SHARE 工藤浩平建築設計事務所による、東京・練馬区の住宅「佐竹邸」。不動産業を営む施主の為に計画。将来的な販売も見据えた在り方も考慮し、異なる機能に引き継ぐ可能性を含めて設計。様々な制限に起因する“ズレ”を活かした“普通”と“特別”が調和する建築
工藤浩平建築設計事務所が設計した、東京・練馬区の住宅「佐竹邸」です。
不動産業を営む施主の為に計画です。建築家は、将来的な販売も見据えた在り方も考慮し、異なる機能に引き継ぐ可能性を含めて設計されました。様々な制限に起因する“ズレ”を活かした“普通”と“特別”が調和する建築である事も意図されました。
また、設計者の事務所のスペースを会場として、本建築をテーマとした「佐竹邸で△△してみたら○○で□□だった展」が、2022年12月3日~18日の期間に開催されます(詳細は、末尾に掲載)。
都内で暮らす夫婦のための、ワークスペースをもった住宅である。
将来的に売ることができる住宅にしたいという建主の要望から、純ラーメン造を選択し、暮らしを囲うことに加えて、住宅とは異なる機能に引き継ぐ可能性も考慮した。
狭小地のため合理的にプランを積み重ねていく一方で、敷地は三方に開いた立面をつくれるため、開口部を通してまちと生活を強く結び付けた。1階では、玄関足元にまちの気配のみ通す下窓を設け、ワークスペースは路地側を全面開口にすることでオフィスとして構えた。
2階リビングは前面道路にせり出し3面をガラス張りにし、住まい手によって用途を変える舞台のようなかたちとした。
3階に水回りとサンルームをまとめ、空地に対して大きく開くことでまちへの広がりを感じ、ロフトはトップライトからたくさんの光を受ける。
多方面の制限から生まれた段差や形状のズレを受け入れ、そのまま現れる立面とディティールの集まりとなるように計画した。また余分なものを隠したり省いたり手間をかける=コストをかける部分と、ラフに見せる=コストをかけない部分を建主と細かく共有し、この住宅では何が重要で、何を許容できるかを一緒に考えながら進めていった。
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以下、建築家によるテキストです。
工藤浩平建築設計事務所の工藤浩平と宮崎侑也によるテキスト
小さな敷地から大きくまちを拾い集めること
都内で暮らす夫婦のための、ワークスペースをもった住宅である。
将来的に売ることができる住宅にしたいという建主の要望から、純ラーメン造を選択し、暮らしを囲うことに加えて、住宅とは異なる機能に引き継ぐ可能性も考慮した。
狭小地のため合理的にプランを積み重ねていく一方で、敷地は三方に開いた立面をつくれるため、開口部を通してまちと生活を強く結び付けた。1階では、玄関足元にまちの気配のみ通す下窓を設け、ワークスペースは路地側を全面開口にすることでオフィスとして構えた。
2階リビングは前面道路にせり出し3面をガラス張りにし、住まい手によって用途を変える舞台のようなかたちとした。
3階に水回りとサンルームをまとめ、空地に対して大きく開くことでまちへの広がりを感じ、ロフトはトップライトからたくさんの光を受ける。
狭小地だからこそ開口部が際立ち、人の移動を伴ってめくるめくように情景が移り変わっていく。そういった生活の一部を外に放り投げるようなダイナミックさは、まちから見ても魅力的で価値の残るものになると思った。
「普通」と「特別」の混ざり合ったディティール
多方面の制限から生まれた段差や形状のズレを受け入れ、そのまま現れる立面とディティールの集まりとなるように計画した。また余分なものを隠したり省いたり手間をかける=コストをかける部分と、ラフに見せる=コストをかけない部分を建主と細かく共有し、この住宅では何が重要で、何を許容できるかを一緒に考えながら進めていった。
たとえば開口部については、まちとの関係を強調する箇所には造作サッシ、機能性が必要な箇所には既成サッシを使い、都市との関係性をはっきりさせた。そういった都市に現れるディティールの物々しさが、都市への期待と厳しさの中で背伸びをして生きる、住まいの切実さだと感じた。
