織田遼平 / 織田建築設計室が設計した、東京の「日野の住戸」です。
販売の為に団地の一室を改修する計画です。建築家は、予算内でのアフターコロナと現代的要望への応答を求め、天井を“大屋根”と捉えて環境を取り込む空間を考案しました。また、既成の印象に縛られない自由な生活の促進も志向されました。
不動産業を営むオーナーが築50年近い団地の一室を買い取り改修・販売することを考え、設計の相談をいただいた。
典型的な51C型団地の間取り、最小限の水廻りを有する50㎡程度の面積に加え、階段で4階までアクセスする必要があるという条件から、ターゲット層を単身~若年層の夫婦世帯に絞ることにした。
アフターコロナのこれからを見据え、限られた予算の中でいかに現代のニーズに合った新しい団地にアップデートできるかが改修設計のテーマとなった。
団地の構造はRC造のシンプルなラーメン架構、住戸の中心を東西に横断する構造材の大梁は天井から大きく下がっているものの、住戸全体をシンメトリーに映す役割を持ち、構造材としての力強さだけでなくとても美しい存在として感じられた。力強い梁が支える“大屋根”の下、団地特有の豊かな周辺環境をそのまま享受できるような気持ちのよいワンルーム空間を作れないだろうか、そんな考えを元に設計を進めた。
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以下、建築家によるテキストです。
不動産業を営むオーナーが築50年近い団地の一室を買い取り改修・販売することを考え、設計の相談をいただいた。
典型的な51C型団地の間取り、最小限の水廻りを有する50㎡程度の面積に加え、階段で4階までアクセスする必要があるという条件から、ターゲット層を単身~若年層の夫婦世帯に絞ることにした。
アフターコロナのこれからを見据え、限られた予算の中でいかに現代のニーズに合った新しい団地にアップデートできるかが改修設計のテーマとなった。
団地の構造はRC造のシンプルなラーメン架構、住戸の中心を東西に横断する構造材の大梁は天井から大きく下がっているものの、住戸全体をシンメトリーに映す役割を持ち、構造材としての力強さだけでなくとても美しい存在として感じられた。力強い梁が支える“大屋根”の下、団地特有の豊かな周辺環境をそのまま享受できるような気持ちのよいワンルーム空間を作れないだろうか、そんな考えを元に設計を進めた。
狭く長い共用階段のアプローチを抜けた後、室内に入ってから対照的に広がるワンルーム空間の中に、寝室や造作家具を入れ子状に配置し、中心の大梁の存在感を感じながら奥まで見通すことができる広い天井面は、グレーを基調としたインテリアの居住空間をおおらかに包み込む“大屋根”として雑味のない真っ白な塗装で仕上げた。空間の中を横断して広がる土間床は、外部の素材感が居住空間に入り込んでいる感覚を与える要素でもあり、空間に視覚的広がりを感じさせる効果を演出している。
住まい方を限定せず、一般的なルールを逸脱している空間が基本となることで、既存団地が抱えていた既成概念にとらわれない、住まい手それぞれの自由な暮らし方が生まれることを期待している。
■建築概要
題名:日野の住戸
所在地:東京都日野市
主用途:住居
工事種別:改修
設計:織田建築設計室 / 織田遼平
施工:株式会社NEXT / 堀内章
階数:地上5階建ての4階部分
構造:RC造
専有面積:51.31㎡
竣工:2022年5月
写真:下里卓也