SHARE 近代建築の巨匠“ライト”の建築展「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」が、豊田市美術館で開催中。“帝国ホテル”の設計でも知られる建築家の展覧会。緻密で繊細なドローイングや図面の数々を日本初公開。ライトが提唱した住宅形式の一部が実寸で再現され空間体験も可能
- 日程
- 2023年10月21日(土)–12月24日(日)
近代建築の巨匠“ライト”の建築展「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」が、豊田市美術館で開催されています。
“帝国ホテル”の設計でも知られる建築家の展覧会です。会場では、緻密で繊細なドローイングや図面の数々が日本で初めて公開されます。また、ライトが提唱した住宅形式の一部が実寸で再現され空間体験も可能となっています。展覧会期は、2023年10月21日(土)~12月24日(日)です(詳細な情報は記事の末尾に掲載します)。【ap・ad】
アメリカ近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライト(1867-1959)。「カウフマン邸(落水荘)」や「グッゲンハイム美術館」で知られるライトは、「帝国ホテル二代目本館(現在は博物館明治村に一部移築保存)」や「自由学園明日館」を手がけ、熱烈な浮世絵愛好家の顔も持つ、日本と深い縁で結ばれた建築家です。
帝国ホテルが落成したのは、いまからちょうど100年前の1923年、関東大震災の発生当日にあたります。災禍を生き延びたことで、ライトに大きな名声をもたらしたこの帝国ホテルは、広大な敷地に客室のほか劇場や舞踏会室などさまざまな施設を備えた、それ自体が都市であるかのような壮大なプロジェクトでした。そこには、ライトが過去に出会った多様な文化からの応用が認められ、またこのときの試みは、以後のライトの建築のなかで豊かな展開をみせることになります。周囲の景観との有機的なつながり。ミクロとマクロ、部分と全体のダイナミックな呼応。自然と結びついた高層建築の構想。帝国ホテルとはまさに、彼にとって結節点に立つ建物だったことがわかります。
2012年にフランク・ロイド・ライト財団から図面をはじめとする5万点を超える資料がニューヨーク近代美術館とコロンビア大学エイヴリー建築美術図書館に移管され、建築はもちろんのこと、芸術、デザイン、著述、造園、教育、技術革新、都市計画に至るライトの広範な視野と知性を明るみにする調査研究が続けられてきました。本展ではこうした近年の研究成果をふまえ、財団およびエイヴリー建築美術図書館の全面的な協力のもと、帝国ホテルを基軸に、多様な文化と交流し常に先駆的な活動を展開したライトの姿を明らかにします。
世界を横断して活躍したライトのグローバルな視点は、21世紀の今日的な課題と共鳴し、来るべき未来への提言となるはずです。
以下に、その他の会場写真や展示構成を紹介します。
展覧会場の様子
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展覧会の見どころ
最新のライト研究に基づく内容構成
2017年にニューヨーク近代美術館で大々的に開催されて話題を呼んだ「Frank Lloyd Wright at 150: Unpacking the Archive」。同展の企画メンバーであったケン・タダシ・オオシマ氏とジェニファー・グレイ氏による全面協力のもとに本展は実現しました。展示では、2012年にライト財団からコロンビア大学エイヴリー建築美術図書館とニューヨーク近代美術館に移管された、日本初公開となる建築ドローイングや図面の数々を紹介します。緻密で繊細、構図にも工夫を凝らしたライトの建築ドローイングを間近でご覧いただけるまたとない機会です。
帝国ホテル100周年=関東大震災100周年を機に見直す帝国ホテル二代目本館の魅力
最初の構想から10年の歳月をかけて実現した帝国ホテル(現在は博物館明治村に一部移築保存)には、アメリカ中西部からラテンアメリカ、ヨーロッパ、日本まで、ライトが経験した様々な風土と文化から取り入れられた要素が凝縮されています。またこのときの経験や建築についてのアイデアは、後のライトの建築や都市計画にも形を変えて様々に展開されていきました。ライトのキャリアの中心軸に帝国ホテルを据え、その魅力に迫ります。
ライトが提案した「ユーソニアン住宅」の原本再現
ライトが主宰した実践教育の場「タリアセン・フェローシップ」。そこに学んだ磯矢亮介氏の協力のもと、会場内にライトが提言した「ユーソニアン住宅」の一部を再現します。狭さと広がり、進むにつれて次第に明らかになる空間の展開、有機的につながる内と外。ライトの建築の空間スケールを実際に体験していただくことで、ライトの理解が一段と深まります。
展示構成
1.モダン誕生 シカゴ―東京、浮世絵的世界観
ライトが建築家としてのキャリアをスタートしたのは大都市化の進むアメリカ、シカゴ。同じ頃、明治維新を経た新生日本の首都東京も急速に近代都市への歩みを進めます。ライトはこの二大都市の文化とその交流から大きな影響を受けました。なかでも特筆すべきは、シカゴで高まった日本美術愛好の熱に触れ、日本と浮世絵的世界観に大きく惹かれていったことでしょう。1905年には初来日し、帰国の際には大量の浮世絵コレクションも持ち帰りました。
展示では、浮世絵の影響が明らかなライトの建築ドローイングやライトが手がけた浮世絵のコレクション室の展示プランを紹介。また初期の重要な建築「ユニティ・テンプル」の図面や模型、師であったシカゴを代表する建築家ルイス・サリヴァンのもとで手がけた緻密な装飾ドローイングも紹介します。
2.「輝ける眉」※からの眺望
※=タリアセン、ライトの自邸兼スタジオのウェールズ語名
