ライトの、パナソニック汐留美術館での建築展「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」です。
“帝国ホテル二代目本館”等の設計で知られる近代を代表する建築家の展覧会です。最新の研究成果を踏まえ、多様な文化との交流や先駆的な活動を明らかする内容となっています。また、精緻なドローイングの数々や原寸モデルも展示されています。会期は2024年1月11日~3月10日。展覧会の公式ページはこちら。
※2024年2月17日以降、日時指定予約制となり、会期末は開館時間が延長になるそうです。詳細は末尾に追記します(2024/2/15追記)
アメリカ近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライト(1867–1959)。「カウフマン邸(落水荘)」や「グッゲンハイム美術館」で知られるライトは、「帝国ホテル二代目本館(現在は博物館明治村に一部移築保存)」や「自由学園」を手がけ、熱烈な浮世絵愛好家の顔も持つ、日本と深い縁で結ばれた建築家です。
2012年にフランク・ロイド・ライト財団から図面をはじめとする5万点を超える資料がニューヨーク近代美術館とコロンビア大学エイヴリー建築美術図書館に移管され、建築はもちろんのこと、芸術、デザイン、著述、造園、教育、技術革新、都市計画に至るライトの広範な視野と知性を明らかにすべく調査研究が続けられてきました。こうした研究成果をふまえ、本展はケン・タダシ・オオシマ氏(ワシントン大学教授)とジェニファー・グレイ氏(フランク・ロイド・ライト財団副代表、タリアセン・インスティテュート・ディレクター)を迎えて日米共同でキュレーションを行ない、帝国ホテルを基軸に、多様な文化と交流し常に先駆的な活動を展開したライトの姿を明らかにします。
精緻で華麗なドローイングの数々をお楽しみください。世界を横断して活躍したライトのグローバルな視点は、21世紀の今日的な課題と共鳴し、来るべき未来への提言となるはずです。
展覧会の見どころと特徴
1.日本初公開、フランク・ロイド・ライトによる精緻で華麗なドローイングの数々
余白を大きくとったり近いものを拡大して描く独特な構図に見られるように、ライトは浮世絵との出会いに触発されて、それまで規範とされてきたボザール様式の建築図面とはまったく異なる新しい図面の描き方を考案しました。建築が実現する前に自分の頭のなかで建物を建てていたといわれるライトのドローイングは、ときとして実現された建築以上にライトの思想を直接的に物語っています。偉大な建築の美しいドローイングの数々をご覧いただきます。
2.100年前の帝国ホテル模型を3Dスキャン計測データを用いた3Dプリントレプリカで公開
原作はライトが帰国に際して、京都帝国大学教授(現・京都大学)の武田五一に贈ったものです。武田五一はライトと深く交流し、日本におけるライトの受容に貢献しました。制作後100年の歳月を経て石膏が状態変化しており、原作を巡回させることは困難と判断されたため、武田五一ゆかりの京都大学と京都工芸繊維大学が連携し、京都工芸繊維大学KYOTO Design Labの最新の技術力によってこの模型の精巧な複製が制作されました。
3.ライト建築を体験、ユーソニアン住宅の原寸モデル
ユーソニアン住宅とは、ライトが1930年代後半から取り組んだ、一般的なアメリカ国民が住むことのできる安価で美しい住宅です。フランク・ロイド・ライトの建築教育の実践の場であるタリアセンでかつて学んだ経験を持つ磯矢亮介氏にご協力いただき、初期の木造のユーソニアン住宅であるベアード邸(マサチューセッツ州アマースト、1940年)をお手本とした原寸モデルで、玄関から居間の空間を体験いただきます。材料は磯矢氏が製材した伊豆産の杉の赤身材。
導入
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セクション1:モダン誕生 シカゴ―東京、浮世絵的世界観
ライトが建築家として歩み始める舞台となった、アメリカの近代化を象徴する中西部最大の商業都市シカゴ。アメリカとヨーロッパの各都市をつなぐ結節点でもありました。一方、東京も明治政府のもとで近代的な都市へと変貌しつつありました。1893年のシカゴ万博で日本のパヴィリオン「鳳凰殿」を知り、日本文化に触れたライトは1905年、日本を訪問します。浮世絵に着想を得て考案した新しい建築ドローイング、初の公共建築ユニティ・テンプルの100年前の模型、ライトが手がけた展覧会デザインなど、初期の取り組みを紹介します。
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セクション2:「輝ける眉」からの眺望
ライトが考える有機的建築とは環境や気候に適った、人の生活を豊かにする建築です。初期のプレイリー・ハウスはアメリカ中西部を象徴する平原や原生植物から着想されました。「輝ける眉」=タリアセンとはライトの祖先が話したウェールズ語であり、ライトの自邸兼スタジオの名前です。さらには日本の変化に富んだ地形、山や滝のある風景、日本の植物との出会いもライトの創造力を刺激し、やがて代表作「落水荘」へと結実しました。プレイリー・ハウスの代表作「クーンリー邸」、「ロビー邸」、また日本での作品「山邑邸(現・ヨドコウ迎賓館)」「小田原ホテル計画案」などを紹介します。アリゾナ州のソノラ砂漠に築いた第二の拠点タリアセン・ウェストも、アーカイヴからの貴重な映像等で紹介します。
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セクション3:進歩主義教育の環境をつくる
ライトは家庭生活や教育のあり方の変革に取り組んだ女性運動家たちともネットワークを形成しました。シカゴ郊外のオークパークの初期の自邸とスタジオは、建築の実験と、家庭生活や職場環境の近代化に対応し増改築が重ねられ、設計室や幼児教育のためのプレイルームを備えました。マリオン・マホニーはここで活躍したライトの初期の有能な女性スタッフです。また、施主のクィーン・クーンリーはライトによる建築で、近代的な教育理念に基づく「クーンリー・プレイハウス幼稚園」を実現しました。帝国ホテル設計のために滞在した日本では、ライトは羽仁もと子の依頼で「自由学園」を手がけています。「クーンリー・プレイハウス幼稚園」で用いられたステンド・グラス、自由学園の教育資料などを展示します。
