SHARE 建築家の千葉学と西澤徹夫の対談「穴が開くほど見る―建築写真から読み解く暮らしとその先 第9回」の動画がLIXILのサイトで期間限定で無料配信。其々が選んだ、アルド・ファン・アイク、吉村順三、OMA、香山アトリエ/環境造形研究所の作品の写真を題材に、建築と写真の関係性や可能性を議論
建築家の千葉学と西澤徹夫の対談「穴が開くほど見る―建築写真から読み解く暮らしとその先 第9回」の動画がLIXILのサイトで期間限定で無料配信されています。
其々が選んだ、アルド・ファン・アイク、吉村順三、OMA、香山アトリエ/環境造形研究所の作品の写真を題材に、建築と写真の関係性や可能性を議論しています。視聴申込期間は、2024年1月15日(月)まで。また、本記事では、テーマとなった写真と語られた内容のキーワードも掲載します。【ap・ad】
LIXILと「新建築住宅特集」は、これまで「穴が開くほど見る──建築写真から読み解く暮らしとその先」と題し、名作住宅の建築写真を隅々まで掘り下げて読み取る企画を展開してきました。
1枚の写真から時代背景、社会状況、暮らし、建築家の思いなど、読み取る側の想像も交えながら細部まで紐解くことで、時代を超えた大切なものを見つめ直し、未来に向けた建築のあり方を探ります。
今回は、「新建築住宅特集」23年12月号に掲載された、本企画 第9回目の千葉学氏と西澤徹夫氏の対談動画を、期間限定で配信いたします。ぜひご登録のうえ、ご視聴ください。
(2023年10月23日 東京都港区 堀ビルにて収録)
千葉学が語る自身の学生時代(アーキテクチャーフォト編集部が抜粋)
1982年に建築学科に入学 / 入学時はポストモダンの全盛期の頃 / ポストモダンの建築には心が動かなかった / 雑誌を読み込むというより実際に見に行っていた / 写真と体験した空間が大きく違っていた / 写真は信用できないとおもっていた / 建築を理解する為に図面のトレースを行っていた / その他
西澤徹夫が語る自身の学生時代(アーキテクチャーフォト編集部が抜粋)
課題と課題の合間に図書館で雑誌のバックナンバーを見ていた。 / ぼくらの世代はナチュラルボーンポストモダニスト / 理論から入るというよりも新しい表現を探していた / レファレンスを探す為にひたすら見ていた / 図面を読む訓練を意識的にしていた / 図面を見てパースをスケッチしていた / その他
千葉学のプロフィール
千葉学(ちば・まなぶ)
1960年東京都生まれ/1985年東京大学工学部建築学科卒業/1987年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了/1987~93年日本設計/1993~2001年ファクターエヌアソシエイツ共同主宰/2001年千葉学建築計画事務所設立/2001~13年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授/2013年~東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授
西澤徹夫のプロフィール
西澤徹夫(にしざわ・てつお)
1974年京都府生まれ/2000年東京藝術大学大学院修了/2000~05年青木淳建築計画事務所/2007年~西澤徹夫建築事務所/2023年~京都工芸繊維大学特任教授
西澤徹夫が1枚目に選んだ写真「Circle Terrace (Amsterdam Orphenage)(Aldo Van Eyck, 1958~61年)」
この写真について語られたキーワード(アーキテクチャーフォト編集部が抜粋)
西澤が語ったキーワード:アルド・ファン・アイクが昔から好き / 選んだ写真は孤児院の案フレットの裏表紙 / 敢えて写真の周りの文字も含めてもらった / シンメトリーっぽい構図が良い / 少年が空中に浮いている瞬間を撮っているのが躍動感を生んでいる / ブレッソンの決定的瞬間を思い出させてくれる / この時代の建築写真にしては人がたくさん映っている / 影が丁度45度くらいでカメラマンが待っていたのではないか / この建築は八戸市美術館の設計時に凄く参照していた / 段差の使い方を勉強した / モダンな形式をとっているけど、実は細かい操作を沢山している / 床の起伏で平面が揺り動かされていく / 写真1枚に建築の要素が全て入っている / その他
