SHARE 成瀬・猪熊建築設計事務所による「KOIL 柏の葉オープンイノベーションラボ」
photo©西川公朗
成瀬・猪熊建築設計事務所(facebookページ)が設計したワークプレイス「KOIL 柏の葉オープンイノベーションラボ」です。
以下、建築家によるテキストです。
KOIL 柏の葉オープンイノベーションラボ
都市化するワークプレイス
イノベーションセンターとは、ひとことで言うなら企業や個人が従来の枠組を超えて、イノベーションのために協働するためのプラットフォームのような場所である。コワーキングスペースとの最も大きな違いは、大きな企業の一部署もフラットに参加する組織の再編成のような機能を持っていることだろう。当然建築も、これまでの<オフィス>とは異なった性質であることが必要とされる。
20世紀型のオフィスが、事務作業に特化した空間であったのに対し、KOILは、分野を横断するコミュニケーションを円滑にするために、一つのワークプレイス内に、様々な機能を内包する。食べる場所、作る場所、プレゼンテーションする場所、くつろぐ場所など。フリーアドレスの契約者は様々な場所を自由に選び取って仕事をし、固定席の契約者も、ファクトリーやカフェといった共用の機能をシェアすることで、他の利用者と様々な接触が生まれる。また、セキュリティフリーな場所が大きくとられているため、契約者以外もこの空間の一部を利用可能である。このワークプレイスは、従来のオフィスを大きく超え、様々な活動が同時多発的に起こる、都市のような場所となる。
新しいフレキシビリティ
そうした都市的な活動を内包する場所には、均質を基本とする従来のオフィスとは異なり、それに相応しい多様な空間が必要である。そのために私たちが行ったのは、複数の契約形式のエリアが中央のパブリックゾーンで交わる配置と、エリアごとの天井高さ・照明の色温度・仕上げの調整である。
これらは、場所ごとの空間や利用の性質を限定することで、従来のオフィスに比べて制約を増やしているようにも見えるが、全体が有機的に機能するよう配置することで、ユーザーのあらゆるワークスタイルに対応できる場へと統合される。20世紀のオフィスが、監理側のフレキシビリティを成立させていたのに対し、この空間は各々のワーカーにとってのフレキシビリティを獲得しているのである。
未完成を作る
都市的な人々のアクティビティがそのまま空間の魅力となることを目指し、建築がそれ自体で完結したデザインにならないよう、未完成さを強調するような設計を行った。共用部の天井は、ギラギラしたダクトを現し、それに照明を当て込むことで空間上部の輪郭を曖昧にし、擬似的に外のような開放感を作っている。仕上げにおいても、木毛セメント板素地・PBパテ扱きのうえクリア塗装等、下地材がそのまま仕上げあになるような試みを徹底的に行っている。これによって、しばしば最終的な仕上げがイメージさせてしまうデザイン的なスタイルや意味を回避することを試みた。また、設計者として家具の配置を決定することをできる限り避け、家具は基本的にほとんどがキャスター付きで、使い方に応じて様々に空間が変化することを目指した。結果的にKOILの空間は、均質・白・整列といったあらゆる20世紀的なオフィスの言語を全て覆した、全く新しいワークプレイスとなっている。
■建築概要
設計 建築 成瀬・猪熊建築設計事務所
担当/成瀬友梨、猪熊純、古市淑乃
http://www.narukuma.com/
https://www.facebook.com/naruseinokuma
設備 環境エンジニアリング
照明 岡安泉照明設計事務所
カーテン 安東陽子デザイン
家具 成瀬・猪熊建築設計事務所
バッタ☆ネイション
サイン れもんらいふ
企画・プロデュース 三井不動産、ロフトワーク
施工 乃村工藝社
計画面積 2576m2
竣工 2014年2月
所在地 千葉県柏市 柏都市計画事業柏北部中央地区148街区内 ショップ&オフィス棟 6階