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セクション4:交差する世界に建つ帝国ホテル
支配人の林愛作からの依頼を受け、日本に延べ3年以上滞在しながら帝国ホテル(建設期間1913-23年)を設計したライト。図面、写真、家具、かつて帝国ホテルの一部を構成していたテラコッタや大谷石のブロックなど、さまざまな資料の展示を通じてこの大建築を紹介します。さらに同時期の1913年から1914年にかけてシカゴで設計した娯楽施設「ミッドウェイ・ガーデンズ」のドローイングも比較展示いたします。長年ライトが温めてきた様々なアイデアやテーマがこの一世一代の大仕事のなかで実現し、さらに後年の作品で開花するあらたな試みとなる予兆をご覧いただきます。
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セクション5:ミクロ/マクロのダイナミックな振幅
ライトが生涯にわたって抱いたコンクリートへの関心と、ユニバーサルな建築システムの探求、またそのシステムを用いた住宅を紹介します。ライトは小さなものから大きなものまで展開可能なユニット・システムによる建築を考案しました。全体と部分とがダイナミックに呼応するライト建築の発想の根幹には、彼が幼少時に体験したフレーベルの教育ブロックがあったと言います。ライトはまた素材についても強い関心をもち、地域に根ざした材料を用いる一方で、コンクリートの持つ一体性に着目することで、グッゲンハイム美術館のような巨大建築も実現しました。テキスタイル・ブロック・システムによるミラード夫人邸「ミニアチューラ」からコミュニティ全体の設計への応用例「ドヘニー・ランチ宅地開発計画」まで、迫力あるドローイングで紹介します。またユニット・システムの実践例であるユーソニアン住宅の原寸モデルを展示し、実際の空間を体験いただきます。
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セクション6:上昇する建築と環境の向上
プレイリー・ハウスから帝国ホテルまで、水平方向への広がりが印象的なライト建築ですが、垂直に伸びる高層建築にもライトは早くから関心を示しました。そして生涯を通じて高層ビルの設計に取り組み続け、また、新しい工学・構造技術を開拓しています。ジョンソン・ワックス・ビルでは直径23センチの細い柱が上昇するにつれ大きく広がり天井を支える「樹状柱」を考案、当初は実現不可能と言われました。その研究タワーでは、樹木の基本構造にならうタップルート(主根)構造を採用し、構造壁としての内部間仕切りをなくし、カーテンウォールの採用によって自然光をふんだんに取り込んだ空間を作り出しています。ライトは都市機能をビルの中に集約させることで都市の無秩序な拡大を抑止し、豊かな自然環境と生活が実現できると考えました。ラーキン・ビルやジョンソン・ワックス・ビルの椅子の展示から、ライトが考えた美しいオフィス空間もご覧いただきます。
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セクション7:多様な文化との邂逅
ライトを形作ったのは、多様な文化との出会いと交流でした。ここではライトとアメリカ国外の作家たちの交流を取り上げると共に、多文化的な要素を取り入れた作品を紹介します。ゴルフ文化と先住民の建築の実践を融合させたナコマ・カントリー・クラブ計画案。また、ヴェネツィアの運河沿いに計画したマシエリ記念学生会館も紹介します。マシエリ記念学生会館は、最終的にはライトに深い影響を受けたイタリア人建築家カルロ・スカルパによってかたちを変えて実現しました。またイスラム文化との出会いから生まれた美しい都市像、大バグダッド計画も紹介します。展覧会の最後は、田園地帯に広がる生活と労働のラディカルな再構築であるブロードエーカー・シティ構想をCGアニメーションで表現したスペインのロメロ氏の作品で幕を閉じます。
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展示されているライトのドローイングの一部
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■展覧会概要
展覧会会期:2024年1月11日(木)~3月10日(日)
※会期中、一部展示替えします。前期1月11日─2月13日、後期2月15日─3月10日。2月15日以降に再入場の場合は、半券ご提示で100円割引となります。
開館時間:午前10時~午後6時(ご入館は午後5時30分まで)
※2月2日(金)、3月1日(金)、8日(金)、9日(土)は夜間開館 午後8時まで開館(ご入館は午後7時30分まで)
休館日:水曜日(ただし3月6日は開館)
入館料:一般:1,200円、65歳以上:1,100円、大学生・高校生:700円、中学生以下:無料
※障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名まで無料でご入館いただけます。
主催:パナソニック汐留美術館、フランク・ロイド・ライト財団、東京新聞
展示協力:有限責任事業組合 森の製材リソラ
会場構成:佐藤熊弥(tandem)
以下、追加情報です(2024/2/15)
2024年2月17日(土)以降の土曜日・日曜日・祝日、及び3月1日(金)~3月10日(日)までの全てで、日時指定予約を導入いたします。
また、会期末は開館時間を延長いたします。
【会期末の開館時間について】
2024年3月1日(金)10:00-20:00
2024年3月2日(土)~3月3日(日)10:00-18:00
2024年3月4日(月)~3月9日(土)10:00-20:00 ※3月6日(水)は開館します。
2024年3月10日(日)10:00-18:00
(最終入館は閉館時間の30分前)
詳しくはウェブサイトをご覧ください。
https://panasonic.co.jp/ew/museum/topics/24.html#t240209