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以下、建築家によるテキストです。

eコマース市場の急成長により通販会社や運送会社をはじめメーカー等様々な業態をターゲットとした大型賃貸型物流施設の開発が各地で進んでいる。これまで数々の物流不動産を開発してきたクライアントは効率重視、物中心の施設づくりから舵を切り、「HUMAN CENTRIC DESIGN」の理念を掲げた。新規開発する大型施設には人に優しい快適な労働環境として託児所や売店、休憩ラウンジの整備を進めており「KLÜBBエリア」という名でブランディングしている。我々は初期からこのエリアの設計を手がけており、このESR市川DCは6棟目となる。

本プロジェクトは１フロアの床面積が56000m2超と国内最大規模となる為、休憩ラウンジは東西の２か所に整備されることになった。そのどちらにもリフレッシュの為のボルダリングウォールを設置している。
東ラウンジは壁に水平な切り込みを入れ、うねうねとたわみを持たせることによって宙に浮いた壁や垂れ壁、腰壁を派生させるデザインとした。緩やかに空間が分けられるとともに、人の気配の感じ方や見える風景も多様な為、目的にあった居場所探しが楽しめる。利用者の身体の一部が見え隠れし、視線の遮蔽や交錯が起こることで、偶発的な出会いやコミュニケーションを誘発させるのがねらいである。
西ラウンジではボルダリングウォールをアーチを描くように中心に据え、その活動的な雰囲気が周囲の憩いの場に伝染するような構成とした。憩いの場はカウンター席やテーブル席、ソファ席など居心地の異なるエリアに分け、それぞれに別々の仕上材と天井高、床高を与えた。さらにエリア同士を噛みあうように接合させることで各々の居心地が互いに影響しあう関係性をもたせた。

施設内で働く親御さんを待つ子供達が一日を楽しく過ごす仕掛けとして託児所には大小のトンネルをちりばめた。子供達は本能的に駆け回り、いくつものトンネルを潜り抜けるであろう。子供達は知らず知らずに様々な発見をするはずだ。低いトンネル内を這えばリノリウムや木の床材から天然素材の匂いや手触りを憶え、広い空間と狭い空間を行き来すれば広さによる居心地の違いに気づく。ファンタジーのなかでしばしトンネルは日常と異世界を繋ぐ象徴として描かれる。好奇心は冒険を促し、冒険は好奇心を育む。そんな衝動と行動を促す空間を目指した。

■建築概要
物件名：ESR市川DC KLÜBB エリア
所在地：千葉県市川市
工事種別：内装、外装、外構工事（新築工事の共用部）
本体設計：戸田建設
施工：戸田建設
主要用途：託児所、休憩ラウンジ、売店
敷地面積：102,660.71m2
床面積(託児所）：122.04m2
床面積(西ラウンジ）：646.83m2
床面積(東ラウンジ）：447.2m2
（本体延床面積 )：229,715m2
構造：鉄骨造
規模：地上4階
竣工：2019/1/31
Photographer：吉村昌也 / Masaya Yoshimura