SHARE 保坂猛建築都市設計事務所による、東京の、延べ床約18m2の自邸「LOVE2 HOUSE」の高クオリティな動画
保坂猛建築都市設計事務所が設計した、東京の、延べ床約18m2の自邸「LOVE2 HOUSE」の高クオリティな動画です。制作は一条。保坂の解説(日本語)も収録されています。保坂のサイトで写真と図面も見ることができます。保坂は2005年に「LOVE HOUSE」という一件目の自邸を立てており、本作品は2件目の自邸です。
以下は建築家によるコンセプトテキストより。
自邸LOVE HOUSE(JT2006/1号)に10年住んだ。2015年から早稲田大学芸術学校の教員となり設計事務所との両輪の中で、早稲田と横浜の往復は思いのほか時間がかかった。両輪とともに自分自身の生活も気持ちよく駆動させるために、2件目の自邸LOVE2 HOUSEの建設を決めた。希望の場所で予算に合う29.53m2の土地を購入し、直ぐに2階建ての検討が始まったが、丁度その頃、江戸時代の庶民の長屋が9尺2間(9.6m2)で4人家族が生活していたということを本で読んでいた妻が意外にも「6坪は広い」と言い出した。そこから私は延床17.71m2の平屋での計画を始めた。
延床20m2を下回る戸建の参照事例として、鴨長明による方丈庵(一丈四方9.18m2)、ル・コルビュジェによるカップマルタンの小屋(16.85m2)、立原道造によるヒアシンスハウス(15.15m2)などがあり、3つに共通していることは、周辺環境と共にその小屋での生活全体をこよなく愛していたことだと私は思った。
3つの参照事例ではキッチンや浴室がなかったが、そういう要素も「ある」家とすること、さらに住居としての“ある”ことを突き詰めて行く中で、古代ローマ人がヴィラでの生活の理想とした5つの要素(学問、入浴、演劇、音楽、美食)を、この17.71m2の小さな家で実現させたいと考えた。毎日露天風呂に入り、300枚のレコードを十分な音量で楽しみ、土鍋で炊いたご飯を食べ、気に入った本を読む。また方丈庵にもあったように、この家にも宗教の要素(キリスト教)があり、疲れた時には聖書に依り頼む。
土地の購入後すぐに太陽光のシミュレーションを行うと冬の3ヶ月間、直射光が全く得られないことが判明し気落ちした。しかしそれは北欧で見た極夜と似たような光環境であると積極的に考え、冬の天空光を重視した天窓をもつメインの躯体を計画することとした。そして夏は南国を思わせるような直射光が燦々と注ぐようにし、年間を通してみれば地球上の広範囲の緯度の光環境を楽しんでいるような住空間がこの小なるものの中に現れるようにしようと考えた。それを具現化した建築は、軒先を町並みと揃え直線とし、屋根の上端をほんの少し湾曲させた2枚のHPシェルを、高さを違えて擡げかけたRCのシンプルな家型となった。
メインのRCの躯体から派生するサブの小壁7枚により、ダイニング、キッチン、寝室の3つのゾーンを分ける仕切りとし、かつ小壁の表面やエッジに段々を作り、その「段」に木棚板やキッチンカウンターなど乗せ、ペンや付箋など小物類を直に置いたりといった「乗せる」つくりとした。RCの躯体が側(大きなこと)としてだけでなく、生活の細かな設え(小さなこと)まで担ってくれる様が、この家には合うと考えた。