足立裕己による、大阪・豊中市の、遠藤剛生設計の築34年の木造住宅改修「無垢の家」です。
築34年の遠藤剛生設計による住宅のリノベーションである。
構造体、内装下地、木造作、外構など、使える部位は積極的に活用し、新しく加える要素を「黒子」に徹するカラースキームとして、蓄積された時間の深みを際立たせ、原設計の建築計画に最大限配慮した。
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以下、建築家によるテキストです。
無垢の家
築34年の遠藤剛生設計による住宅のリノベーションである。
構造体、内装下地、木造作、外構など、使える部位は積極的に活用し、新しく加える要素を「黒子」に徹するカラースキームとして、蓄積された時間の深みを際立たせ、原設計の建築計画に最大限配慮した。
むく【無垢】
1_素材そのもの ‥築34年の古い住宅をそのまま使う
2_自然の風合い ‥石垣、植栽、木造作など蓄積された時間の深み
3_無地同色 ‥新しく加える要素は黒子に徹する
もともと特徴のある建物形状をより彫刻的に表現するため、黒色の窯業系スレートで全体を覆う外装計画とした。軒も庇もないシンプルな屋根の輪郭に、下見板張りによる陰影と白華による質感が建物の表情に深みを与える。さらに、外装材を活用した表札、アンゴラブラックの蹲、エントランスのブラケット照明など、新しく加える要素はすべて黒色で統一し、石垣や植栽など34年の時の蓄積が醸し出す風合いに自然と調和する計画とした。
内装は老朽化の目立つ水廻りと仕上の更新に留め、下地材も積極的に活用する最小限のリノベーションとした。既存のチークの天井や木造作を活かして、更新する床と壁の仕上はすべてグレーとした。無彩色で統一した空間の中で、34年の歴史が感じられる空間としている。
今回の建物は、34年間住んでいた住人が都合により引っ越すこととなり、売りに出されていた建物である。歴史的建築物や古民家と言えるほどの伝統的日本建築でもないため、住人曰く、愛着はあるが解体は避けられないと考えていた、とのこと。そのため、「無垢の家」は、前住人から受け継いだ価値を未来へつなぐことをコンセプトとした。新しい技術や建物はコピー可能だが、蓄積された時の重みはコピーできない。歴史と文脈は長く使うことでしか生まれない圧倒的な価値があると考えている。
■建築概要
所在地:大阪府豊中市
設計:足立裕己
施工;住友不動産
構造規模:木造地上2階
敷地面積:189㎡
建築面積:74㎡
延床面積:142㎡
竣工:2019年1月