SHARE ツバメアーキテクツによる、静岡市の「窓辺ビル いちぼし堂」
ツバメアーキテクツが設計した、静岡市の「窓辺ビル いちぼし堂」です。
静岡市に経つ新築三階建のビルである。1Fは子どもを預けて働ける保育園、2Fはコワーキングスペース、3Fは県内外企業のレジデンス付テレワーク拠点となっている。多世代が交流をする社会基盤としてのビルと言える。練りに練られた用途だが、10年後にはまた変わるかもしれない暫定的なものだという気もしてくる。全体が保育園になるかもしれないし、コワーキングというワークスタイルはまた形を変えるかもしれない。そういったバランスの変化を受け入れられつつも単なるテナントビルで無いものは考えられないだろうか。いいビルとは何か、いいビルの文法のようなものを発見できないか、そんなことを考え始めた。
そこで4面に窓を持つということについて考えることにした。南から南西にかけては、神社の大木が何本も建つので窓をあけても直射日光ではなく木漏れ日のような光が入ると考えた。そして地面からの距離で窓の働きを変えていく。そうすれば、その建築のあり方が、将来的にも用途を引っ張ってくるだろうと考えた。
1階は柱スパンに対して一つの大きな窓を持ち庭とつながる。保育園にとっては都合が良い。
2階は柱スパンに対し二つづつ窓を持ち、柱の奥行きに対応したベンチとなる。一つの窓辺に二、三人は座れる。コワーキングの席数を稼ぐにはとても都合が良い。
3階は柱スパンに対し四つづつ窓を持ち、150程度の奥行きを与えた。植物を飾ったり、本を置いたりでき住まいにとっては都合が良い。
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以下、建築家によるテキストです。
四面に窓を持つ、いいビル
静岡市に経つ新築三階建のビルである。1Fは子どもを預けて働ける保育園、2Fはコワーキングスペース、3Fは県内外企業のレジデンス付テレワーク拠点となっている。多世代が交流をする社会基盤としてのビルと言える。練りに練られた用途だが、10年後にはまた変わるかもしれない暫定的なものだという気もしてくる。全体が保育園になるかもしれないし、コワーキングというワークスタイルはまた形を変えるかもしれない。そういったバランスの変化を受け入れられつつも単なるテナントビルで無いものは考えられないだろうか。いいビルとは何か、いいビルの文法のようなものを発見できないか、そんなことを考え始めた。
建築規模としては数百平米の小ぶりなビルであるが、地方都市の住宅地のエッジに建つので結構なインパクトを作り出してしまう。そこで、イタリアでいえばパラッツォだったり、東京であれば新潮社のビルのように一つの街区に塊のように立ち上がり、街の骨格となり、街の角を決めるような建築を参照しはじめた。
また今回の敷地の特徴としては、隣地が神社であることと、前面には芝生が広がり行政施設が建つということ。要は、空地に囲まれており、その状況は100年くらいは変わらなそうだということ。(少なくとも神社は。)
そこで4面に窓を持つということについて考えることにした。南から南西にかけては、神社の大木が何本も建つので窓をあけても直射日光ではなく木漏れ日のような光が入ると考えた。そして地面からの距離で窓の働きを変えていく。そうすれば、その建築のあり方が、将来的にも用途を引っ張ってくるだろうと考えた。
1階は柱スパンに対して一つの大きな窓を持ち庭とつながる。保育園にとっては都合が良い。
2階は柱スパンに対し二つづつ窓を持ち、柱の奥行きに対応したベンチとなる。一つの窓辺に二、三人は座れる。コワーキングの席数を稼ぐにはとても都合が良い。
3階は柱スパンに対し四つづつ窓を持ち、150程度の奥行きを与えた。植物を飾ったり、本を置いたりでき住まいにとっては都合が良い。ベッドさえあればすぐ暮らせる。そして屋上は富士山を見ながら市民活動を展開することができるデッキスペースとなっており手すりには奥行きを与えカウンターのようにしている。
外壁はストリングコースの代わりに、異なる色の張り分けとし、隣地の神社の建物群の木と瓦の関係を真似た。また、開口の高さと張り分けのギャップは木の手すりを入れていった。
窓辺に人やモノがレイアウトされていき、この建築の状況がいきいきと投影されるようになれば、単なるテナントビルとは違った形で地域に根付いていくいいビルになるだろう。
■建築概要
設計:ツバメアーキテクツ
施工:静岡積栄住建株式会社
施主:キタガワビジネスサービス
名称:いちぼし堂
撮影:長谷川健太
サイン:市田舞
植栽:株式会社andgreen
竣工:2018