片田友樹 / micelleが設計した、鹿児島・鹿屋市の、宿泊施設「KOTOBUKI HOTEL」です。
既存建物を改修増築したビジネスホテルです。建築家は、観光資源の役割と新規性の提供を目指し、既存の横に特徴的形態の別棟が隙間を開けて並ぶ構成を考案しました。また、内部でも“隙間”を意識し多様な背景の人や物の受容も意図しました。本作品は以前掲載した、同設計者による「KOTOBUKI cheese factory」に隣接した敷地に建つ建築です。施設の公式サイトはこちら。
日本南端の半島の中心都市、鹿屋市のビジネスホテル。
低予算の中、現状必要なビジネスホテルを作ることで、虫食い状に空き地が目立ったこの街に足りない観光資源のきっかけになることをことを考えた。
そこで裏の駐車場も敷地として取得してもらい、既存建築物を壊さずに、増築棟を建てて必要床面積を確保することとした。
この増築によって、少しでも街の空き地が減り、食育の充実のために隣の敷地にある弊社が設計したチーズ工場やその隣にある既存のレストランの3施設4棟の建物が集まった小さな街並みができあがり、歩行者スケールの動きや、イベントなどの活気が生まれた。
地元が求める新奇性を含めるために、既存棟にくっついた増築ではなく、路地でも中庭でもない、ただの隙間、inbetween space(有限の空)を挟んで増築し、雰囲気の違う建物が寄り添うような立面とした。加えて、増築棟の階高を既存棟とは変え、さらには全体形を歪めて単純な四角い空間ではなくし、この空間に図としての性質も持たせた。
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以下、建築家によるテキストです。
日本南端の半島の中心都市、鹿屋市のビジネスホテル。
低予算の中、現状必要なビジネスホテルを作ることで、虫食い状に空き地が目立ったこの街に足りない観光資源のきっかけになることをことを考えた。
そこで裏の駐車場も敷地として取得してもらい、既存建築物を壊さずに、増築棟を建てて必要床面積を確保することとした。
この増築によって、少しでも街の空き地が減り、食育の充実のために隣の敷地にある弊社が設計したチーズ工場やその隣にある既存のレストランの3施設4棟の建物が集まった小さな街並みができあがり、歩行者スケールの動きや、イベントなどの活気が生まれた。
地元が求める新奇性を含めるために、既存棟にくっついた増築ではなく、路地でも中庭でもない、ただの隙間、inbetween space(有限の空)を挟んで増築し、雰囲気の違う建物が寄り添うような立面とした。加えて、増築棟の階高を既存棟とは変え、さらには全体形を歪めて単純な四角い空間ではなくし、この空間に図としての性質も持たせた。
両棟をつなぐ渡り廊下や増築棟の廊下は屋外となっており、部屋を出ると農場の匂いや朝霧など幻想的な風景を味わえるような、簡素ではあるが豊かさを得られる構成とした。
また、屋内外の仕上げにおいても混沌・新奇性と洗練・親和性の矛盾を併せ持たせた。なぜなら、ホテルは非常に多くの背景を持った人や物が出入りする空間になるため、空間内に配置されるオブジェクト全てに一人の建築家の一貫性を求めた絶対的な統一ではなく、様々な人や物を受け容れられるような隙間inbetween spaceの多いおおらかで不安定なモノの場とする必要があったからだ。
各々の空間内のオブジェクトを3以上のグループに分け、各々のグループ内で大きさや質感、スタイルなどを揃えるが、グループ間に空間の潮流には沿う程度の差異・矛盾を持たせた。そんな差異・矛盾が、物や人に緊張感を持たせながらも心地よく過ごさせる「糸口」(inbetween space)になると考え、統一せずにそのままにしてとどめておいた。
このようなオブジェクトの関係による空間は、アドルフロースの空間のように排除と包摂の繰り返しによるグルーピングの心地よさや効果を生み、日常の生活に洗練された複雑さを与えるキッチュな空間として、消費社会の空間の新しい視座となるのではないだろうか。
■建築概要
場所:鹿児島県
設計:micelle ltd. / katada tomoki
構造設計:田中哲也建築構造計画
グラフィックデザイン:inoue hironori / F & CREATIONS
アートワーク:五月女哲平
屋上庭園植栽計画:araheam
施工:上之段建設、黒木家具
構造:RC造+鉄骨造
延床面積:1888.91m2
竣工年月:2017年12月~2020年10月
撮影:Lemmart
建材情報種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) | 外装・床 | 床 | Pタイル(田島ルーフィング)
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外装・壁 | 外壁 | ガルバリウム鋼板波板
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外装・屋根 | 屋根 | ガルバリウム鋼板波板
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外装・建具 | 開口部 | 木サッシ(森の窓)
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内装・床 | 共用部床 | 既存床仕上げ、もしくは既存撤去の上、モルタルあらわし
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内装・壁 | 共用部壁 | 既存壁仕上げ、もしくは既存撤去の上、モルタルあらわし
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内装・天井 | 共用部天井 | 躯体コンクリートあらわし
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内装・照明 | 共用部照明 | 既存蛍光灯流用
非常用照明器具
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内装・壁 | 屋内壁 | AEP塗装
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内装・造作家具 | 家具 | 単層ラミナ(トライウッド)
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