小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 外観、北側より見る。 photo©三嶋一路
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 外観、北東側より見る。 photo©三嶋一路
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 展示エリア photo©三嶋一路
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 展示エリアより上部を見上げる。 photo©エスエス
小野寺匠吾建築設計事務所 による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」です。実施設計は、鹿島建設 ・小野寺匠吾建築設計事務所グループが手掛けています。
環境問題や廃棄解体問題も主題に計画されました。建築家は、建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案しました。施設の公式サイトはこちら 。
私たちは「Restorative Design Exploration(RDE)= 建築やデザインを通して地球環境を回復に向かわせるための探求」をレガシーに掲げ、「海」で広がる低環境負荷建築システムに挑戦している。
万博とは世界中の人と物の移動と流れの中で、その時その場所でしか得られない何かを持ち帰るという価値ある場所であり、瞬間であり、歴史である。特に2025年の大阪・関西万博では、壊滅的な地球環境の問題にどう取り組むか、この機会を利用してどの様なチャレンジをするか、いのちに関するメッセージをどの様に伝え、会期後の廃棄解体問題にどう取り組むかということが求められている。
そこで私たちは、建築とは単に「つくる」行為ではなく、社会と自然の中で循環していくプロセスであるという考えを、このパビリオンを通して可視化することに取り組んでいる。
様々な取り組みにより、この建築は2024年問題、モーダルシフトによるCO2排出量削減、プレファブ・ユニット建築による建設の効率化、会期後のリユース効率化まで、現在建築業界が直面している多くの課題にコミットしている。
さらには、海水練りHPCが、全世界的な課題である真水の過剰消費を海水に置き換えるアイディアを万博というパブリックスペースで実証したこと、また大阪湾の海水を使って大阪湾の上に建っている事によって、海洋資源由来の建築それ自体がメッセージとなり、貴重な真水資源の保全へのメッセージを発信している。
私たち建築家が取り組むべき現代の課題は木材によるソリューションだけではない。CO2排出や大量の淡水を消費するコンクリートという材料は今後も間違いなく世界中で使われ続ける。そんな現代的な課題を持つ材料だからこそ、建築家としてあえて正面から向き合い、近い将来訪れる淡水危機と、それによって引き起こされるであろう食料危機へのアラートをメッセージとして発信する。
海の資源を使用することで、普段目に見えない問題に目を向ける状況を作り出し、建築やデザインを通して、皆が一般的に「地球環境を回復に向かわせる思考」を持つことができる世界を目指している。これが私たちのリストラティブデザインによる挑戦である。
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小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 外観、北側より見る。 photo©三嶋一路
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 外観、東側より見る。 photo©三嶋一路
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 外観、北東側より見る。 photo©三嶋一路
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 外観、北側より見る。 photo©三嶋一路
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 外観、北側より見る。 photo©三嶋一路
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小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 展示エリア photo©三嶋一路
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 展示エリア photo©三嶋一路
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 展示エリア photo©三嶋一路
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 展示エリア photo©三嶋一路
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 セルと外壁の詳細 photo©三嶋一路
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 展示エリアより上部を見上げる。 photo©エスエス
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 外観、北側より見る。夕景。 photo©三嶋一路
