SHARE Architecture for the Mass / チャールズ・ライ+鈴木岳彦による、ネパール地震の被災者のためのシェルター
Architecture for the Mass / チャールズ・ライ+鈴木岳彦による、ネパール地震の被災者のためのシェルターです。
地震が発生した4月25日以降、ネパールでは多くの人的・物的援助が行われてきた。しかしヒマラヤ山脈の麓に位置し、世界最貧国のひとつでもあるこの国では未だ交通網が十分に整備されていないエリアが多く、テントなどの支援物資が諸外国から届いたとしても、それらはなかなか遠隔地の集落まで行き渡らない。結果としてそのような集落では、家を失った人々が自力で仮設住宅を作って生活している。言うまでもなくそれらの仮設住宅の構造は脆弱で、床板も張られていない。雨水は室内に流れ込み、何よりも余震がくれば日干し煉瓦造の壁は簡単に崩れ、さらなる危険を生む。
このような状況をふまえて、私たちは現地で手に入る材料を使った、建設が容易でより快適な住環境のシェルターを提案し、そのプロトタイプを現地で建設した。敷地のある集落は計20戸の仮設住宅を必要としていて、私たちの建設したプロトタイプをもとにして、残りの19戸を住民自身で作り上げるという計画である。
シェルターは、竹のフレームを構造としたものである。多くの集落で安く簡単に入手でき、輸送/加工/組立等の工程も容易な竹は、素人にも扱いやすい。竹同士のジョイントはプラスチック製の結束バンドと針金によるもので、部材の組み方なども含めたこれらのアイデアは、私たちが拠点とする香港で普段から目にしている建設現場の竹製の足場を参考にした。雨期に対応するため床を持ち上げ、切妻屋根をのせている。また外皮の外側にある正方形のフレームが構造を補強している。屋根材と壁材はそれぞれその集落で入手可能だったトタンとアルミニウムシートを用いている。
プロトタイプ建設にあたり、私たちはシェルターの組立説明書を作成した。イラストによる説明書は彼らが自力でシェルターを建設するのを容易にし、オンラインで他の集落とも共有できる。またこのシェルターに用いた構造は原理的にスパンを増設可能であり、シェルターだけでなくクリニックやコミュニティセンターなどとしての利用も考えられる。
今後建設される残り19戸についても、プロトタイプと全く同じものが建設されるとは限らない。むしろよりコンテクストに即した改変が彼ら自身の手によってなされている。プロジェクトの一番の目的は、プロトタイプを通じて彼らにツールを提供し、彼ら自身による再建のネットワークを作り出すことにある。このプロトタイプはカトマンズから車で1時間弱の集落ドゥワコットに建設され、香港を拠点とする支援団体OneVillage Focus Fundの出資のもとに実現した。建設費用は現地作業員の人件費、材料費を含めてUS$500、4人の大工と10人の現地ボランティアによって二日間で建設された。
シェルターを設計したArchitecture for the Massは香港を拠点とする建築家Charles Laiと鈴木岳彦により共同設立され、香港大学の学生有志と共にネパールの震災復興プロジェクトに取り組む組織である。
※以下の写真はクリックで拡大します
■建築概要
所在地:ネパール ドゥワコット(27°41’53.2″N 85°25’20.6″E)
設計:Architecture for the Mass / Charles Lai + Takehiko Suzuki
施工:地元大工+ボランティア
設計期間:2015年6月
施工期間:2015年6月26-27日
使用期間:2015年6月28日~
床面積:18m2
資金協力:One Village Focus Fund
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