加藤隼輝 / Poten-Potenと杉山聖昇 / mascotが設計した、長野の「信濃吉田の家」です。
住宅街にある既存建物が複数ある場の余白地に計画、最適な配置の検討から開始して内外の状況に応答する三方向に開く平面を考案、機能諸室の配置と曲線壁の導入で内部空間に開放性と独立性を生み出す事も意図されました。
周辺に小学校や団地などがある住宅地に60代夫婦の住宅を計画した。
この敷地には施主が営む酒屋、倉庫、車庫、畑があり日中の時間の多くをそれらの場所で過ごしている。この計画では余白となっているスペースが建設候補地であり最適な配置を検討することから始めた。
建物は敷地内外の状況を考慮し3方向に開く平面計画とした。北側は敷地内の既存庭に対して、南東側は敷地内の庭と畑さらには敷地外の市指定の天然記念物である大銀杏に対して、西側は夏場の卓越風を考慮して隣接地の建物間の隙間に向かって開いた。
3方のボリュームにはそれぞれダイニング、書斎、寝室とし、それらは一対のコアを配置した。それらのコアによりダイニング、書斎、寝室の間は適度に視線を制御し、かつ壁をRにすることで空間に一体感を与え、開放的でありながら独立性のあるつくりとした。
その空間の中でも場所ごとの微細な質を読み取り、それに呼応するように庇や建具、家具まで多角的にデザインを行うことで、暮らしの中でマクロスケールからミクロスケールにいたるまでの重層的な豊かさを感じられるような住宅とした。
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以下、建築家によるテキストです。
周辺に小学校や団地などがある住宅地に60代夫婦の住宅を計画した。
この敷地には施主が営む酒屋、倉庫、車庫、畑があり日中の時間の多くをそれらの場所で過ごしている。この計画では余白となっているスペースが建設候補地であり最適な配置を検討することから始めた。
建物は敷地内外の状況を考慮し3方向に開く平面計画とした。北側は敷地内の既存庭に対して、南東側は敷地内の庭と畑さらには敷地外の市指定の天然記念物である大銀杏に対して、西側は夏場の卓越風を考慮して隣接地の建物間の隙間に向かって開いた。
3方のボリュームにはそれぞれダイニング、書斎、寝室とし、それらは一対のコアを配置した。それらのコアによりダイニング、書斎、寝室の間は適度に視線を制御し、かつ壁をRにすることで空間に一体感を与え、開放的でありながら独立性のあるつくりとした。
屋根に関しては、敷地の真ん中に建てるため周囲に対して圧迫感を軽減することと、ワンルーム空間にリズムを与えることを考慮し、コア部分の屋根を低くしてねじれを与え、建物のボリューム感と空間の質を調整した。
その空間の中でも場所ごとの微細な質を読み取り、それに呼応するように庇や建具、家具まで多角的にデザインを行うことで、暮らしの中でマクロスケールからミクロスケールにいたるまでの重層的な豊かさを感じられるような住宅とした。
屋根架構の構造形式
3方向に延びる平面形状に対して、登り梁をそれぞれ梁間方向に架け渡す。建物中央部には、登り梁が三角形に交差し、部材同士が相手の材に寄りかかりながら相互に支持し合うレシプロカル架構が形成される。登り梁の断面は、部材同士を突き付け大入れ出来る最小寸法から、60×180のベイマツ材を採用した。
屋根形状は、建物中央部から外端部に向けて水勾配を設けているねじれた四角形を桁とするHP曲面となる。HP曲面を形成する登り梁の大入れ加工は、任意形状の加工が可能なフンデガ―社製のプレカットマシンを用い、精度の高い製作を行った 。
(構造設計:SCALA Design Engineers / 村上翔)
■建築概要
所在地:長野県長野市
主要用途:専用住宅
設計・監理:Poten-Poten / 加藤隼輝+mascot / 杉山聖昇
家具デザイン:mascot / 杉山聖昇
構造設計:SCALA Design Engineers
施工:千広建設株式会社
面積:60m2
竣工:2019年9月
写真:中村絵