ライトにとって、地形や風土は建築と密接に結びついたものでした。アメリカ中西部の地で着想し、確立されたプレイリー・スタイル。深い軒と水平的な広がりをもつ住宅は、外部と内部が有機的につながるライトならではの建築といえます。また「山邑邸」など、日本の変化に富んだ地形での設計体験は、自然と融合した豊かな建築の創造を促し、「カウフマン邸(落水荘)」へと結実します。庭園デザイナー、ジェンス・ジェンセンとの協働による庭も、四季に応じて変化し、在来種と外来種とが共存する多世界、多文化の表れとして注目すべきものです。展示ではプレイリー・スタイルの代表的住宅として、「クーンリー邸」や「ロビー邸」を紹介し、日本での実践として「山邑邸」や「小田原ホテル」を取り上げます。
3.進歩主義教育の環境をつくる
ライトと教育には深いつながりがあります。教育者であった母や叔母たちの影響も大きいでしょう。ライトの建築思考と幼少期に受けたフレーベル教育の関係はしばしば指摘されるところであり、彼がのちに実践的な建築教育の場としてのタリアセン・フェローシップを開設する動機付けともなっています。展示では、「クーンリー・プレイハウス幼稚園」のためのドローイングと実際に使用されたステンドクラスや家具のほか、今につづく「自由学園」の図面や模型、また同学校の教育資料も紹介します。本章を通して、ライトはもちろん、交流のあった同時代の女性たちの先進的な活動を改めて見直すことにもなるでしょう。
4.交差する世界に建つ帝国ホテル
広大な敷地に様々な付帯施設を備えた帝国ホテルの建設は、都市計画にも似たメガ・プロジェクトでした。ライトが、建物だけでなく、家具・食器など総合的にデザインに携わったのも注目すべき点です。日本の土地にふさわしい素材として大谷石とテラコッタが選ばれ、各装飾にはライトがそれまでに経験した様々な文化からの応用が認められます。展示では、帝国ホテルの図面やドローイング、実際に使われていた家具のほか、記録写真やパンフレットなど、当時の新しい文化としてのホテルの姿も紹介します。また、帝国ホテルと同時期に設計された「ミッドウェイ・ガーデンズ」のドローイングも展示し、共鳴し合う二つの設計を通して、ライト建築の特徴を明らかにします。
5.ミクロ/マクロのダイナミックな振幅
ライトは小さなものから大きなものにまで展開可能なユニット・システムによる建築を考案しました。全体と部分とがダイナミックに呼応し合うライト建築の発想の根幹には、彼が幼少期に体験したフレーベルの教育ブロックがあったことも指摘されています。ライトはまた素材についても強い関心をもち、地域に根ざした材料を用いる一方で、コンクリートのもつ可塑性に着目することで、グッゲンハイム美術館のような一体型の巨大建築も実現しました。展示では、コンクリート・ブロックにレリーフ模様を施した「ミラード夫人邸(ラ・ミニアトゥーラ)」、「 ドヘニー・ ランチ宅地計画案」や「サン・マルコ砂漠リゾート・ホテル計画案」といった大プロジェクトのドローイングを紹介します。またライトが考案した新たな工法によって実現可能になった、一般的な家族のための手ごろな価格のコンパクト住宅「ユーソニアン住宅」の一部を再現。さらにコンクリート建築の究極の形としてライトが構想した、らせん状建築のドローイングも紹介します。
6.上昇する建築と環境の向上
水平方向への広がりが印象的なライト建築ですが、一方でライトは垂直に伸びる高層建築にも早くから関心を示しました。景観規制から実現しませんでしたが、帝国ホテルの当初案を見ると、塔のある高層建築が描き込まれているのがわかります。樹状柱を生かした「ジョンソン・ワックス本社ビル」の本部棟やタップルート(主根)構造による研究棟。また「プライス・タワー」の経験を経て構想された超高層の「マイル・ハイ・イリノイ」のプランからは、高さへのライトのあくなき挑戦もうかがわれます。
7.多様な文化との邂逅
ライトを形作ったのは、多様な文化との出会いと交流でした。本章ではライトとアメリカ国外の作家たちの交流を取り上げると共に、重要なインスピレーション源としてのイタリアに注目します。また、非西洋への眼差しとして、アメリカ先住民文化を取り入れた「ナコマ・カントリー・クラブ計画案」やイスラム圏への提案としての「大バグダッド計画案」の鳥瞰ドローイングを紹介します。ライトの未来を見通す目もまた注目すべきものです。広い大地に高層ビルが建ち、電話やヘリコプターなどの新しいテクノロジーによってネットワーク的につながる世界は、私たちの未来を示しているようです。
フライヤーとハンドアウトの一部
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帝国ホテル二代目本館100周年 フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築
The Wright Imperial Hotel at 100: Frank Lloyd Wright and the World2023年10月21日[土]―12月24日[日]
開館時間:午前10時-午後5時30分(入場は午後5時まで)
休館日:月曜日
主催:豊田市美術館、フランク・ロイド・ライト財団
共催:中日新聞社
特別協力:コロンビア大学エイヴリー建築美術図書館、株式会社帝国ホテル
助成:公益財団法人ユニオン造形文化財団
展示協力:有限責任事業組合 森の製材リソラ
後援:アメリカ大使館、一般社団法人日本建築学会、公益社団法人日本建築家協会、一般社団法人DOCOMOMO Japan、有機的建築アーカイブ
観覧料:一般: 1,400円[1,200円]/高校・大学生: 1,000円[800円]/中学生以下無料
[ ]内は前売券及び20名以上の団体料金
・前売券の詳細及び観覧料の減免対象者及び割引等については当館ウェブサイトをご確認ください。
会場:展示室8会期中一部展示替えをします
前期:2023年11月19日(日)まで/後期:2023年11月21日(火)から