SHARE 角倉剛建築設計事務所による、千葉・松戸市の住宅「公園前の家」
角倉剛建築設計事務所が設計した、 千葉・松戸市の住宅「公園前の家」です。
■集い方のデザイン
住宅は大雑把に言うと「nLDK」の言い方が示すように、n個の個室と家族が集うLDKという二つの集い方の組み合わせで作られる。集い方の組み合わせを見直すことで、住宅のあり方を少し変えることはできないか。
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以下、建築家によるテキストです。
集い方のデザイン
■集い方のデザイン
住宅は大雑把に言うと「nLDK」の言い方が示すように、n個の個室と家族が集うLDKという二つの集い方の組み合わせで作られる。集い方の組み合わせを見直すことで、住宅のあり方を少し変えることはできないか。
■近隣の集いの場としての公園
敷地は常盤平団地の造成とともに1962年に宅地開発されたエリアにある。このあたりは首都圏整備計画のグリーンベルト緑地帯に含まれていたため、緑や豊かなオープンスペースに恵まれた地域となっている。計画的にほどよく配置された公園は、地域ごとの交流の場だ。敷地から道路を隔てた南側にも、緑豊かな公園があり、近隣の親子連れが集う格好の遊び場となっている。敷地は新たに購入されたものだが、建て主の元々の住まいも近くにある。建て主は子育て世帯であり、子供を介した知人友人も、この公園をよく訪れる。
建て主は周囲に対して開かれた家づくりを望まれていた。私たちは公園の緑豊かな自然環境を享受するだけでなく、公園に集う近隣の知り合いとの、少し踏み込んだコミュニケーションのきっかけを作る家づくりを考えた。
■三つの集いの場
<ホール・・・・・・・・・・家族と近隣の集いの場>
靴の履き替えや、荷物の受け取り、簡単な立ち話等といった機能だけで考えれば、玄関は2畳もあれば十分だ。しかしここではそのスケールを変え、広さ12畳天井高4.1mの「ホール」とした。「ホール」の周りの縁側のようなスペースの奥は子供室と洗面室だ。子供室の引き戸を全開すると「ホール」と繋がり近所の子と遊ぶ「大きな子供室」となる。子供を介して大人も集まり、「ホール」は家族とご近所の集いの場となる。
<LDK・・・・・家族を中心とした賑やかな集いの場>
2階には20畳天井高2.2〜3.8mのLDKがある。家族は1階の個室から「ホール」を介してこのLDKに集う。LDKはこの家で一番賑やかな集いの場だ。家族は共に食事をし、語らう。時には親しい友人知人を招くこともあるだろう。
<ライブラリー・・・・・・・家族の静かな集いの場>
2階上部には6畳天井高2.5mのライブラリーがある。大きな机と壁面一杯の書棚が設けられ、電子ピアノが置かれた、家族皆で使える趣味のスペースだ。トップライトがあり、大きなハッチを開けると屋上テラスに出ることができる。皆が思い思いのことをしながら集まっている、図書館のような静かな家族の集いの場だ。
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三つの集いの場は、半階づつずれた位置関係にある。境界面にある建具を明け放つことで、三つの異なる集いの場が繋がり、集う場の多様さが生活に豊かさを与えていることが感じとられる。それは「nLDK」の住宅にはない豊かさだ。集い方の枠を広げ、見直した結果の豊かさだ。
引渡し前に開催したオープンハウスでは、こ近所の家族連れで「ホール」は一杯となった。これからも「ホール」が近隣との集いの場となり、建て主の望み通り、この家が開かれたものとなることを願っている。またそのことが公園を含めた周辺環境に何らかの良い変化の兆しをもたらすことも同時に願っている。
■建築概要
計画地:千葉県松戸市常盤平
期間:2016.5~2016.12(設計) 2017.2~2017.7(施工)
敷地面積:159.10 m2
建築面積:58.16 m2
延床面積:114.23 m2
規模・構造:木造2階建て
設計・監理:角倉剛建築設計事務所
構造設計:山田構造設計事務所
設備設計:Lapin建築設備工房
照明設計:ソノベデザインオフィス
施工:大日ハウジング
写真撮影:吉田誠