SHARE 田中健一郎+山下優子 / 三省設計事務所による、長崎・対馬市の「神話の里トイレ」。近年観光客が増加する国定公園内に計画。敷地に“建築が溶け込む”事を目指して、山々の傾斜に沿う屋根と木々の色と調和する外壁を考案。外壁上部に抜けを作り自然換気や快適性と防犯性にも配慮
田中健一郎+山下優子 / 三省設計事務所が設計した、長崎・対馬市の「神話の里トイレ」です。
近年観光客が増加する国定公園内に計画された公共トイレです。建築家は、敷地に“建築が溶け込む”事を目指して、山々の傾斜に沿う屋根と木々の色と調和する外壁を考案しました。また、外壁上部に抜けを作り自然換気や快適性と防犯性にも配慮しました。施設の場所はこちら(Google Map)。
本計画は壱岐対馬国定公園和多都美園地の中にある、神話の里自然公園に建つパブリックトイレです。
和多都美園地の中心である和多都美神社は古くから竜宮伝説が残されている神社であり、近年観光客が増加していることから、近隣の神話の里自然公園内に計画整備された建物です。
計画地の神話の里自然公園は、道路に面して広い駐車場があり、その奥に管理建物、キャンプ用コテージ、ビーチと続いており、それを囲むように山々がある緑豊かな公園です。本建物は駐車場の一角に計画され、また国定公園内であることから、屋根形状や建物の配色といった修景に対し十分に配慮しながら計画しました。
「自然公園の中に建築が溶け込む」ことが大切だと捉え、特に屋根形状や素材に対して配慮した建物です。屋根形状は周囲の山々の稜線を崩さないよう山の傾斜に沿った形にし、建物の高さを抑えています。
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以下、建築家によるテキストです。
ロケーション
本計画は壱岐対馬国定公園和多都美園地の中にある、神話の里自然公園に建つパブリックトイレです。
和多都美園地の中心である和多都美神社は古くから竜宮伝説が残されている神社であり、近年観光客が増加していることから、近隣の神話の里自然公園内に計画整備された建物です。
対馬は面積の約90%を山林が占める自然豊かな島です。島の地形は標高200~300mの山々が海岸まで続き、急峻な山、深い森、多くの湾や島を有する複雑な海岸線が特徴的です。主要な2つの島(北部の上島と南部の下島)の間にある浅茅湾は、深い入江群と島々の発達した典型的なリアス式海岸の様相を呈しています。
計画地の神話の里自然公園は、道路に面して広い駐車場があり、その奥に管理建物、キャンプ用コテージ、ビーチと続いており、それを囲むように山々がある緑豊かな公園です。本建物は駐車場の一角に計画され、また国定公園内であることから、屋根形状や建物の配色といった修景に対し十分に配慮しながら計画しました。
景観との融合
「自然公園の中に建築が溶け込む」ことが大切だと捉え、特に屋根形状や素材に対して配慮した建物です。屋根形状は周囲の山々の稜線を崩さないよう山の傾斜に沿った形にし、建物の高さを抑えています。
素材・配色による調和
素材については環境に配慮し、あたたかみのある木造とし、外壁及び軒裏も全て木材を採用しています。また木部は全て液体ガラスを含侵塗装し、塩害や紫外線による劣化や腐食における対策を施しています。
配色については、木々の光(緑葉)と木々の影(幹)をイメージし建物の配色を決めています。光に置いては 「抜け」を設けることで建物に緑を採りこみ、影においては外壁を木々の幹色に合わせることで景観との融合を図っています。
木々の影をイメージした外壁の色を決定するに当たっては、周囲の風景に溶け込むよう、色味を少しずつ変化させたサンプルを複数作成し、実際に現地にて景観と合うイメージとなる色を選定し施工を行っています。
利用者等への配慮
屋根を浮かせ外壁上部をルーバーとすることで自然光を内部へ取り込むだけでなく、建物内の自然換気を促し、利用者の快適性、防犯性に配慮しています。
本建物は長崎県福祉のまちづくり条例に適合したバリアフリー対応施設であり、車椅子での利用が可能なトイレを設置しています。またオストメイト用設備も設置しており、全てのトイレがウォシュレット仕様となっています。木造の一般的な構法である軸組工法を採用することで、離島の地元施工者においても施工可能な計画としています。
本計画地は駐車場全体がなだらかな傾斜地となっており、建物の長辺方向両端で約80cmの高低差があります。どの場所からでも建物に入れるバリアフリー対応施設とする必要があったため、基本的に1/20勾配のスロープ(最大でも1/12勾配以下)で段差解消を図っています。
■建築概要
所在地:長崎県対馬市豊玉町仁位地内
主要用途:公衆トイレ
建築主:対馬市
敷地条件:都市計画区域外、壱岐対馬特定公園第1種特別地域
設計・監理:株式会社三省設計事務所 田中健一郎+山下優子
機械設備設計:おぐり設備設計室 高橋晴男
電気設備設計:有限会社昭和設備設計事務所 深堀清
施工:株式会社武末建設、株式会社八興電設
構造・規模:木造(在来軸組工法)、直接基礎 地上1階建
敷地面積:14100㎡
建築面積:95.52㎡
延床面積:63.76㎡
設計期間:2019年2月~2019年7月
施工期間:2019年12月~2020年7月
写真:宮崎富嗣成
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外装・屋根 | 屋根 | |
外装・壁 | 外壁 | 国産スギ |
内装・壁 | 壁 | 国産スギ |
内装・壁 | 壁 | |
内装・水廻り | 衛生器具・付属品 | (TOTO) |
内装・照明 | 照明 | (パナソニック) |
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