川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 外観、敷地内の北側より土蔵と倉庫棟を見る。 photo©1110建築設計事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 土蔵、客席越しに厨房を見る。 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 倉庫棟、多目的室から開口部越しに庭を見る。 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所 が設計した、神奈川・川崎市の「蔵と倉」です。
土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備する計画です。建築家は、土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出しました。そして、倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定しました。店舗の場所はこちら (Google Map)。
計画地は多摩田園都市の川崎市宮前区有馬に位置する。
田園都市特有の分譲開発された風景が続く中、敷地内には古くから残る母屋・土蔵とよく手入れされた庭と畑があり、戦後の農村の雰囲気がそのまま漂っているようだった。これはそんな懐かしさを少しだけ街に開くための計画である。
具体的には、土蔵を小料理屋に改修したり庭の整備をしながら、敷地内に点在していた農作物倉庫を整理集約する新たな倉庫棟を別棟で新築している。
土地の記憶を継承するランドスケープと建築の在り方を模索し、庭の木々は古い写真を参照しながら移植、谷戸に流れる川を枯山水で表現しながら三田橋の由来となった古い橋の石材を飛び石として並べ、関東ロームの土色の舗装で繋ぐなど、地域の原風景を復元するように整備していった。
敷地内に江戸後期から残ると言われている古い土蔵を街に開かれた小料理屋にコンバージョンした。
土蔵はとてもこぢんまりとしたスケールで、小料理屋としては少し暗い印象であったので、まずは2階床を撤去し気積を大きくして2階窓から光が振り注ぐようにした。
撤去した既存2階床は名栗加工して内装仕上げとして転用し、木をくり抜いたような白木の空間とし、唯一新たに新設する厨房区画としての吹抜けに面した大きな壁には地域で取れた杉皮を乾燥させて鎧貼りにし、大きな木の中にいるような安心感のある場所としている。
増築棟では、倉庫部分は既存建物や周辺建物との調和を図り、銅板の小屋は庭との調和を図るなど、建ち方や素材によって、現状に対する肯定と未来に対する希望という二面性を同包させている。
屋根や外壁は既存の街に対して素直に感応させ、周辺の古民家の瓦屋根や漆喰壁の素材感やディテールを踏襲しつつ、窓には既製品のアルミサッシを標準ディテールのまま採用することで、新旧混在するまちの状態をそのまま建ち上がらせた。
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川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 外観、敷地内の北側より土蔵と倉庫棟を見る。 photo©1110建築設計事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 外観、敷地内の北側より土蔵を見る。 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 外観、蔵戸前より出入口を見る。 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 土蔵、客席越しに厨房を見る。 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 土蔵、客席越しに厨房を見る。 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 土蔵、客席越しに厨房を見る。 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 土蔵、左:厨房、右:客席 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 土蔵、左:厨房、右:客席 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 土蔵、左:客席、右:厨房 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 土蔵、蔵戸前より庭を見る。 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 土蔵、蔵戸前より倉庫棟と母屋をを見る。 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 外観、庭より倉庫棟を見る。 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 外観、庭より倉庫棟を見る。 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 外観、庭より倉庫棟を見る。 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 外観、庭より倉庫棟を見る。 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 外観、庭より倉庫棟を見る。 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 外観、倉庫棟の多目的室への出入口を見る。 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 倉庫棟、多目的室 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 倉庫棟、多目的室から開口部越しに庭を見る。 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 倉庫棟、多目的室から開口部越しに母屋側を見る。 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 倉庫棟、多目的室から出入口側を見る。 