SHARE 篠崎弘之+増田裕樹 / 篠崎弘之建築設計事務所による、栃木・宇都宮市のオフィス「マスケン新社屋」
篠崎弘之+増田裕樹 / 篠崎弘之建築設計事務所が設計した、栃木・宇都宮市のオフィス「マスケン新社屋」です。施主で施工を手掛けたマスケンのサイトはこちら。
栃木県宇都宮市にある建設会社の新社屋である。
設計施工というまちづくりにダイレクトに影響できる職能を体現し、地域に貢献できる場である事が求められていた。私たちは、そもそも公共建築とは何かという事から考え直した。図書館や博物館のように機能自体が公共性をもつ場所と違い、事務所は本来プライベードな場である。それでも、日々の通勤通学で目にしたり、その町らしい風景の一端を担っていたり、「景観としての公共性」を帯びている。街中にある倉庫や工場、住宅等の閉じた建築も、その建築がある事で場所性を認識したり、その存在を通して何かを考えさせるものは、例え中に入れずとも、公共的であると言えるのではないか。
建築や家具、設備などの区別を一旦無くして分解し、それらを事務所にとって必要な「道具立て」として捉え直した。それらを、雁行する大屋根の下のワンルームに分散させることで、視線が見えがくれしながら、図書館のような大きな大空間や、住宅のような溜まり、家具や機能の組み合わせ等、様々なスケールと用途の場所をつくりながら全体を構成した。
そこから垣間見える近隣の庭木、信号や看板といった地域の要素も、事務所を構築する等価な道具として、身近な存在として再認識できるような空間を目指した。
676㎡の中規模建築であるが、木造一戸建ての住宅を10個集めたような、自社施工しやすい木造軸組構造を基本とした構造計画である。
ここでは、本棚のような家具的な設えの部分を耐力壁として使い、反対にプレーンな壁は、柱と梁の仕口に15mmのクリアランスを設け鉛直荷重を負担しない雑壁とし、日射や視線の制御、アンビエント照明の反射壁といった機能的な役割に徹している。
意匠と構造の記号性を反転させ、家具と建築が溶け合う柔らかい状況をつくろうとした。
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景観としての公共性
栃木県宇都宮市にある建設会社の新社屋である。
設計施工というまちづくりにダイレクトに影響できる職能を体現し、地域に貢献できる場である事が求められていた。私たちは、そもそも公共建築とは何かという事から考え直した。
図書館や博物館のように機能自体が公共性をもつ場所と違い、事務所は本来プライベードな場である。それでも、日々の通勤通学で目にしたり、その町らしい風景の一端を担っていたり、「景観としての公共性」を帯びている。街中にある倉庫や工場、住宅等の閉じた建築も、その建築がある事で場所性を認識したり、その存在を通して何かを考えさせるものは、例え中に入れずとも、公共的であると言えるのではないか。
全ての建築がもっているその公共性を「多様なスケール」「多方向の透明性」によってより強く顕在化させる事で、地域の人にとっても価値ある場所にすることを試みた。
地域には、開かれた建築だけでなく立ち入れない建築も必要である。だがそうした建築こそ、景観という小さな公共性をいかに大事に扱えるかが、豊かなまちづくりへの大きな一歩だと考えた。
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一棟性と群棟性を併せ持つ配置
敷地は幹線道路沿いの角地にあり、東側に県総合スポーツ公園玄関口、西側に住宅地という好立地だったが、既存レジャーホテルの廃墟と塀が長年その風景とスケールを分断していた。
まずはそれらを解体して東西の見通しを確保し、最高高さ6mの透明度の高い木造平屋新社屋を角地先端にコンパクトに配置した。
敷地境界は高低差のみで領域性を処理し、駐車場も建物裏にする事でロードサイド特有の風景を回避し、活動が前面に現れるよう計画した。建物四周には大窓と緑地帯を設け、公園並木との連続や、住宅地の庭木の写り込みをつくり、周辺一体で価値を高めるよう修景した。
また、三角敷地に対して建築を雁行させる事で、見る角度によって大きな一棟にも、小さな住宅の群棟にも見える効果をつくり、地域の異なる風景スケールを柔らかく結ぶバッファー建築としても計画した。
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道具の集合体としての建築
建築や家具、設備などの区別を一旦無くして分解し、それらを事務所にとって必要な「道具立て」として捉え直した。それらを、雁行する大屋根の下のワンルームに分散させることで、視線が見えがくれしながら、図書館のような大きな大空間や、住宅のような溜まり、家具や機能の組み合わせ等、様々なスケールと用途の場所をつくりながら全体を構成した。
そこから垣間見える近隣の庭木、信号や看板といった地域の要素も、事務所を構築する等価な道具として、身近な存在として再認識できるような空間を目指した。
棚や壁や風景が隣り合う場所を暫定的に事務空間としたり、地元建材職人のワークショップや将来的な拡張スペースに使うなど、流動的に居場所を見つけながら過ごす場となっている。
5091.5mmの天井高さによって、下はギャラリーとして機能し、上は青空や地域の風景要素が断片的に見えるなど、断面的にも風景を切り替え、自分達がまちづくりの一旦を担っているという、プライドも育める空間を目指した。
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住宅的な構造を集めた都市的な全体
676㎡の中規模建築であるが、木造一戸建ての住宅を10個集めたような、自社施工しやすい木造軸組構造を基本とした構造計画である。
ここでは、本棚のような家具的な設えの部分を耐力壁として使い、反対にプレーンな壁は、柱と梁の仕口に15mmのクリアランスを設け鉛直荷重を負担しない雑壁とし、日射や視線の制御、アンビエント照明の反射壁といった機能的な役割に徹している。
意匠と構造の記号性を反転させ、家具と建築が溶け合う柔らかい状況をつくろうとした。
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躯体のような家具
テーブル周囲はアンビエント照明で柔らかく照らし、テーブル上は模型製作や作図作業もできるよう、手術台のように明るく卓上に視線が集中するような大型照明を造作した。その大きさはまた、外から見ても人が集まるサインのように機能してくれることを意図した。
また造作テーブルには建築躯体に使われる105角材を使い、少量の部材で大スパンを飛ばしながら、家づくりの相談に来た来客者にも建築躯体のスケールを身近に触れてもらう機会をつくろうとした。
建築を家具的に感じたり、家具を建築的に感じたり、スケール感や機能の認識を揺さぶることで、一つの道具でありながら様々な意味や用途を獲得できるのではないかと考えた。
■建築概要
クライアント:建設会社
場所:栃木県宇都宮市
敷地面積:3,904.85㎡
延床面積:676.50㎡
完成時期:2020.05
構造規模:木造2階建
構造設計:中原英隆|Q&Architecture
施工会社:株式会社マスケン(自社施工)
撮影:長谷川健太|OFP
担当:篠崎弘之 , 増田裕樹
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外装・床 | 床 | |
外装・壁 | 壁 | |
外装・屋根 | 軒天 | ケイカル板VP塗装(流通品) |
内装・床 | 床 | |
内装・壁 | 壁 | |
内装・造作家具 | キッチン |
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※この情報は弊サイトや設計者が建材の性能等を保証するものではありません
Client:construction company
Location:Utsunomiya city, Tochigi
Site area:3,904.85sqm
Built area:676.50sqm
Completion date:2020.05
Structure:timber structure, 2 story
Structure engineer:Hidetaka Nakahara|Q&Architecture
Contractor:MASUKEN Inc.
Photographer:Kenta Hasegawa|OFP
Staff:Hiroyuki Shinozaki , Hiroki Masuda