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 外観、南東側より見る。夕景 photo©三嶋一路
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 外観、北東側より見る。夜景 photo©三嶋一路
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 外観、北側より見る。夜景 photo©エスエス
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 外観、北東側より見る。夜景 photo©エスエス
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 展示エリア。夜景 photo©エスエス
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 展示エリアより上部を見上げる。夜景 photo©エスエス
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 平面図(建築家による解説:展示空間を取り囲むようにセルが半屋外空間を形成する) image©小野寺匠吾建築設計事務所
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 立面図(建築家による解説:2.4mの立方体が5段重なり高さ12mの建築を構成する) image©小野寺匠吾建築設計事務所
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 セル詳細図(建築家による解説:セルの積層パターン。30度傾けて2点で接続するというシンプルなルール) image©小野寺匠吾建築設計事務所
小野寺匠吾が、建築のコンセプトを解説している動画「Architectural Journey」
VIDEO
video©Artifact
以下、建築家によるテキストです。
2025大阪・関西万博 シグネチャーパビリオン「いのちめぐる冒険」
この建築は2025大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険」というテーマ事業のシグネチャーパビリオンである。
私たちは「Restorative Design Exploration(RDE)= 建築やデザインを通して地球環境を回復に向かわせるための探求」をレガシーに掲げ、「海」で広がる低環境負荷建築システムに挑戦している。
万博とは世界中の人と物の移動と流れの中で、その時その場所でしか得られない何かを持ち帰るという価値ある場所であり、瞬間であり、歴史である。特に2025年の大阪・関西万博では、壊滅的な地球環境の問題にどう取り組むか、この機会を利用してどの様なチャレンジをするか、いのちに関するメッセージをどの様に伝え、会期後の廃棄解体問題にどう取り組むかということが求められている。
そこで私たちは、建築とは単に「つくる」行為ではなく、社会と自然の中で循環していくプロセスであるという考えを、このパビリオンを通して可視化することに取り組んでいる。
大阪湾の上に会場があることを踏まえ、我々のパビリオンでは「海」で広がる低環境負荷建築システムに挑戦するため、具体的には大きく4つのコンセプトを基に建築を計画した。
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小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 「いのちめぐる冒険」4つのコンセプト image©小野寺匠吾建築設計事務所
1、多様な細胞が作る一連の体験
セル(細胞)と呼ばれる方向性のない構造モジュールがパラパラと積み上げられ、多くの隙間や連なりを生み出している。複雑で豊かな空間を持った海辺の岩礁のような建築を作り出すことで、来館者が興味や探究心を持って自発的に中に入りたくなるような建築を作ることを意識した。
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小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 セルが礁(かくれいわ)のような立体的なファサードと曖昧な半屋外空間をつくる。(建築家による解説) photo©エスエス
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 初期のスタディ模型の数々。セルの積み方を変えて様々な形態や形式を検討している。(建築家による解説) photo©Ichiro Mishima
このセルは30度に傾けて2点で接続するという単純なルールだけで複雑で多様な形態を実現している。セルは展示室をまとう立体的なファサードとも言えるし、境界が曖昧で外形のない建築とも言える。
セル同士はボルト接合により緊結することで、力を確実に伝達しつつ、組み立て時やリユース解体時の作業が容易かつ効率的に行えるよう配慮している。
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小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 セルは単体ごとではなく、ある程度のまとまりの群として複合的に立体解析を行うことで大スパンを形成している。(建築家による解説) image©小野寺匠吾建築設計事務所+yasuhirokaneda STRUCTURE、photo©エスエス
