 | WC2・洗面壁 | PB=12.5+EP 一部既存土壁表面強化材塗 |
内装・天井 | フリースペース・キッチン・ダイニング・事務所天井 | 既存2階床板現し 一部ラワン合板t=9底目地貼+ウレタン艶消しクリア |
内装・天井 | ベッドルーム兼セカンドリビング天井 | 既存野地板・垂木現し |
内装・天井 | WC1天井 | 既存床板・野地板・垂木現し |
内装・天井 | 子供部屋天井 | PB=9.5+自主塗装(ミルクペイント) |
内装・天井 | WC2・洗面天井 | 既存野地板・垂木現し |
内装・建具 | 内部建具 | ラワンフラッシュ底目地+ウレタン艶消しクリア |
内装・キッチン | キッチン | 鉄棚:HALO |
内装・浴室 | ユニットバス | |
内装・水廻り | WC1手洗いカウンター | 和紙貼+ウレタン艶消しクリア |
内装・水廻り | WC1便器 | |
内装・水廻り | WC1手洗 | |
内装・水廻り | WC1水栓 | |
内装・水廻り | WC2便器 | |
内装・水廻り | WC2洗面 | |
内装・水廻り | WC2洗面鏡 | |
内装・造作家具 | ダイニング天板 | ステンレスt=5バイブレーション仕上 |
内装・照明 | フリースペース・キッチン・ダイニング・事務所照明 | mob.17(NEW LIGHT POTTERY) |
内装・照明 | WC1照明 | (蠣崎マコト) |
内装・照明 | ベッドルーム兼セカンドリビング照明 | |
内装・照明 | 子供部屋照明 | |
内装・照明 | WC2照明 | |
内装・金物 | WC1金物 | 紙巻器・タオル掛け(千葉工作所) |
内装・金物 | WC2金物 | |
内装・設備 | 空調 | 冷暖房方式:ルームエアコン |
内装・設備 | 給排水 | 給水方式:上水道直結 |
内装・設備 | 給湯 | 給湯方式:エコキュート |
外構・床 | 床 | 延べ石等再利用 |
外構・植栽 | 植栽 | イロハモミジ |
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※この情報は弊サイトや設計者が建材の性能等を保証するものではありません