後藤周平建築設計事務所が設計した、静岡・浜松市の「船越の家」です。
木造家屋の2階のみを改修し二世帯の住まいにする計画です。建築家は、“適切な距離感”の構築を目指し、世帯間を繋ぐ“階段室”を再考する設計を志向しました。そして、上下で分割した壁を“ずらして設置”して“視線の抜け”等のバランスを操作しました。
施主の実家である木造2階建て住宅の2階部分のみを改修して、核家族用の住宅から2世帯が同居する住宅へと更新した。
2世帯が独立して住むのではなく、玄関、浴室のみを共有し、1階に親世帯、2階に子世帯が住むという完全な同居でもない住み方において、分断するでもなく、完全にオープンにするでもない、2世帯の適切な距離感を計画することが大切だと考えた。そしてここでは、1階と2階をつなぐ階段室のあり方を再考し、その距離感を調整することを試みた。
2階の階段室の周りに、上半分しかない壁と、下半分しかない壁をずらして設置した。これによって、視線は微妙に抜け、トップライトのように階段下に光が落ちたり、階段を介して上下階で話ができたりと、適度な連続感をつくりつつ、1階と2階の間に2つの壁を介することで近すぎず、遠すぎない適切な距離感をつくろうとした。
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以下、建築家によるテキストです。
上下で異なる軌道を描く壁
施主の実家である木造2階建て住宅の2階部分のみを改修して、核家族用の住宅から2世帯が同居する住宅へと更新した。
2世帯が独立して住むのではなく、玄関、浴室のみを共有し、1階に親世帯、2階に子世帯が住むという完全な同居でもない住み方において、分断するでもなく、完全にオープンにするでもない、2世帯の適切な距離感を計画することが大切だと考えた。そしてここでは、1階と2階をつなぐ階段室のあり方を再考し、その距離感を調整することを試みた。
2階の階段室の周りに、上半分しかない壁と、下半分しかない壁をずらして設置した。これによって、視線は微妙に抜け、トップライトのように階段下に光が落ちたり、階段を介して上下階で話ができたりと、適度な連続感をつくりつつ、1階と2階の間に2つの壁を介することで近すぎず、遠すぎない適切な距離感をつくろうとした。
全体計画としては、リビング、ダイニング、キッチンをワンルームとして南側に確保し、個室、水廻りを北側に配置した。南北を分割する間仕切り壁が雁行しながら東西を横断し、階段室部分で上下が異なる軌道を描く。上半分の壁は階段室の半分をリビングに取り込み、限られた床面積の中で、リビングの空間を最大限確保する。下半分の壁は階段室に沿って展開する。そうして先述した上下の壁のずれが生まれている。
「壁を上半分と下半分に分割してずらす」ことは、空間を劇的に変える方法ではないが、住宅の住まい手の変化に対して適切な建築的操作になったと思う。住宅に必要とされる機能や住まい手が少しずつ変化していく中、既存ストックを利用していくために、それぞれのプロジェクトの状況に合わせて、このような小さな建築的アイデアをその都度発見していくことが必要だと感じている。
■建築概要
題名:船越の家
所在地:静岡県浜松市
用途:専用住宅
設計:後藤周平建築設計事務所 担当/後藤周平、小田海
構造設計:OAK plus 担当/足立徹郎、佐尾敦宏
金物製作:江間陽介
敷地面積:517.03㎡
建築面積:141.29㎡
延床面積:217.47㎡(改修部78.66㎡)
設計期間:2021年4月~10月
工期:2021年11月~2022年2月
写真:長谷川健太