SHARE 赤松佳珠子+大村真也 / CAtによる、群馬の「共愛学園前橋国際大学5号館」。教育や運営の向上の為に学習・交流・事務の一体化を担う施設、地域と大学の結節点として人々を繋ぐ事も目指して全方向に開いた建築を志向、様々な用途の場を緩やかに繋いで空間をアクティビティで満たす
赤松佳珠子+大村真也 / CAtが設計した、群馬・前橋市の「共愛学園前橋国際大学5号館」です。
教育や運営の向上の為に学習・交流・事務の一体化を担う施設、地域と大学の結節点として人々を繋ぐ事も目指して全方向に開いた建築を志向、様々な用途の場を緩やかに繋いで空間をアクティビティで満たす事も意図されました。大学の公式サイトはこちら。
共愛学園は、133年の歴史を誇る子ども園から大学までを有する総合学園で、その一翼を担う共愛学園前橋国際大学はGLOCALな人材育成を目指し、(GLOBAL+LOCAL)地学一体となった取組で注目を集めている。
アクティブラーニング、キャンパスライフの拠点となっている「4号館KYOAI COMMONS(以下COMMONS)」(乾久美子建築設計事務所)に加え、さらなる教育環境・学生生活の向上、大学の事務・運営機能の集約・充実を図るために、「学習の場」「集い・交流の場」と「事務機能」を一体化した新たな建築を求めて、建築家の倉田直道さんがアドバイザーとして参画した指名プロポーザルが行われた。
計画地はサクラ並木の美しい「キャンパスモール」の始点、COMMONSと広場を挟んで並ぶ関係にある。既存の大学の中枢機能がある事務棟(1号館)は、「キャンパスモール」の終点に位置していたが、今回キャンパスの奥から玄関口に移転するにあたり、地域とキャンパスの結節点として、人々を繋ぎ、流れを生み出す裏表なく全方向に開いた建築が必要だと考えた。
職員・学生・地域住民が緩やかに関係をつくることができるように、大学事務のワークプレイスと学生や地域住民が自由に使うことができるFLAとの境界は、壁やカウンターで区切るのではなく、ベンチや書架、建具を組み合わせた家具で緩やかな境界をつくりその廻りにアクティビティを誘発させる。
さらに、大階段と一体となった段状のデッキや、手すりと一体となったカウンターデスクなど、「ミドルスケール」と定義した家具以上建築未満のエレメントによって、より人間の身体に近いスケールのエレメントが、ささやかな日常に佇まいや気配を与え、空間や建築の外側に対しても場を生み出し、あらゆる場所が多様なアクティビティに満ちた空間となる。
以下の写真はクリックで拡大します
以下、建築家によるテキストです。
人と人、地域とキャンパス、世界を繋ぐ地(知)の拠点
共愛学園は、133年の歴史を誇る子ども園から大学までを有する総合学園で、その一翼を担う共愛学園前橋国際大学はGLOCALな人材育成を目指し、(GLOBAL+LOCAL)地学一体となった取組で注目を集めている。
アクティブラーニング、キャンパスライフの拠点となっている「4号館KYOAI COMMONS(以下COMMONS)」(乾久美子建築設計事務所)に加え、さらなる教育環境・学生生活の向上、大学の事務・運営機能の集約・充実を図るために、「学習の場」「集い・交流の場」と「事務機能」を一体化した新たな建築を求めて、建築家の倉田直道さんがアドバイザーとして参画した指名プロポーザルが行われた。
計画地はサクラ並木の美しい「キャンパスモール」の始点、COMMONSと広場を挟んで並ぶ関係にある。既存の大学の中枢機能がある事務棟(1号館)は、「キャンパスモール」の終点に位置していたが、今回キャンパスの奥から玄関口に移転するにあたり、地域とキャンパスの結節点として、人々を繋ぎ、流れを生み出す裏表なく全方向に開いた建築が必要だと考えた。
さまざまなアプローチ、周辺環境との関係、まちの景観などから、建物の四隅には特徴的な「4つの顔」が浮かび上がる。
