SHARE 長坂常 / スキーマ建築計画+明治大学構法計画研究室が改修を手掛けた、東京都調布市の「つつじヶ丘の家」
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長坂常 / スキーマ建築計画+明治大学構法計画研究室が改修を手掛けた、東京都調布市の「つつじヶ丘の家」です。
門脇耕三研究室との共同プロジェクトである。そして、施主は門脇耕三本人で、転売を考え改修に至った物件である。敷地は二項道路に接する角地にあり、そこに築35年の古家が建ち、その古家のリノベーションである。前面道路が二項道路であるため、新築にするとセットバックしなければならず、その結果、敷地及び容積の面積が減り住宅の広さという価値が減ることからそれを維持することがこの土地の価値を上げることになると考え、古家を残し改修することになった。一見、古家に価値をつけて売るという不動産業界的には掟破りな計画に聞こえるが、実は堅実な計画である。だが、前例がないことから販売で危惧されることもあり、そこまで工事費もかけられず、もともと建物に価値のない古家扱いで購入していることから、最低同額で売れることからその間賃貸で住んだと考え、その家賃分でその実験を実行することになった。
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以下、建築家によるテキストです。
門脇耕三研究室との共同プロジェクトである。そして、施主は門脇耕三本人で、転売を考え改修に至った物件である。敷地は二項道路に接する角地にあり、そこに築35年の古家が建ち、その古家のリノベーションである。前面道路が二項道路であるため、新築にするとセットバックしなければならず、その結果、敷地及び容積の面積が減り住宅の広さという価値が減ることからそれを維持することがこの土地の価値を上げることになると考え、古家を残し改修することになった。一見、古家に価値をつけて売るという不動産業界的には掟破りな計画に聞こえるが、実は堅実な計画である。だが、前例がないことから販売で危惧されることもあり、そこまで工事費もかけられず、もともと建物に価値のない古家扱いで購入していることから、最低同額で売れることからその間賃貸で住んだと考え、その家賃分でその実験を実行することになった。
ただ、とはいえ、その額はこの規模の住宅の改修に十分な費用ではなく、分離発注など多くの工夫を行った。その工夫あって、細々、リノベーションならではの面白さが各部に施され、住み味わいのある家になっている。
また、このプロジェクトを始めるにあたり、門脇研究室でその地域の新しい生活スタイルをサーヴェイし、この地域でこの先期待される住宅のあり方を考えた。その調査で見えてきたのが一見変哲のない住宅地だが所々に家の一角を使ったカフェやケーキ屋など小さなお店を目にした。おばあちゃんの家の一部を孫がかり営業していたり、今や使われていない部屋など空間のストックを利用している。当然、身内なので家賃もほぼかからず営業でき、その一人が生活するには十分な稼ぎを得られる。実質は成立していないビジネスモデルでありながら3代にわたる家族のストックの再利用と考えれば、有効である上、老人の孤独化も避けられる新たなプログラムとも言える。
その流れを受け、対象を1~3人家族を視野に入れ、家で事務所やお店を構えたいというニーズに応えるべく、1F東にある和室を潰し、スケルトンで計画し、南側の開口部を新設した。
また、古家の一番危惧される問題として構造があり、それを解消すべく構造補強を全面的に行うことを考えた。その時に現在、南面の開口部の面積が大きすぎることから、その一部を塞ぎ構造補強する必要があり、その面と上記のテナント部屋に至る導線の関係から南側に3面ある開口部のうち真ん中の開口部を潰した。それによって、その真ん中の部屋に壁が現れ落ち着きを持ったと同時に採光が不十分な場が生まれたこともあり、3部屋ある2Fの真ん中の部屋の床を抜き、エキスパンドメタルにすることで、2F南向き開口部から1Fに陽を届けた。それによって、親密な場でありながらも光の入る場が家の中心に生まれ居心地良さを生んだ。
■建築概要
題名:つつじヶ丘の家
設計:長坂常/スキーマ建築計画+明治大学 構法計画研究室
(担当:門脇耕三,川又修平,山内健太郎)
プロジェクトマネジメント:アソシエイツ(担当:門脇章子)
構造設計協力:高木次郎(首都大学東京)
所在地:東京都調布市
主用途:住宅+住宅以外の用途を想定
施工:高本貴志(T.R.Ycarpenters)、遠藤太平(exterior ENDOW)、木寅聡士(キトラ電気)、細川鉃也(superrobot)
階数:1、2
床面積:1F_49.68m2、
2F_37.26m2
構造:木造
竣工:2014年7月18日
写真:長谷川健太