石嶋寿和 / 石嶋設計室が設計した、東京・台東区の、認可保育所「立華学苑(たちばながくえん) 子どもたちの発達を促す4段の屋上園庭」です。
既存施設の建替計画です。建築家は、子どもたちの発達を促す空間を目指し、“育てる庭”や“食べる庭”等の異なる特徴を持つ4段の屋上庭園を考案しました。また、打放壁を背景としたカラフルな出窓や和の内装でも園舎の特徴的な顔をつくる事が意図されました。
この保育園のコンセプトは以下の3つである。
一つ目は、コンクリート打放しと出窓で構成した外観。
無機質なグレーの壁にカラフルな出窓をランダムに加えることで、優しさと賑やかさが強調された外観をつくりだした。さらに、出窓がつくる影は、壁面に変化を与えるとともに、時間や季節の移り変わりを子どもたちに教えてくれる、もうひとりの保育士の役目も担っている。
二つ目は、「和の趣」をもった内装。
寺院が多数立地する谷中地区に建てられることから、自然と和の趣をもつ内装が導き出された。
玄関は、木の縦格子を四周巡らして木質感溢れる空間とした。さらに壁面を照らす間接照明を仕込むことで、ほっとする優しい雰囲気をつくり出し、園舎の顔として相応しいデザインとした。
三つ目は、充実した園庭の確保。
隣接して広大な防災公園があるため、走り回る活動はそちらで行うことと考え、3歳以上児が主に使用する屋上園庭は、約1mずつ高さを変えた4段の庭で構成し、子どもたちの発達を促す園庭とした。
1段目の園庭は「食べる庭」。天気の良い日は調理室から給食を持ち出して青空の下でランチができる庭とした。
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以下、建築家によるテキストです。
台東区谷中の認可保育所の建替計画。
私たちは複数者によるプロポーザルを経て設計者に選定された。
この保育園のコンセプトは以下の3つである。
一つ目は、コンクリート打放しと出窓で構成した外観。
無機質なグレーの壁にカラフルな出窓をランダムに加えることで、優しさと賑やかさが強調された外観をつくりだした。さらに、出窓がつくる影は、壁面に変化を与えるとともに、時間や季節の移り変わりを子どもたちに教えてくれる、もうひとりの保育士の役目も担っている。
二つ目は、「和の趣」をもった内装。
寺院が多数立地する谷中地区に建てられることから、自然と和の趣をもつ内装が導き出された。
玄関は、木の縦格子を四周巡らして木質感溢れる空間とした。さらに壁面を照らす間接照明を仕込むことで、ほっとする優しい雰囲気をつくり出し、園舎の顔として相応しいデザインとした。
1,2階の保育室は、出隅にコーナーガードを兼ねた付け柱を設置し、照明を組み込んだ市松模様の格子天井、ひのきのフローリング等で、和の趣を持った保育室とした。
三つ目は、充実した園庭の確保。
隣接して広大な防災公園があるため、走り回る活動はそちらで行うことと考え、3歳以上児が主に使用する屋上園庭は、約1mずつ高さを変えた4段の庭で構成し、子どもたちの発達を促す園庭とした。
1段目の園庭は「食べる庭」。天気の良い日は調理室から給食を持ち出して青空の下でランチができる庭とした。
2,3段目は「遊ぶ庭」。様々な遊具を散りばめることで、運動能力、危機回避能力、子どもどうしのコミュニケーション等の発達を促す庭とした。最も大きな2段目の庭はプール遊びの場でもあり、真夏の紫外線から子どもたちを守れるよう、大型の日除けシェードも常設した。
最上段は「育てる庭」。果樹、野菜、ハーブ等を子どもたち自らが育て収穫する庭である。花や実には鳥や虫が訪れ、子どもの五感の発達を促す庭とした。
さらに最上段の育てる庭と1段目の食べる庭をらせん階段でつなぐことで、4つの庭の回遊性を確保した。
一方地上には、1,2歳児専用の園庭を確保した。小さいながらも植栽や砂場を設け、大きい子に邪魔されずに1,2歳児のみでゆっくり遊べる園庭とした。
■建築概要
題名:立華学苑(たちばながくえん) 子どもたちの発達を促す4段の屋上園庭
設計:石嶋設計室
担当/石嶋寿和、五十嵐是範
所在地:東京都台東区谷中
主用途:保育所
構造設計:MOF
担当/江田拓也、諸藤仁美、松田真也
設備:テーテンス事務所
担当/村瀬豊、勅使川原良一、西村憲人
外構:NOHARA
担当/高橋裕美
照明:Mantle
担当/久保隆文、吉清紫
厨房:ホシザキ湘南
担当/宮尾信一郎
施工:松下産業
担当/大浜夏樹、善林涼、藤田芽里、井口健太朗
構造:鉄筋コンクリート造
階数:地上3階
敷地面積:440.79㎡
建築面積:242.03㎡
延床面積:496.40㎡
設計:2019年4月~2021年4月
工事:2021年6月~2022年2月
竣工:2022年4月
写真:黒住直臣