SHARE 杉山幸一郎による、ドローイングとオブジェクトの作品群「Line & Fill」
杉山幸一郎による、ドローイングとオブジェクトの作品群「Line & Fill」です。ここでは「drawing」「object」「structure」の3つのシリーズを紹介します。杉山はアーキテクチャーフォトにて「For The Architectural Innocent」を連載中の建築家です。
この場を借りて紹介させていただくのは、建築士として設計活動をするかたわら、時間の隙間を見つけては描き、制作してきたドローイングやオブジェクトたちです。
僕自身は、特別に絵描きになるために絵画を学んだとか、家具職人になるために工房に務めていたという経歴は、残念ながらありません。
ただ、アトリエピーターズントーで1年間ワークショップチーフを経験したこともあって、頭で考えるのと同時に手で作るというプロセスを、とても大切にしてきました。«Line & Fill (線と面)»というタイトルを付けたのには、スイスに初めてやってきた当時の出来事ががありました。
建築設計で用いるCADソフトで壁を描く時に、日本で学び働いていた時には二本の平行線を描き、それで壁の場所、壁の厚みを表現していました。スイスにやってきて、ズントー事務所で働き始めてショックだったのは、壁を黒塗りの面 (長方形)で描くことです。
ドローイング (drawing)
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建物の顔、つまり建物のファサードや、そこにある窓などを含めた要素を、小さな単位の線や面で置き換えて描くことからはじめました。
太い線が外装材のテクスチュアに見えたり、細い面がパネルの単位に見えたり。。
線や面に置き換えることで、その間にある生まれた余白に空気やヴォリュームを想像することもできます。
オブジェクト (object)
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ドローイングで掴んだモチーフに奥行きを与えて、立体的に建築化していくことを目的としました。形やサイズは似て異なるものの、できあがったものを眺め、触れてみると、自然と建築像が立ち上がっていくようなものを目指しています。
ストラクチャー (structure)
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ものがどうやって作られるのかということを念頭に置きながら、線 (柱梁)や面 (壁)を使って、表裏のない組み立て方で、素直で健康的な建築を作ろうと試みました。
ものの組み立て方がわかるということは、そのものを理解する大きな手立てにもなります。
小さな建築のような、家具としても使ってもらえるものに出来上がりました。
杉山が作品を解説している動画
以下、建築家によるテキストです。
Line & Fill
この場を借りて紹介させていただくのは、建築士として設計活動をするかたわら、時間の隙間を見つけては描き、制作してきたドローイングやオブジェクトたちです。
僕自身は、特別に絵描きになるために絵画を学んだとか、家具職人になるために工房に務めていたという経歴は、残念ながらありません。
ただ、アトリエピーターズントーで1年間ワークショップチーフを経験したこともあって、頭で考えるのと同時に手で作るというプロセスを、とても大切にしてきました。
«Line & Fill (線と面)»というタイトルを付けたのには、スイスに初めてやってきた当時の出来事ががありました。
建築設計で用いるCADソフトで壁を描く時に、日本で学び働いていた時には二本の平行線を描き、それで壁の場所、壁の厚みを表現していました。スイスにやってきて、ズントー事務所で働き始めてショックだったのは、壁を黒塗りの面 (長方形)で描くことです。
一般的な日本の木造建築の場合、柱があり、それを挟むようにしてボード (壁素材)を貼り、柱と柱、ボードとボードの隙間には断熱材を詰める。そうしてできた壁は、叩けば明るい音が帰ってくるような、密度の小さなものです。
外と内の最終的な仕上げの二本線を描いて、それを壁と呼ぶのもうなずけます。
一方のスイスでは、木造でも以前エッセイでも紹介したように、材木を積むことで壁を作り上げた建築を多く見かけます。この場合、壁には密度があって、塗りで描かれる。そうした木造建築だけでなく、組石造の建物が多いスイスでは、壁を黒塗りで表現することに納得がいきます。
事務所の設計図面では基本設計図、実施設計図に関わらず、ほとんど全てを面 (Fill)で描きます。
線 (Line)ツールを使うのは補助線を引く時くらい。。
そんなことから意識し始めた線と面。
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