SHARE 藤本壮介建築設計事務所による、福岡の、太宰府天満宮の「仮殿」。“御本殿”の大改修に伴い“御神霊”を仮安置する為に計画。相応しい“佇い”の創造を目指し、古くからの伝説に着想を得て周辺の自然が飛翔した様な建築を考案。屋根の植物が季節により移ろいを見せる
藤本壮介建築設計事務所の設計で完成した、福岡の、太宰府天満宮の「仮殿」です。
“御本殿”の大改修に伴い“御神霊”を仮安置する為に計画されました。建築家は、相応しい“佇い”の創造を目指し、古くからの伝説に着想を得て周辺の自然が飛翔した様な建築を考案しました。また、屋根の植物が季節により移ろいを見せる事も意図されました。
御本殿の改修期間の3年間のみ使われる建築です。また「御帳」と「几帳」は、Mame Kurogouchiが手掛けています。施主の公式サイトはこちら。
太宰府天満宮周辺に広がる、豊かな自然が御本殿前に飛翔し、仮殿としての佇いを作り上げることをコンセプトとしています。
これは太宰府に古くから残る、道真公を慕う梅の木が一夜のうちに太宰府まで飛んできた、飛梅伝説から着想を得たものになります。
仮殿では梅の木の他にも天満宮周辺の植物が回廊内に軽やかに舞い、道真公の為の住まいの屋根を創りあげています。屋根の上の植物は、天満宮周辺の環境と共に、季節や天候によって様々な移ろいを見せることでしょう。
斎場内は、現代的なプロポーションと伝統的な空間が水平線上に広がり、御扉を中心とした祭壇が、森の影の中から印象深く映えることを意識しています。内部に近づくとルーバー状の天井が曲面状に現れますが、これは御本殿の伝統的な垂木を踏襲しており、厳粛な空間を想起させることを期待しています。
さらに内部に踏み入ると、斎場の天窓から美しい空と共に森が目に飛び込み、再び天満宮の豊かな自然を体全体で感じることができます。
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以下、関連テキストです。
完成した仮殿
御本殿の大改修に際して、御祭神の御神霊を仮安置するために設けられる御社殿、「仮殿」が完成いたしました。5月13日(土)に仮殿遷座祭が行われ、今後約3年間は、神事や参拝はこの仮殿にて行われます。
仮殿のデザイン・設計は、藤本壮介氏率いる藤本壮介建築設計事務所が手がけました。天満宮が紡いできた1100年以上の歴史と伝統を未来に繋げていくことを意識し、御本殿を踏襲した伝統的な造りと現代的なデザイン性が共存した、全く新しい仮殿が完成しました。特に印象的である屋根の上の植物には、天満宮の花守たちによって境内地で育てられた梅も含まれています。
周辺の環境と共に、季節や天候によって様々な移ろいを見せ、訪れるたびに新しい姿を見せる仮殿とともに、天満宮の豊かな自然を感じることができます。
藤本壮介によるコメント
設計の依頼をいただいてから2年以上の時を経ての仮殿の完成となります。
太宰府天満宮の持つ長い歴史と伝統を受け止めることから始まり、現状案にたどり着くまでに様々な検討を積み重ねていきました。
1100年以上の歴史に現代建築が応えられるのかという大きな問いを前にして、自分の持つ全てを振り絞って設計にあたりました。
3年という限られた期間ではありますが、道真公のための森のような屋根を通じて飛梅伝説や歴史と繋がったり、美しく豊かな自然を感じたり、ここに訪れる多くの人々の記憶に強く残るような、風景になればと思っています。
藤本壮介による作品に関するテキスト
太宰府天満宮周辺に広がる、豊かな自然が御本殿前に飛翔し、仮殿としての佇いを作り上げることをコンセプトとしています。
これは太宰府に古くから残る、道真公を慕う梅の木が一夜のうちに太宰府まで飛んできた、飛梅伝説から着想を得たものになります。
仮殿では梅の木の他にも天満宮周辺の植物が回廊内に軽やかに舞い、道真公の為の住まいの屋根を創りあげています。屋根の上の植物は、天満宮周辺の環境と共に、季節や天候によって様々な移ろいを見せることでしょう。
