SHARE 井原正揮+井原佳代 / ihrmkによる、東京・目黒区の「洗足の集合住宅 かのん」。道路拡幅で街並みが変わる住宅街に計画。限られた敷地と法規の中で要求戸数を求め、変形切妻屋根の“小さく高い”建築を設計。内外に意図を込めた小さな要素を散りばめて“自由な振舞”を引き出す
井原正揮+井原佳代 / ihrmkが設計した、東京・目黒区の「洗足の集合住宅 かのん」です。
道路拡幅で街並みが変わる住宅街に計画されました。建築家は、限られた敷地と法規の中で要求戸数を求め、変形切妻屋根の“小さく高い”建築を設計しました。また、内外に意図を込めた小さな要素を散りばめて“自由な振舞”を引き出す事も意図されました。
目黒区洗足、西小山駅にほど近い木造住宅密集地域に建つ、小さな集合住宅である。
元々85㎡程度あった敷地の大部分は都市計画道路事業着手に伴う用地買収で失われ、35㎡の不整形な土地が残った。西小山駅周辺は元々、通りによって個性が違う味のある街だったが、昔ながらの商店は次々と取り壊され、新しい小さな集合住宅と拡幅を待つ空地へと急スピードで置換されている最中での計画であった。
クライアントからの要求は、長年この土地に住んでいた母の住まいと賃貸できる部屋を2室の合計3室、全ての部屋にロフトを設けること、そして、1階は将来的には自ら育てた有機フルーツを販売できるショップにしたいとのことだった。高度斜線や日影規制を受けながらそれらの希望を叶えるため、変形切妻屋根を持つ10.8mの小さく高い建物とした。
また、不燃化推進特定整備地区であるため、耐火建築物とした。耐火建築物は、CLTなどの特殊な技術・認定を使わない限りメンブレン型耐火被覆によって木部が全て覆われてしまうことが多い。そこで、水回りやロフトのある部分にメンブレン型耐火構造の耐力壁を集約、1.5層分の高さを持つ居室側に開口や木現しとなる部分を集約させることとした。
南北壁面はケイカル板12mmを3枚重ねることで耐火構造告示仕様の外壁となるため、その内側に造作としてツーバイ材とシナ合板で構成した木リブ壁を設けた。柔らかいツーバイ材は間に棚をはめ込んだりすることで居住者が好きにいじることのできる、人間に近い構造である。
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以下、建築家によるテキストです。
洗足の集合住宅 かのん
目黒区洗足、西小山駅にほど近い木造住宅密集地域に建つ、小さな集合住宅である。
元々85㎡程度あった敷地の大部分は都市計画道路事業着手に伴う用地買収で失われ、35㎡の不整形な土地が残った。西小山駅周辺は元々、通りによって個性が違う味のある街だったが、昔ながらの商店は次々と取り壊され、新しい小さな集合住宅と拡幅を待つ空地へと急スピードで置換されている最中での計画であった。
クライアントからの要求は、長年この土地に住んでいた母の住まいと賃貸できる部屋を2室の合計3室、全ての部屋にロフトを設けること、そして、1階は将来的には自ら育てた有機フルーツを販売できるショップにしたいとのことだった。高度斜線や日影規制を受けながらそれらの希望を叶えるため、変形切妻屋根を持つ10.8mの小さく高い建物とした。
また、不燃化推進特定整備地区であるため、耐火建築物とした。耐火建築物は、CLTなどの特殊な技術・認定を使わない限りメンブレン型耐火被覆によって木部が全て覆われてしまうことが多い。そこで、水回りやロフトのある部分にメンブレン型耐火構造の耐力壁を集約、1.5層分の高さを持つ居室側に開口や木現しとなる部分を集約させることとした。
南北壁面はケイカル板12mmを3枚重ねることで耐火構造告示仕様の外壁となるため、その内側に造作としてツーバイ材とシナ合板で構成した木リブ壁を設けた。柔らかいツーバイ材は間に棚をはめ込んだりすることで居住者が好きにいじることのできる、人間に近い構造である。
また、吹き抜けが東側外壁に集中していることから、耐風性能を担保するために各室に鉄製のロッドを設ける必要があったが、これを鉄棒と同じ断面性能とすることで、リモートワークのリフレッシュや健康のために人がぶら下がったり、洋服をかけたり、あるいは簡単な間仕切りレールとしたりできる。
外部は、1階下屋の上に跨るドブ漬けの外階段とその上の大きな庇、高齢の母の目印としての赤黄緑の3色ドア、各階全てにロフトを設けたことで周りより少しだけ高いボリュームとそれをくるむ10.8m一発葺きのガルバスパンドレル、3階ロフトのために生まれた切妻とギャンブレルのキメラ屋根によって構成した。
内外においてそれぞれの要素がそれぞれの意味を持って自由に振る舞うようなセッションによって、元々この土地が持っていた個性ある文化を引き継いだ相互作用が生まれることを期待している。
■建築概要
題名:洗足集合住宅「かのん」
所在地:東京都目黒区洗足
主用途:長屋(1住戸)+共同住宅(2住戸)
建主:個人
設計監理:ihrmk 担当/井原正揮、井原佳代、郡司勲(元所員)
構造設計:長谷川理男 / oha
設備設計:山崎設備設計
施工:亀井工務店
階数:地上3階建て
敷地条件:近隣商業地域 防火地域第3種高度地区 地区計画 日影規制
主体構造:木造
杭・基礎:べた基礎
建蔽率:73.39%(許容:100%)
容積率:173.92%(許容:300%)
敷地面積:35.84㎡
建築面積:26.30㎡
延床面積:80.18㎡
設計:2020年3月~2021年4月
工事:2021年5月~2021年12月
竣工:2021年12月
写真:高橋菜生
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外装・屋根 | 屋根 | ガルバリウム鋼板縦ハゼ葺き t0.35 |
外装・壁 | 南・東・北面外壁 | |
外装・壁 | 西面外壁 | 窯業系サイディングt14:モエンサイディング-Mシンプルライン(ニチハ) |
内装・床 | 玄関・水廻り床 | |
内装・床 | 居室床 | |
内装・壁 | 壁 | GB-F t=21×2の上ビニールクロス |
内装・壁 | 木リブ部壁 | シナ合板t3.0/SPF [2×8] @303の上、自然保護塗料(オスモ&エーデル) |
内装・天井 | 天井 | GB-F t=21+25の上ビニールクロス |
内装・キッチン | 1階キッチン | 造作 |
内装・キッチン | 2・3階キッチン | |
内装・照明 | 居室照明 | ライティングレール直付け(Panasonic) |
内装・照明 | 玄関照明 | |
外構・床 | 外構 | 土間コンのうえ防塵塗装仕上 |
