遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める外観 photo©中山保寛
遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める濡れ縁 photo©中山保寛
遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める広縁 photo©中山保寛
遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める広縁から家族の場所2を見る。 photo©中山保寛
遠藤隆洋建築設計事務所が設計した、長野・軽井沢町の別荘「軽井沢の居場所」です。
4家族14人が集まる別荘の建替です。建築家は、今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案しました。また、広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”を受け止める事も意図されました。
1族4家族、14人のための別荘建替え計画である。
敷地はクリ、モミ、ミズキなどからなる広大な林の中にあり隣家は見えない。施主一族は、この地で別荘を所有して既に長い年月を過ごしており、そこには膨大な経験があった。
木漏れ日が差し込み鳥の声がこだまする朝の情景が贅沢である事、谷底の小川へ降りて西瓜を冷やすためにはまず草刈りをして道を作らなくてはいけない事、栗拾いをして、薪割りをして、落ち葉ですら子供たちの遊び道具になる事、など林の中に出ていき、そこから学ぶ姿勢が建主たちの過ごし方であった。
毎年お盆には、14人が集い1週間この地に滞在する。施主は、3食の炊事、掃除、洗濯をこなしながら他者と共存する過ごし方を「合宿のようなもの」と要約した。「林の中に出て行くこと」、「合宿のようなもの」このふたつの経験を手がかりとして設計を進めた。
延床面積は既存建物と同じ約200㎡と設定し、東に向かって傾斜する林との接点を最大限もつよう、南北に細長い計画とした。約30mの細長い建物としたことで、既存建物のために造成した平坦な部分を超え、未造成の傾斜地にまで建築することにした。平坦部と傾斜部では最大1mの段差が生じることになり、その段差を積極的に受け止める計画とした。
具体的には、どこからでも林の中に出て行くことができるよう、長手面をポスト柱と引き違いのアルミサッシで構成し、地形に追従するよう複数の段差をもつ平屋とした。その形式を実現するために、外側の大きな軽い屋根で受け止めた水平力を、内側の小さな重い屋根に受け流す構造計画としている。
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める俯瞰 photo©中山保寛
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める外観 photo©中山保寛
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める外観 photo©中山保寛
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める既存テラス、左奥に玄関ホールがある。 photo©中山保寛
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める玄関ホールの出入口を見る。 photo©中山保寛
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める左:食堂、右:居間 photo©中山保寛
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める左:食堂、中:居間、右:広縁。 photo©中山保寛
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める食堂 photo©中山保寛
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める食堂から居間を見る。 photo©中山保寛
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める居間 photo©中山保寛
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める広縁 photo©中山保寛
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める広縁 photo©中山保寛
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める濡れ縁 photo©中山保寛
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める濡れ縁 photo©中山保寛
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める濡れ縁 photo©中山保寛
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める濡れ縁 photo©中山保寛
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める広縁 photo©中山保寛
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める広縁 photo©中山保寛
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める広縁から家族の場所2を見る。 photo©中山保寛
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める家族の場所2 photo©中山保寛
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める洗面脱衣室から広縁の方を見る。 photo©中山保寛
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める平面図 image©遠藤隆洋建築設計事務所
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める断面図 image©遠藤隆洋建築設計事務所
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める断面図 image©遠藤隆洋建築設計事務所
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める座屈止め詳細図 image©遠藤隆洋建築設計事務所
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める座屈止めの詳細 photo©遠藤隆洋建築設計事務所
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遠藤隆洋建築設計事務所による、長野の別荘「軽井沢の居場所」。4家族14人が集まる別荘の建替。今までの“林での活動”と“合宿の様な過ごし方”に着目して、林との接点を最大化する“約30mの細長い”建築を考案。広縁と濡れ縁を設けて滞在中の“溢れる活動”も受け止める座屈止めの詳細 photo©遠藤隆洋建築設計事務所
以下、建築家によるテキストです。
経験を受け止める居場所
1族4家族、14人のための別荘建替え計画である。
敷地はクリ、モミ、ミズキなどからなる広大な林の中にあり隣家は見えない。施主一族は、この地で別荘を所有して既に長い年月を過ごしており、そこには膨大な経験があった。
木漏れ日が差し込み鳥の声がこだまする朝の情景が贅沢である事、谷底の小川へ降りて西瓜を冷やすためにはまず草刈りをして道を作らなくてはいけない事、栗拾いをして、薪割りをして、落ち葉ですら子供たちの遊び道具になる事、など林の中に出ていき、そこから学ぶ姿勢が建主たちの過ごし方であった。
毎年お盆には、14人が集い1週間この地に滞在する。施主は、3食の炊事、掃除、洗濯をこなしながら他者と共存する過ごし方を「合宿のようなもの」と要約した。「林の中に出て行くこと」、「合宿のようなもの」このふたつの経験を手がかりとして設計を進めた。
延床面積は既存建物と同じ約200㎡と設定し、東に向かって傾斜する林との接点を最大限もつよう、南北に細長い計画とした。約30mの細長い建物としたことで、既存建物のために造成した平坦な部分を超え、未造成の傾斜地にまで建築することにした。平坦部と傾斜部では最大1mの段差が生じることになり、その段差を積極的に受け止める計画とした。
具体的には、どこからでも林の中に出て行くことができるよう、長手面をポスト柱と引き違いのアルミサッシで構成し、地形に追従するよう複数の段差をもつ平屋とした。その形式を実現するために、外側の大きな軽い屋根で受け止めた水平力を、内側の小さな重い屋根に受け流す構造計画としている。
この地での滞在が始まると、4家族それぞれの寝室にあたる「家族の場所」に隣接する広縁、濡れ縁は、時には居間、玄関、テラス、洗濯物干し場、とさまざまな活動に溢れる。廊下であった場所がある時には居間になる、というような転用性のあるつくり方である。段差はそういったさまざまな「居場所」のきっかけとなる。さらに、基礎コンクリートが段差に顔を出す納まりとすることで、この建築が傾斜した地形に寄り添っていることを認識させる。
一族であり、家族であるけれども他人でもある。そういった曖昧な関係の中で展開される営みに対して転用性のある居場所を設けた。この環境に身を乗り出して得た経験を受け止め、曖昧な関係を受け止める居場所としてこの建築を計画した。この広大な林の中での施主一族の生き方を後押しする建築の提案である。
(遠藤隆洋)
■建築概要
所在地:長野県北佐久郡軽井沢町
主要用途:別荘
家族構成:一族四家族14人
設計・監理:遠藤隆洋建築設計事務所 担当:遠藤隆洋
施工:青木屋
協力 構造:Graph Studio 担当:福島佳浩
照明:杉尾篤照明設計事務所 担当:杉尾篤
規模構造:木造在来軸組工法・2階建て
敷地面積:2,982.74m2
建築面積:200.05m2(建蔽率6.7% 許容20%)
延床面積:194.35m2(容積率15.34% 許容20%)
1階:185.49m2
2階:8.86m2
設計:2020年10月〜2021年8月
施工:2021年9月〜2022年11月
竣工:2021年12月
写真:中山保寛