SHARE 松葉邦彦 / TYRANTによる、東京都八王子市の「長澤歯科医院」
all photos©広川泰士
松葉邦彦 / TYRANTが設計した、東京都八王子市の「長澤歯科医院」です。
また、ウェブサイト HITSPAPERには、この建物を含む松葉が手掛けた建築についてのインタビューが掲載されています。
落ちそうで落ちない、ギリギリの状態で乗っている積み木のような建物です。
東京都八王子市郊外の住宅地に建てられた歯科医院兼住居の建物です。元々畑だった敷地は十分に広く、ゆったりとした環境の中で歯科医院と住居、併せて車2台が停められるガレージと7台分の患者用駐車場の計画を行いました。
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以下、建築家によるテキストです。
長澤歯科医院
落ちそうで落ちない、ギリギリの状態で乗っている積み木のような建物です。
東京都八王子市郊外の住宅地に建てられた歯科医院兼住居の建物です。元々畑だった敷地は十分に広く、ゆったりとした環境の中で歯科医院と住居、併せて車2台が停められるガレージと7台分の患者用駐車場の計画を行いました。
ガレージや駐車場は車の出し入れを考慮すると前面道路に寄りに計画するのが一番使いやすい配置です。ただその場合、敷地の奥の方に建物を配置することになり、周辺からの歯科医院の存在感が薄くなってしまいます。一方で建物を前面に出すと計9台分の駐車スペースの動線計画に支障をきたしてしまいます。
そこで前面道路側にガレージを置き、極力離して歯科医院を配置することで2つのボリュームの間に最大限のスペースを確保し、その両方の縁にギリギリの状態で乗るようにして住宅を積みました。そうすることで、使いやすい駐車スペースと存在感のある建物の両方を実現しています。
歯科医院の長方形平面は短冊状に切り分け、待合、診察、廊下、その他諸室といった機能が割り振りました。細長い平面の住居は階段室を中心に北側にLDK、バス、トイレといった共用部を、南側にベットルームなどの諸室を配置しています。
内外部共に照明は間接照明を基本としています。歯科医院の外壁面には線状のLED照明が上向き設置されています。また歯科医院の待合室や住居のリビングは、線状のコーニス照明で計画されており、内外部共に線状の光が壁面を柔らかい光で照らします。
今回計画した建物は一般的な2階建てから一番遠い状態にある2階建です。何故なら2階が1階の上にほとんど乗っていません。本来求められている経済性や効率という観点から見ると、無駄な建物になってしまっているかもしれません。
しかし、ギリギリで積まれた緊張感のある建物は、現代建築であるにも関わらず、梁と柱による伝統的な日本建築の雰囲気を感じさせるとともに、他には無い圧倒的な存在感を放ちます。また、住居部下部の柱無空間のピロティは単なる人や車の動線としてだけでなく、天気の良い日には椅子やテーブルを置いて待合室やリビング代わりとして使われます。
経済性や効率では測れない、圧倒的な存在感や気持ちの良い空間を持った建築を実現しました。
■建築概要
所在地:東京都八王子市
用途:歯科医院・住宅
敷地面積:559.6m²
用途地域:準工業地区準防火地域
建築面積(建坪率):213.1m²(38.09%)
延床面積(容積率):206.32m²(36.87%)
構造:壁式鉄筋コンクリート造+鉄骨造、地上2階
設計:松葉邦彦(株式会社TYRANT)
構造設計:寺戸巽海(寺戸巽海構造計画工房)
照明デザイン:東海林弘靖(有限会社ライトデザイン)
施工:株式会社相武企業
設計期間:2013年10月〜2014年2月
工事期間:2014年4月〜2014年9月