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Kanon is a small apartment house located in a densely populated neighborhood of wooden houses near Nishi-koyama Station in Senzoku, Meguro Ward, Tokyo. A large part of the site, which used to be around 85 square meters, was lost to the land acquisition for starting a city planning road project, leaving an irregularly shaped 35 square meter site. The district around Nishi-koyama Station used to be a town where each street had its unique character, whereas now, small old-fashioned shops are being demolished to be rapidly replaced with new small housing complexes and large vacant lots.
The client requested to create three units in total: one for their mother, who has lived there all her life, and two units to be rented, each with a loft. In addition, the ground floor was designed with the prospect of opening a shop in the future where they could sell organic fruits that they would grow. Combining such requests with the slant-line and shadow-casting regulations, we decided on a small 10.8-meter-tall house with a deformed gable roof.
It is also a fireproof building as the site is within the Special Fireproof Promotion Area. Fireproof buildings tend to have their wooden parts entirely covered by membrane fire-resistant coating unless special techniques and certifications, such as CLT, are applied. Therefore, we concentrated the loadbearing walls with a membrane fireproof structure around the plumbing and loft areas while concentrating the openings and exposed wooden texture around the 1.5-story-high room area.
As the exterior walls on the north and south sides consist of three layers of 12-millimeter calcium silicate boards complying with the Fireproof Construction Notice, we constructed a wooden rib wall made of two-by-four material and conifer plywood. The soft two-by-four materials are human-friendly as they could be easily customized by the residents, for example by installing shelves.
Moreover, because we placed multi-story spaces on the east exterior wall side, it was necessary to install iron rods in each room to ensure wind resistance. However, by giving them the same cross-sectional performance as horizontal bars, residents can use them for pull-ups for health and psychological benefits while working from home, hanging clothes, or as a rail for hanging a partition.
The exterior consists of a hot-dip galvanized staircase that sits over the ground floor volume and giant eaves above it; three doors, each colored in red, yellow, and green recognizable for the aging mother; a 10.8-meter-tall fireproof galvalume wrapped around a volume that is relatively taller than the surrounding buildings due to providing lofts on every story; and a combination of a gable and gambrel roofs created to suit the third-floor loft.
Through a jazz-like session where each element, indoors and outdoors, behave freely on its own term, we hope to see new interactions that derive from and resonate with the area’s unique culture.