一方で、清々しくひとつにまとまるような色や素材や質感を考え全体の調停を行った。この手続きの連続で生まれた混沌の中にも、ふと建築の全体像が立ち現れる。
施主の佐竹雄太によるテキスト「何を受けもつのか」
これは不動産業を生業にする私の家である。
自ら土地を探し、仲介を行った。建主の立場でコストや家族のライフプランについて考えながら進めていくうちに、段々と一生涯同じ家に住むというイメージが湧かなくなってきた。そのため、早々にその考えを捨て、今と未来の自分たちに適した立地や広さを想定して進めることにした。
まず、土地と建物の総額と内訳を決めるうえで市場性を考慮し、最寄り駅から徒歩圏内ではあるが35㎡と極端に小さいがゆえに安価である土地に出会い、購入することにした。
建物は、自ら住む時間を超え、長期的に残り続けるものとそうでないものに分けて考えた。敷地のポテンシャルを最大化する器(構造)に予算を集中し、設備や内装はなるべく安価な既製品を使うなど、将来のバトンパスを見据えたバランスを意識しながら設計者と共に計画を進めていった。その中で、どこか自分の家(いわゆる「マイホーム」)ではなく、「社会に残る器」をつくっているような感覚になってきているのを感じた。
振り返ると、それは1年先すら予測することが難しい現代において、重過ぎる「ローン」という制度による時間と場所の拘束から解放されるために、引き継ぐことを意識した社会性・市場性という新しい責任を受けもつことだったのかもしれない。
将来、この考え方を特殊解に留めることなく広げていくことで、住宅を取り巻く流通と金融の仕組みを変えていきたい。そうすることで、建築家との家づくりはもっと軽やかになると考えている。自ら一歩を踏み出してみることで、ひとつのきっかけになれたらと思う。
■建築概要
題名:佐竹邸
所在地:東京都練馬区
主用途:住宅+ワークスペース
設計:工藤浩平建築設計事務所
担当:工藤浩平、小黒日香理*、宮崎侑也 *元所員
協力:平岩構造計画 平岩良之、藤本貴之
階数:地上3階
構造:鉄骨造
敷地面積:35.32㎡
建築面積:27.15㎡
延床面積:71.20㎡
設計:2020年8月~2021年7月
工事:2021年8月~2021年12月
竣工:2021年12月
写真:楠瀬友将
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外構・床 | 外構 | モルタル敷き+砂利敷き |
外装・壁 | 外壁 | 外装薄塗材(エスケー化研) |
外装・屋根 | 屋根 | 塩化ビニル樹脂系防水シート(アーキヤマデ) |
内装・床 | リビング 床 | コンポジションタイル(東リ) |
内装・壁 | リビング 壁 | クロス |
内装・天井 | リビング 天井 | デッキプレート表し |
内装・キッチン | キッチン | 木製システムキッチン(TOOL BOX) |
内装・浴室 | バスルーム | ユニットバス(LIXIL) |
内装・照明 | 照明 | ダウンライト(パナソニック) |
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佐竹邸をテーマとした展覧会「佐竹邸で△△してみたら○○で□□だった展」
ある時は絵、またある時は映像、ぬいぐるみ、写真、音声、お菓子、アパレル、、果たして佐竹邸の実体は?
一つの住宅からの遊び、学び、暮らしなど色んな角度で掘り下げて、佐竹邸を読み解いたり愛でたりする展覧会が始まります。
■開催概要
展覧会タイトル:「佐竹邸で△△してみたら○○で□□だった展」
会期:2022年12月3日(土)~18日(日)
開場時間:13:00~18:00
会場:工藤浩平建築設計事務所・3階特設ギャラリースペース
東京都台東区浅草橋2-27-10 日の出ビル3F
アクセス:都営浅草線、中央・総武線浅草橋駅徒歩4分
都営浅草線 蔵前駅徒歩6分
都営大江戸線 蔵前駅徒歩11分
入場料:無料(予約不要)
出展者:佐竹雄太、工藤浩平、ちまきFM(堀修生 高橋りかこ)、haco、古渡大、堀越優希、村瀬礼(けんちくぐるみクリエイター)etc
主催:株式会社工藤浩平建築設計事務所、株式会社ハウシズ、株式会社アラウンドアーキテクチャー