「キャンパスゲート」は、交差点に向かって高く伸びる屋根と木仕上げの軒が来校者を迎え入れる新たなキャンパスの顔。地域住民が気軽に大学の活動に参加できるよう地域に開かれたオープンな雰囲気。
「アクティビティテラス」は、ホールと広場を繋ぐ、ホールにとってのテラス空間であり、広場にとっては文化祭などのイベントにも利用できるステージでもある。ホールは授業だけでなく、地域向けの公開講座や地元企業との協働の場として学内にも地域にも開かれた空間である。2層吹き抜けの空間とすることで2階バルコニーのカウンターテーブルからは、事前に講座・イベントへ登録をしていない学生でもふらっと気軽に立ち寄り、その場の活動に触れることができるようにと考えた。
「サクラエントランス」は、車寄せから直接アクセスできるエントランス。大学のブランドや学生の活動をアピールする場であり、車寄せのキャノピーは、雨に濡れない動線としてCOMMONSとも接続する。
「グリーンテラス」は、緑豊かなランドスケープとフレキシブルワーキングエリア(FWA)に面したテラス空間。車通りの多い道路とワークプレイスの緩衝緑地で、自然光あふれる気持ちのよい環境の中、自由で多様な働き方を促す。2層に分かれたワークプレイスは、吹き抜けのフレキシブルワーキングエリア(FWA)を介して、上下階の職員同士が交流し、クリエイティブな連携を誘発する。
それら「4つの顔」とホールに加えて、企業とのコラボレーションや多様な活動を支える「プロジェクトルーム」を配置した。その境界は、ガラスや開放可能な折戸を設置し、活動の可視化だけでなく、建具を開け放つことで、フレキシブルラーニングエリア(FLA)や屋外デッキ、広場とも一体になり活動が滲み出す。
職員・学生・地域住民が緩やかに関係をつくることができるように、大学事務のワークプレイスと学生や地域住民が自由に使うことができるFLAとの境界は、壁やカウンターで区切るのではなく、ベンチや書架、建具を組み合わせた家具で緩やかな境界をつくりその廻りにアクティビティを誘発させる。
さらに、大階段と一体となった段状のデッキや、手すりと一体となったカウンターデスクなど、「ミドルスケール」と定義した家具以上建築未満のエレメントによって、より人間の身体に近いスケールのエレメントが、ささやかな日常に佇まいや気配を与え、空間や建築の外側に対しても場を生み出し、あらゆる場所が多様なアクティビティに満ちた空間となる。
この大学では、地域と大学と世界をボーダレスに横断し、学生・教員・職員の垣根なく、すべての境界を解き放ち、さまざまなイノベーションを生み出している。地域の人がいつの間にか足を踏み入れてしまう気軽さと、ガラス張りの役員室の横を学生が通り抜ける自由さ、すべての人にとって出会いときっかけに満ちたこの空間が、これまで以上に地域に開かれ、世界に発信するGLOCALな大学の拠点となることを期待している。
(赤松佳珠子+大村真也 / CAt)
人と空間、大学と地域のつながりを強化するプレイスメイキングの連鎖
設計プロセスと並行したワークプレイスの実態調査とワークショップを、京都工芸繊維大学・仲隆介教授の研究室の協力のもと進められた。
教職員・学生などでメンバーは構成され、大学の特徴である地学一体となった地域社会との連携を可視化し、多様な主体が地域と一体となって活動しているという個々の取り組みを再整理し、全体像を浮かび上がらせた。また、教職員を対象としたアンケート・観察調査・ヒアリングにより、組織やオフィス環境、働き方の問題点を浮かび上がらせ、それらを建築・空間で解決することでより良いワークプレイスにつながると考えた。このような活発な議論の中から、この新しいワークプレイスが生み出された。
この一連のプレイスメイキングをきっかけに、若手職員から新たな働き方のコンセプトが立案され、工事中も細かな設えや運用ルールなどが議論された。竣工後も、空間の利活用を考えるワーキンググループの立ち上げや、学生たちが大きなディスプレイ本棚のキュレーションを行うなど、この空間の利用価値を最大化する取り組みが大学全体で継続されている。