斎場内は、現代的なプロポーションと伝統的な空間が水平線上に広がり、御扉を中心とした祭壇が、森の影の中から印象深く映えることを意識しています。内部に近づくとルーバー状の天井が曲面状に現れますが、これは御本殿の伝統的な垂木を踏襲しており、厳粛な空間を想起させることを期待しています。
さらに内部に踏み入ると、斎場の天窓から美しい空と共に森が目に飛び込み、再び天満宮の豊かな自然を体全体で感じることができます。
Mame Kurogouchiが手がける「御帳」「几帳」
文化芸術の神様である天神さまや“文化芸術の発信地”として当宮が紡いできた歴史からインスピレーションを受け、現代の織機を用いながら、古代染色などの古来の手法と融合させ、令和の今でしか作れない生地が生まれました。
御帳には天満宮を象徴する梅の木が全面にあしらわれ、色・柄ともに左右に向かって美しいグラデーションを成す構図が、天満宮全体がもたらす生命の広がりを表現します。几帳に用いられたシルクには、境内で採集された梅と樟の枝や、貴重な紫根を用いた古代染色が施され、現代を象徴する化学繊維と共に織り上げられます。
流れる様な糸の飛ばしが特徴的な織りはデザイナー黒河内真衣子氏が体感した境内に降り注ぐ生命の雨をイメージ。菖蒲や境内に咲く草花といった要素と共に生地の上で融合することで、天神さまと天満宮の歴史が未来へと向かって織り上げられます。
Mame Kurogouchiの黒河内真衣子によるコメント
図案や素材には天満宮を象徴する梅のモチーフの他に、西高辻家の記憶を込めています。
境内の中に特に大きな樟の大木があります。落雷を受けて、根元に大きな穴があいているのですが、その穴の中に入らせていただいたことがあります。その際、西高辻さまも幼少期にこの大木の穴でかくれんぼをしていたという話を伺いました。そんな時、突然雨が降ってきて、私はその中で雨宿りをしたのですが、まるで生命の膜に守られているような強い印象を抱きました。
西高辻さまがその中で過ごした時間に想いを馳せ、その大木の中から見える景色と、天満宮全体を包む生命の景色を描きたいと思い、筆を走らせました。
プロジェクトに関するテキスト
当宮では、この節目となる式年大祭を前に、令和5年5月より約3年間をかけ、124年ぶりに重要文化財「御本殿」の大改修を行います。そしてこの度、御本殿前に3年間限定で使用し、改修期間にご参拝の皆様をお迎えする「仮殿」が完成いたしましたことをお知らせいたします。
漢詩や和歌に秀でた才能を発揮された天神さまを慕って、古くから多くの文人や芸術家がそれぞれ時代の最先端の作品をご奉納されるなど、当宮はいつの時代も“文化芸術の発信地”として親しまれてまいりました。
今回の仮殿建設にあたっても、文化芸術の神様である天神さまの御神徳を、未来へ継承していきたいという想いから、現代の日本を代表するクリエイターの方々に参画いただきました。仮殿のデザイン・設計は、国内外で活躍する建築家であり、大阪・関西万博の会場デザインプロデューサーも務める藤本壮介氏率いる藤本壮介建築設計事務所が手がけました。太宰府天満宮周辺に広がる、豊かな自然が御本殿前に飛翔し、仮殿としての佇いを作り上げることをコンセプトに、屋根に青々とした森が現れる新しくも穏やかで美しい仮殿が誕生しました。
さらに、仮殿のために仕立てられた御帳(みとばり)と几帳(きちょう)は、パリコレクションに参加するなど世界的に支持されるファッションブランドMame Kurogouchiが手がけました。天神さまと当宮が紡いできた歴史に想いを馳せ、社全体を包む生命の景色を、伝統的な手法と現代の織機によって表現しています。
当宮は“文化芸術の発信地”として、今後も時代の空気をまとった新しい価値とともに、文化芸術の神様である天神さまの役割を、現代に継承し未来へつなげてまいります。