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 倉庫棟、多目的室、夜景 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 外観、庭より倉庫棟を見る、夜景 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 外観、敷地内の北側より土蔵と倉庫棟を見る、夜景 photo©鳥村鋼一写真事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 配置図 image©1110建築設計事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 平面図 image©1110建築設計事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 倉庫棟東側立面図 image©1110建築設計事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 倉庫棟南側立面図 image©1110建築設計事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 手揉み銅板屋根の詳細。ワークショップで制作中の様子 photo©NSシートメタル
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 手揉み銅板屋根の詳細。ワークショップで制作中の様子 photo©NSシートメタル
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 手揉み銅板屋根の詳細。ワークショップで制作中の様子 photo©NSシートメタル
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 手揉み銅板屋根の詳細 photo©1110建築設計事務所
川口裕人 / 1110建築設計事務所による、神奈川・川崎市の「蔵と倉」。土蔵の飲食店への改修と倉庫棟の新築に加えて庭も整備。土蔵では、上階床を撤去し気積を大きくして光が降り注ぐ空間を創出。倉庫棟では、既存や周辺の建物の肯定と未来への希望を意図して建ち方や素材を選定する 手揉み銅板屋根の詳細 photo©1110建築設計事務所
以下、建築家によるテキストです。
田園都市の蔵と倉
計画地は多摩田園都市の川崎市宮前区有馬に位置する。
田園都市特有の分譲開発された風景が続く中、敷地内には古くから残る母屋・土蔵とよく手入れされた庭と畑があり、戦後の農村の雰囲気がそのまま漂っているようだった。これはそんな懐かしさを少しだけ街に開くための計画である。
具体的には、土蔵を小料理屋に改修したり庭の整備をしながら、敷地内に点在していた農作物倉庫を整理集約する新たな倉庫棟を別棟で新築している。
土地の記憶を継承するランドスケープと建築の在り方を模索し、庭の木々は古い写真を参照しながら移植、谷戸に流れる川を枯山水で表現しながら三田橋の由来となった古い橋の石材を飛び石として並べ、関東ロームの土色の舗装で繋ぐなど、地域の原風景を復元するように整備していった。
蔵や倉庫という人の出入りが少ない閉じた建築だからこそ、その構えや佇まいによる周辺環境への影響は大きい。
敷地内に江戸後期から残ると言われている古い土蔵を街に開かれた小料理屋にコンバージョンした。
土蔵はとてもこぢんまりとしたスケールで、小料理屋としては少し暗い印象であったので、まずは2階床を撤去し気積を大きくして2階窓から光が振り注ぐようにした。
撤去した既存2階床は名栗加工して内装仕上げとして転用し、木をくり抜いたような白木の空間とし、唯一新たに新設する厨房区画としての吹抜けに面した大きな壁には地域で取れた杉皮を乾燥させて鎧貼りにし、大きな木の中にいるような安心感のある場所としている。
増築棟では、倉庫部分は既存建物や周辺建物との調和を図り、銅板の小屋は庭との調和を図るなど、建ち方や素材によって、現状に対する肯定と未来に対する希望という二面性を同包させている。
屋根や外壁は既存の街に対して素直に感応させ、周辺の古民家の瓦屋根や漆喰壁の素材感やディテールを踏襲しつつ、窓には既製品のアルミサッシを標準ディテールのまま採用することで、新旧混在するまちの状態をそのまま建ち上がらせた。
結果として「新築でありながら既存のような佇まい」を持つボリュームが生まれた。
また「ここから庭が最も美しく眺められる」とクライアントに教えてもらった場所には庭を見るための小屋を設けた。庭に正対することを優先し、メインボリュームに対して斜め45度に角度を振って倉庫部分に接続させている。
この小屋には手揉み銅板屋根や木製建具という既存とは異なる文脈の懐かしさを与えている。
銅板はオリジナルの表面加工と仕上げを開発し、クライアントや施工者などの関係者や近隣住民とともにワークショップにて制作した。
多くの人の手の跡が残ることで長く愛される建築になることを期待している。
■建築概要
題名:蔵と倉
所在地:神奈川県川崎市
主用途:物品販売業を営む店舗
設計:1110建築設計事務所 担当/川口裕人
施工:みらいテクノハウス
協力:海野構造研究所(構造)、株式会社ひかり(照明)、株式会社NSシートメタル(屋根)
構造:木造
階数:蔵 地上2階建、倉庫 平屋
敷地面積:270.0㎡、388.61㎡
建築面積:37.91㎡、80.56㎡
延床面積:25.03㎡、77.25㎡
設計:2022年4月~2023年4月
工事:2023年5月~2023年10月
竣工:2023年10月
写真:鳥村鋼一写真事務所
建材情報 種別 使用箇所 商品名(メーカー名) 外構・床 床 土間コン 刷毛引き仕上げ+撥水材塗布
外装・壁 外壁 塗装+ラスモルタル下地+改質アスファルトフェルト+ラス板+通気胴縁
外装・屋根 みかん倉庫・物置、厨房 屋根 桟瓦葺き
外装・屋根 多目的室 屋根 手揉み銅板 希釈硫黄駅塗装 シリコン拭き取り仕上げ(NSシートメタル )
内装・床 多目的室 床 複層フローリング+OS(アナログ)
内装・壁 多目的室 壁 フレキシブルボード 撥水材塗布
石膏ボード+AEP
内装・天井 多目的室 天井 垂木・隅木現し+OS
内装・設備 厨房 厨房(ホシザキ )
内装・照明 照明 照明(コイズミ照明 、ひかり )
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