2、海運モジュールによる建築
海の物流と万博の歴史に紐づけて、セルの鉄骨フレームは既存のコンテナ工場で製造可能な新しい構造形式を考案した。
あえて既存の生産ラインの中で製作できる建築のディテールを開発した事で、低コストかつ高効率なプレファブ生産を実現しながらユニークな建築システムを可能にしている。セルは海運のモジュールと運搬システムを踏襲し、2.4m立方の方向性のない構造体を最小単位としている。これにより、5つ連結することで40フィートのコンテナ船に積むことができるので、海運を利用して夢洲の隣にある咲洲の港まで運ばれ、そこから敷地までの最短距離だけをトラックで搬送する計画とした。
会期後は丁寧に分解され、また次の敷地へ海を渡って運んでいくことが出来るという一連のストーリーを想定した計画となっている。
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小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 青島港を出港するコンテナ船。最上段の中央に見える緑色のシートを被っている40ftコンテナが「いのちめぐる冒険」のセル。(建築家による解説) photo courtesy of 小野寺匠吾建築設計事務所
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 セルは実際に中国の青島にあるコンテナ工場でプレファブされ、船によって海を渡って運ばれてきた。大阪港で降ろされたセルフレームは陸上で搬送され、敷地にて塗装及びパネル設置を施された後に特殊治具を使用して積み上げられた。(建築家による解説) image©小野寺匠吾建築設計事務所, photo©三嶋一路, 小野寺匠吾建築設計事務所
3、海洋資源の上に成り立つ建築
セルはHPC(ハイブリッド・プレストレスト・コンクリート)という厚さ40mmの超薄肉コンクリートパネルで外装を形成されている。
このHPCは鉄筋・PC鋼材の代わりにカーボンワイヤーを使用しているため、塩害や鉄筋による腐食というコンクリートが持つ永遠の課題から解き放たれた革新的な新素材である。私たちはこの特性を生かし、このパビリオンのために約2年間にわたる材料実験を重ね、一般的な真水で作るコンクリートではなく、海水100%による海水練りコンクリートを開発した。
そして、メッセージ性を高めるために、実際に大阪湾(夢洲)の海水を汲み上げて打設したパネルを実装することに成功した。
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小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 海水以外にも浚渫土やCO2固定骨材などを混入し様々なレシピによる材料試験を行った。(建築家による解説) image©小野寺匠吾建築設計事務所, photo©三嶋一路, 小野寺匠吾建築設計事務所
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 総数70枚の海水練りHPCは鳥取の郡家コンクリート工業で打設した。(建築家による解説) image©小野寺匠吾建築設計事務所, photo©三嶋一路, 小野寺匠吾建築設計事務所
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 2年に渡る圧縮強度試験で破壊した供試体は約60本に及ぶ。(建築家による解説) image©小野寺匠吾建築設計事務所, photo©三嶋一路, 小野寺匠吾建築設計事務所
4、リユース・リパーパス
このパビリオンでは生産から建設、解体、リユースまでの一連のプロセスを「いのちの循環」と見立てて計画している。
セルと呼ばれるモジュール形式の鉄骨構造ユニットは、細胞が分裂・再結合し、形を変えながら進化していくように、様々な形式の建築や用途に変形・合体し、未来への使途に活用されることができるような計画としている。
運搬・分解・再構築の効率が高い構造システム、超寿命化されたコンクリートパネル等により、会期終了後のリユース、リパーパスの可能性を広げることができる。
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小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 リユース計画のスタディ模型。様々な形態や用途に変形することができる。(建築家による解説) photo©小野寺匠吾建築設計事務所
影に関するデザイン
さらに、上記コンセプトに加え、半屋外空間の快適性を向上させるために、クーリングウォールパネルと名付けた温熱環境の快適性を向上させるための波型パネルを考案・設置した。
この波型パネルは、3Dプリンターで整形した型枠によって表面にフィラメントの細かい起伏がある波型形状を施すことで、一般的な平板より表面積を10%ほど増大させたパネルである。温熱環境のデザインとして積極的に日陰を作るようなセルの配置計画をスタディし、意図的に作った日陰の中の北側にこのパネルを設置する。
日陰にあるコンクリートは冷んやりしているという蓄熱体としての特性を生かし、このパネルにミストや打ち水を施すことで気化熱による蒸散効果をさらに高め、快適性向上を可能としている。
解析によると、セルに囲まれた半屋外エリアでは、日陰操作と気化熱利用を複合的に実践することにより約40%の時間が快適となる。
