SHARE SN Design Architects / 佐野剛史による、静岡・浜松市の「えんのき保育園」
SN Design Architects / 佐野剛史が設計した、静岡・浜松市の「えんのき保育園」です。
本計画は、社会的な課題である待機児童に応えるべく静岡県浜松市郊外に新設する認可保育所の計画である。
待機児童対策として保育施設の整備が各地で急速に進められている中、どれだけ子ども達に適した環境が出来ているのか?という疑問が生じた。3~5歳(以上児)の子ども達は、遊びや食事や運動などの行動が自発的に行える事から園舎の設計をする上で設計者としてもイメージがし易い。
本園は、話す、歩く、食べる等 特に未熟な0~2歳までの(未満児)子どもを限定とした定員10名の小規模保育園である。その後の人格形成に大きく影響する年齢であり事業主からは、情緒の安定が求められた。小さな子ども達の潜在意識へ安心感を与える園舎とする事が必要だと感じた。
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以下、建築家によるテキストです。
本計画は、社会的な課題である待機児童に応えるべく静岡県浜松市郊外に新設する認可保育所の計画である。
待機児童対策として保育施設の整備が各地で急速に進められている中、どれだけ子ども達に適した環境が出来ているのか?という疑問が生じた。3~5歳(以上児)の子ども達は、遊びや食事や運動などの行動が自発的に行える事から園舎の設計をする上で設計者としてもイメージがし易い。
本園は、話す、歩く、食べる等 特に未熟な0~2歳までの(未満児)子どもを限定とした定員10名の小規模保育園である。その後の人格形成に大きく影響する年齢であり事業主からは、情緒の安定が求められた。小さな子ども達の潜在意識へ安心感を与える園舎とする事が必要だと感じた。
初めて親元から離れる子ども達は、それだけでとても不安な心境である。加えて初めてみる外の世界はとても強く目に移るのではないかと自身の子育て経験からも感じている。大人の都合でつくられた大きな塊は威圧感を与え、外部の環境は明白な境界線を通じていきなり表れてくる。そこで液体と固体の中間である離乳食の様に、建築も中間の状態があるのではないかと考えた。大と小、外と内、明と暗といった様々な間となるような建築を目指す事にした。
具体的には先ず必要諸室で構成したプランを基にそれぞれを室ごとで分節し、大きな箱から小さな箱の集まりとした。箱と箱は1.5mの隙間を取り透明ガラスによって間をつなぎ外部環境が隙間を通じて内部へ柔らかく入り込むつくりとした。中央のインナーガーデンは半屋外的な空間と位置付け、各室はこの空間と繋がることで間接的に外部環境を享受できるものとした。各室の開口部も外へ直接的に設けることを制限し、インナーガーデン又は隙間へ向けて間接的となるように操作している。この様に間接的な状態によって生まれる曖昧な環境は、子ども達にとって優しさのある場所になると考えた。
構造は木造軸組とし箱単位で耐力壁量を確保し、それぞれの箱はインナーガーデンの屋根構造(梁:スギ240×60@500+野地板:構造用合板t12)によって全体を一体として成立させている。この構成により箱隙間の開口部は構造的にフリーなものとなり、内外の境界ディテールが希薄なものとして実現している。
特徴的である壁の米杉下見板張りは、子ども達が成長していく場という事から建築も完成時がピークではなくエイジングしていく事で完成に向かう意味を持たせたいと考えた。時間の経過と共に本来木材は美しいシルバーグレーへ変化する。無理に茶色を維持するのではなく、美しく変化する先を見越した色を初めから選択する事とした。本来、材の持っている自然的な経年変化を受け入れる事で、美しい外観を得られるだけでなく、子ども達と共に成長出来る建築になり得るのではないかと願っている。
■建築概要
建築名称:えんのき保育園
主要用途:認可小規模保育所
所在地:静岡県浜松市内
設計者:株式会社SN Design Architects
構造設計:株式会社飯島建築事務所
施工者:山平建設株式会社
造園工事:株式会社sotoe
敷地面積:1,381.72㎡
建築面積:163.75㎡
延床面積:163.75㎡
規模構造:在来木造軸組構法、平屋建て
設計期間:2017年4月~9月
施工期間:2017年10月~2018年3月
写真:中川敦玲