SHARE 多田正治+遠藤正二郎による、京都市下京区の、築約50年の旅館と木造アパートを改修したゲストハウス「しづやKYOTO」
左:改修後、右:改修前 all photos©松村康平
多田正治+遠藤正二郎による、京都市下京区の、築約50年の旅館と木造アパートを改修したゲストハウス「しづやKYOTO」です。施設の公式サイトはこちら。
隣接して建つ築約50年の旅館と木造アパートを改修して、2棟のゲストハウス「しづやKYOTO」へと再生するプロジェクト。京都駅に近く大通りの交差点という好立地であるが、細い生活道路の先にあるために狭く暗い雰囲気であった。そこで、建物の再生とともに宿泊施設としての環境を整えることを提案した。
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以下、建築家によるテキストです。
隣接して建つ築約50年の旅館と木造アパートを改修して、2棟のゲストハウス「しづやKYOTO」へと再生するプロジェクト。京都駅に近く大通りの交差点という好立地であるが、細い生活道路の先にあるために狭く暗い雰囲気であった。そこで、建物の再生とともに宿泊施設としての環境を整えることを提案した。
「しづやKYOTO」は2種類のゲストハウスが並立するプロジェクトである。
一方は個室タイプの「OMOYA」。もう一方は、一人でもグループでも利用できる「HANARE」。「OMOYA」は旅館の改装で「HANARE」は木造アパートの改装である。
「OMOYA」はカプセルタイプのスリーピングスペースを2室上下に組み合わせ、そこに書斎とスーツケース収納を設けたコンパクトな客室である。ミニマムな機能に遊び心を加えた女性専用の宿泊施設となっている。客室の書斎の天井には勾配があり、それによって廊下側からは長屋のような佇まいとなっている。「HANARE」は大きな共用スペースに、それぞれ異なる機能と異なるスケールをもった箱型の空間が配置されている。箱の中はツイン、和室、ドミトリーからなる客室に加え、共有キッチンなどの水回り機能が内包されている。
「しづやKYOTO」は露出させた木造架構の中に新たに建築を挿入することで、建築内に「内と外」をつくる構成をとっている。「OMOYA」は路地を通って家に帰り着くような「外から内へと入っていく」空間を、「HANARE」は家から飛び出して町の広場に集うような「内から外へと出ていく」空間をつくりあげた。
そして、これら2つのゲストハウスはランドスケープによって連続する。旧京都市電で使用されていた敷石と黒皮鉄板を用いて、限られたスペースを旅を演出する路地空間とした。
今回の宿泊施設では、伝統的や日本的といったデザイン言語によらず、既存の架構を用いて新しい空間をつくりあげた。
もとはいわゆる一般的な昭和期の木造建築だが、国内外を問わず多くの旅行客が楽しめる宿泊施設となったのではないだろうか。
(多田正治・遠藤正二郎)
■建築概要
建物名称:しづやKYOTO
設計:多田正治+遠藤正二郎
ランドスケープ:多田正治+遠藤正二郎+小笠原哲
主要用途:ゲストハウス
所在:京都市下京区
延床面積:OMOYA 195.17m2 HANARE 143.88m2
施工:清水工務店
竣工:2016.4
主体構造:木造
主要仕上:
(外部)外部/漆喰塗、吹き付けタイル、貝殻洗い出し
(内部)天井/ラワンベニヤ塗装、ヨシベニヤ、壁/ラワンベニヤ塗装、珪藻土、藁スサ入荒壁、床/スギフローリング
写真:松村康平