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小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 7月中旬14:00頃の日影の様子。半屋外空間がなるべく影の下に包まれるようにセルの配置をスタディした。(建築家による解説) image©小野寺匠吾建築設計事務所
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 セル配置による日射遮蔽と打ち水(気化熱)蒸散効果の組み合わせによる複合的な快適性のシュミレーション。(建築家による解説) image©小野寺匠吾建築設計事務所 +henrik innovation
小野寺匠吾建築設計事務所による、大阪・関西万博の「いのちめぐる冒険(河森正治館)」。環境問題や廃棄解体問題も主題に計画。建築の循環プロセスの可視化を目指し、海運規格の輸送性の高い鉄骨フレーム、大阪湾の海水100%のコンクリート、分解や再構築の効率が高い構造システム、で造る建築を考案 3Dプリンター型枠による波型HPCパネル。クーリングウォールパネルとして温熱環境をコントロールする。(建築家による解説) image©小野寺匠吾建築設計事務所
リストラティブデザインというレガシー
上記に挙げた様々な取り組みにより、この建築は2024年問題、モーダルシフトによるCO2排出量削減、プレファブ・ユニット建築による建設の効率化、会期後のリユース効率化まで、現在建築業界が直面している多くの課題にコミットしている。
さらには、海水練りHPCが、全世界的な課題である真水の過剰消費を海水に置き換えるアイディアを万博というパブリックスペースで実証したこと、また大阪湾の海水を使って大阪湾の上に建っている事によって、海洋資源由来の建築それ自体がメッセージとなり、貴重な真水資源の保全へのメッセージを発信している。
また、練り混ぜ水に海水を利用することでコンクリートの初期強度が増進し、蒸気養生など生産プロセスの一部が省略できる(ボイラーや燃料が不要になる)ことなども期待される。さらには途上国の沿岸の都市整備、移設及びリユースにも耐える塩害に強い長寿命建材となり得るように、この建築は、万博という未来社会の実験場において、様々な期待に満ちた一歩を踏み出している。
私たち建築家が取り組むべき現代の課題は木材によるソリューションだけではない。CO2排出や大量の淡水を消費するコンクリートという材料は今後も間違いなく世界中で使われ続ける。そんな現代的な課題を持つ材料だからこそ、建築家としてあえて正面から向き合い、近い将来訪れる淡水危機と、それによって引き起こされるであろう食料危機へのアラートをメッセージとして発信する。
海の資源を使用することで、普段目に見えない問題に目を向ける状況を作り出し、建築やデザインを通して、皆が一般的に「地球環境を回復に向かわせる思考」を持つことができる世界を目指している。これが私たちのリストラティブデザインによる挑戦である。
海を渡って運ばれてきた構造体が、冒険心を誘う豊かな建築空間を構成し、会期中に多くの人に経験され、会期後にまた海を渡って次の場所で新しい目的のために使われ続ける。単なる材料のリサイクルにとどまることなく、万博の持つレガシーや時間的エネルギーも含めて、次の場所で未来に継承され、未来の子供達に夢を与え続けるような美しいストーリーに向けて、私たちはさらなる計画を進めている。
■建築概要
題名:2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博) シグネチャーパビリオン「いのちめぐる冒険」(河森正治 テーマ事業プロデューサー)
建物名:いのちめぐる冒険
所在地:大阪府此花区夢洲中一丁目地先(2025年日本国際博覧会 会場内)
主用途:展示場
基本設計(意匠):株式会社小野寺匠吾建築設計事務所 担当/小野寺匠吾、上原裕、河野祐輝
基本設計(構造):yasuhirokaneda STRUCTURE 担当/金田泰裕、OK structure 担当/小沼研悟
基本設計(機械):MOCHIDA建築設備設計一級建築士事務所 担当/持田正憲
基本設計(電気):EOS plus 担当/高橋翔
実施設計(意匠・構造・設備):鹿島建設・小野寺匠吾建築設計事務所グループ 担当/(意匠)小野寺匠吾、上原裕、河野祐輝、(構造)渕上陽介、(機械)益田太平、(電気)黒田憲二
実施設計構造監修:yasuhirokaneda STRUCTURE 担当/金田泰裕
工事監理:鹿島建設・小野寺匠吾建築設計事務所グループ 担当/小野寺匠吾、上原裕、河野祐輝
構造:yasuhirokaneda STRUCTURE 担当/金田泰裕、OK structure 担当/小沼研悟
機械:MOCHIDA建築設備設計一級建築士事務所 担当/持田正憲
電気:EOS plus 担当/高橋翔
屋外照明計画:DAISUKI LIGHT 担当/大好真人、遠藤千尋
温熱環境デザイン:henrik·innovation ApS 担当/蒔田智則
RDEコンセプト:OSO Research 担当/佐々木剛ニ(文化人類学者)、三嶋一路(アーティスト)、佐藤大地(PM・デザイナー)、小野寺匠吾(建築家)、鈴木綾花(建築家・翻訳家)
施工:鹿島建設株式会社
材料開発:株式会社HPC沖縄 担当/阿波根昌樹、一級建築士事務所細矢仁建築設計事務所 担当/細矢仁、郡家コンクリート工業株式会社 担当/川本 富二男、岩見明日香 OSO Research 担当/小野寺匠吾、佐藤大地
構造:S造
階数:地上2階
敷地面積:1674.67㎡
建築面積:749.54㎡
延床面積:971.97㎡
設計:2021年3月~2023年12月
工事:2024年1月~2024年12月
竣工:2024年12月
写真:三嶋一路、エスエス
映像:Artifact