奥野八十八 / アトリエ・ブリコラージュによる、京都市の、京町家を改修した一棟貸しの旅館「学林町の町家」です。施設の公式サイトはこちら。
しばらくの間、空き家となっていた京町家を改修し、一棟貸しの旅館(京宿 丸京学林庵)として再生しました。付近は西本願寺の門前町のひとつで、前の通りには今でも多くの仏具関連の店が軒を連ねています。この町家の隣にも大店の仏具店が本宅として建っており、この町家は借家として使われてきましたが、その本宅が解体されることになり、近隣では唯ひとつの町家としてこの建物が残されることになりました。
町家のオーナーが改修費用を負担することなく本格的な改修を実現するため、地元の不動産会社がオーナーから町家を借り受け、工事にかかる費用と旅館の運営を担い、建物は10年後に再びオーナーの元に還る予定になっています。
将来再び住宅として使われることを見越して、旅館としての機能だけにフォーカスせず、できるだけ元の建物の間取りを活かして町家の雰囲気を楽しんでもらえるように心がけて計画を進めました。改修前の建物は過去の小さなリフォームの積み重ねの結果、元々あったであろう京町家の意匠はあまり残っていなかったため、古びた新建材の仕上げを剥がし、所々に現代的な要素も加えながら床の間などを設え直しました。
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以下、建築家によるテキストです。
しばらくの間、空き家となっていた京町家を改修し、一棟貸しの旅館(京宿 丸京学林庵)として再生しました。付近は西本願寺の門前町のひとつで、前の通りには今でも多くの仏具関連の店が軒を連ねています。この町家の隣にも大店の仏具店が本宅として建っており、この町家は借家として使われてきましたが、その本宅が解体されることになり、近隣では唯ひとつの町家としてこの建物が残されることになりました。
町家のオーナーが改修費用を負担することなく本格的な改修を実現するため、地元の不動産会社がオーナーから町家を借り受け、工事にかかる費用と旅館の運営を担い、建物は10年後に再びオーナーの元に還る予定になっています。
将来再び住宅として使われることを見越して、旅館としての機能だけにフォーカスせず、できるだけ元の建物の間取りを活かして町家の雰囲気を楽しんでもらえるように心がけて計画を進めました。改修前の建物は過去の小さなリフォームの積み重ねの結果、元々あったであろう京町家の意匠はあまり残っていなかったため、古びた新建材の仕上げを剥がし、所々に現代的な要素も加えながら床の間などを設え直しました。床の間廻りの造作材には、隣に建っていた本宅の解体時に取り置きをした部材を削り直して据え直し、華やかな襖絵が描かれた襖なども取り置きして転用しています。そして表層だけの化粧直しに留まらず、今後も長く建物を残すべく、しっかりと構造補強、断熱補強を施しています。
事情により元の奥庭の過半がなくなりましたが、浅い奥行きの中にも季節感と立体感を持たせられるよう、足元は築山と景石で起伏を作り、季節の移ろいを伝えてくれる植栽を配置しました。また庭に面した開口部の高さを絞り込むことで、座敷に座ったときに屏風のように眺められる庭としています。
■建築概要
学林町の町家
構造規模:木造2階建て(改修)
建築面積:63.90㎡
延床面積:99.12㎡
所在地:京都市
構造設計:コア構造研究所
設計協力:荒木麻衣子/アトリエ・ポンヌフ
施工:原田工務店
特注照明製作:sen/千
竣工:2017年12月
撮影:母倉知樹