千葉が語ったキーワード:アルド・ファン・アイクと槇文彦が親交があった / アイクの思想がヒルサイドテラスにも影響を与えている / ぱっとみると均質なグリッドが広がっていくように見えるが、中はきめ細かいつくりをしているのが面白い / モダニズム建築と手つかずの自然が対比的に映っているのが面白い / その他
千葉学が1枚目に選んだ写真「軽井沢の家Ⅰ(吉村順三、1962年)」
この写真について語られたキーワード(アーキテクチャーフォト編集部が抜粋)
千葉が語ったキーワード:建築は実際に見に行くことが多いので、写真を選ぶのに苦労した / 大学での最初の課題がこの建築の図面のトレースだったので、写真をよく見ていた / 良いのは分かっていたが、何を学べばよいのか分からないままトレースしていた / 1962年に別荘をつくるということはどういうことだったのか / 何故この家具の配置なのか? ソファが外を向いていない / 家具の向きや配置は、空間と生活の関係が現れる / どういう風に自然と暮らすかが分かりにくいと感じた / 場面場面でレイアウトを変えていたのではないか / 外観の板張りと内部の板張りの方向を90度回転させている。それは外と中の在り方を変える意図ではないか / 外の自然と建築を対比的に見せている / 自然に飛び込んでいく感じではない / 自然を背景や風景として扱う設計に見える / 自身の別荘の設計のベンチマークになってる / その他
西澤が語ったキーワード:ぼくも1年生の夏休みに宿題で図面をトレースした / 当時の藝大の先生が皆傑作だと言っていた / 意図的にこちらの世界観と距離をとるようにしてきた感覚がある / 椅子の向きの話でその考えを改めようと思った / その他
西澤徹夫が2枚目に選んだ写真「クンストハル美術館(OMA、1992年)」
この写真について語られたキーワード(アーキテクチャーフォト編集部が抜粋)
西澤が語ったキーワード:世界中の建築学生がまさに穴が開くほど見ている建築 / 真ん中の建具の左と右で異なるパースペクティブが並んでいる / それがこの建築を象徴している / 最も好きな建築のひとつ / 建築に色々なアイデアやユーモアを入れて良いんだということを教えてくれた建築 / 過剰であることが抽象性を生み出している / 削るのではなくどんどん足して行く / 経験している方が頭の中で理解できなくなってくる / ディテールに目が行って理解が断片化されていく / 事後的に脳内で組みあがっていく建築 / 回ってみないと全体が把握できないところに現代性を感じる / カメラマンが良くこのアングルを見つけたと思う / 写真にも、まだまだ可能性があると思わされる一枚だと思う / この写真はOMAの手によるリノベの後に撮られたもの / その他
千葉が語ったキーワード:実際に見に行って衝撃的だった / どこに行っても楽しい建築 / 見どころも満載 / 全体を歩くとサーキットのようだと思う / サーキット的な空間の面白さ / その他
千葉学が2枚目に選んだ写真「千ヶ滝の山荘(香山アトリエ / 環境造形研究所、1983年)」
この写真について語られたキーワード(アーキテクチャーフォト編集部が抜粋)
千葉が語ったキーワード:自身が香山先生に学んだ / 学生時代に見に行って衝撃を受けた / 冬を旨としてつくったのではないかというほど、非常に閉じた別荘 / 開口部を閉めると壁になる / 中間領域がない / 自然と関わるのではなく、自然を一旦シャットダウンする山小屋の基地みたいに思える / 香山先生の師匠のルイス・カーン的でもある / 風景を楽しむことが想像できない別荘 / 吉村順三の別荘と対照的だがそれが魅力でもある / 椅子はライトのものではないか / 当時の建築家が帝国ホテルの解体時に家具を引き取りに行ったと聞いたことがある / 自然の関わり方が両極で中間がない / 材料を使う向きが何を意味するのかを考えさせられる / 別荘の設計時に立ち返る作品でもある / その他
西澤が語ったキーワード:椅子の六角形がカーンかライトかで気になった / 設計時にはこの椅子は想定していなかったのでは / 空間のアーティキュレーションにカーンの思想が感じられる / ブレースの入れる位置に明確な意図を感じる / その他
対談風景