建築づくりをきっかけに始まったプレイスメイキングの連鎖が、人々の活動と空間の相互作用を生み出し、大学と地域社会とのつながりをより強いものにする。KYOAI GLOCAL GATEWAYは、それを支えるイノベーション・コモンズとなり、地域と世界をつなぐグローカルリーダーが羽ばたいていくことを期待している。
(赤松佳珠子+大村真也 / CAt)
■建築概要
作品タイトル:共愛学園前橋国際大学5号館 KYOAI GLOCAL GATEWAY
所在地:群馬県前橋市小屋原町1154-4
主要用途:大学
建主(発注者,事業主体,クライアント):学校法人共愛学園
───
利用案内
開館時間:09:00〜17:30
休館日:大学休日に準じる
───
設計・監理
建築:CAt 担当/赤松佳珠子・大村真也・Yap Minwei*・久保公人*・来源*(*元所員)
構造:小西泰孝建築構造設計 担当/小西泰孝・佐藤隼平・朝光拓也*
設備:設備計画 担当/櫻田宏一・皿井寿幸
キャンパス計画アドバイザー:担当/倉田直道
ワークプレイス調査・ワークショップ:担当/仲隆介 京都工芸繊維大学仲研究室
ランドスケープ:GAヤマザキ 担当/山﨑誠子・針谷未花
照明アドバイス:岡安泉照明設計事務所 担当/岡安泉
ファブリック・カーテン:安東陽子デザイン 担当/安東陽子・山口かすみ
サインデザイン:TAKAIYAMA 担当/山野英之・蔭山大輔
音響アドバイザー:担当/上野佳奈子(明治大学)
───
施工
建築:塚本建設 担当/横田忠明・田端元貴・関口智規
空調:針谷工事 担当/佐藤敏行・宮澤健二
衛生:同上
電気:ソウワ・ディライト 担当/羽鳥正寛・近藤健也
───
地域地区:市街化調整区域 防火地域非指定
道路幅員:東7m 西7m 南18m 北7m
駐車台数:約400台
主体構造:鉄骨造
杭・基礎:直接基礎
敷地面積:39,679.53㎡(キャンパス全体)
建築面積:1,377.60㎡
延床面積:1,921.99㎡
1階:1,175.78㎡/2階:746.21㎡
建蔽率:22.28%(許容:70%)(キャンパス全体)
容積率:39.55%(許容:200%)(キャンパス全体)
階数:地上2階
最高高:9,731mm
軒高:8,963mm
1階階高:3,600mm/2階階高:3,700~4,900mm
1階天井高:2,800~8,400mm/2階天井高:2,650~3,850mm
主なスパン:8,100mm×8,100mm
設計期間:2018年11月〜2019年12月
施工期間:2020年1月〜2021年1月
写真:阿野太一+楠瀬友将
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外装・屋根 | 屋根 | |
外装・壁 | 外壁 | |
外装・建具 | 開口部 | アルミサッシ PROSE-100(LIXIL) |
外構・床 | 外構床 | インターロッキング 人口木デッキ |
内装・床 | 1階床 | 長尺シート(東リ) |
内装・壁 | 1階壁 | PB(吉野石膏)の上、塗装[EP、ジョリパット、リシンWB塗料] |
内装・天井 | 1階天井 | |
内装・床 | 2階床 | タイルカーペット(東リ) |
内装・壁 | 2階壁 | PB(吉野石膏)の上、塗装[EP、ジョリパット、リシンWB塗料] |
内装・天井 | 2階天井 | スギ羽目板張り Mバールーバー |
内装・設備 | 空調設備 | |
内装・照明 | 照明 | 照明器具一式(DAIKO) |
※企業様による建材情報についてのご意見や「PR」のご相談はこちらから
※この情報は弊サイトや設計者が建材の性能等を保証するものではありません