SHARE 松島潤平建築設計事務所による、京都市立芸術大学での展覧会「死の劇場 カントルへのオマージュ」の展示構成
松島潤平建築設計事務所による、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAでの展覧会「死の劇場 カントルへのオマージュ」の展示構成です。建築作品としてのタイトルは「Umarły Teatr」です。
この展覧会は、2015年11月15日(日)まで行われています。(休館日:会期中の月曜日)
ポーランドの前衛芸術家、タデウシュ・カントル生誕100周年記念展『死の劇場 カントルへのオマージュ』の展示構成。
『死の教室』等で死を表徴するカントルへのオマージュ作品を並べるにあたり、
どちらが外でどちらが内かわからない窓を配置したうえで、
床から1.5mの高さまでを「N3.5」という中途半端な濃さのグレーで塗り潰した。
鑑賞者は作品を巡りながら、空間のなかに走る何かしらの境界を往来し続けることになる。N3.5は、建築においてはメインの素材【以外】に塗られる
「存在感を消すための色」
「見せたくないものを無いことにする色」
である。
※以下の写真はクリックで拡大します
以下は、松島による模型を使用したパフォーマンスの写真。
松島による模型を使用したパフォーマンスの動画。
以下、建築家によるテキストです。
Umarły Teatr
ポーランドの前衛芸術家、タデウシュ・カントル生誕100周年記念展『死の劇場 カントルへのオマージュ』の展示構成。
幼い頃に訪れた『鬼押出し園』の石段を、たびたび不意に思い出す。
その石段には部分的にグレーの染みのようなものが付いていた。
ガイドだったかどこかの誰かが言うことには、
1783年に起こった浅間山の大噴火の際、人々が石段を駆け上って逃げるなか、
わずか数段の差で溶岩に飲まれ、焼きつけられた人の形なのだという。
それがどこまで本当のことなのかは知らないが、
幼い自分には言葉を失うほど衝撃的な話であり、
踏面一つの差に此岸と彼岸の境界がばっちりと見えた瞬間、
極めて具体的な空間の形と人の死の関係を強く意識させられた瞬間だった。
そんな記憶を手掛かりにして
『死の教室』等で死を表徴するカントルへのオマージュ作品を並べるにあたり、
どちらが外でどちらが内かわからない窓を配置したうえで、
床から1.5mの高さまでを「N3.5」という中途半端な濃さのグレーで塗り潰した。
鑑賞者は作品を巡りながら、空間のなかに走る何かしらの境界を往来し続けることになる。
N3.5は、建築においてはメインの素材【以外】に塗られる
「存在感を消すための色」
「見せたくないものを無いことにする色」
である。
濃過ぎず、薄過ぎず、“非ず非ず”がゆえに存在を殺すグレー。
あらゆる色を混ぜ合わせた末にたどり着く、何者でもないグレー。
その決してこれまで表に出てこなかった「死の色」、
「色でない色」ことN3.5で深さ1.5mのプールをつくる。
この会場、もとい劇場において座って作品を鑑賞することは、
高さ1.5mまで充填した溶岩のなかへ息を止めて潜るようなものだと思っていただきたい。
それほどまでに、劇場の下部は絶望的な世界だと思っていただきたい。
ただれて溶ける体で立ち上がり、息継ぎをして、また潜り、
圧倒的死への界面をひたすらに往復するなかで、
コントラストをもって浮かび上がる生の領域の圧倒的生を感じる、
そうした演劇の場だと捉えていただきたい。
■展覧会概要
タデウシュ・カントル生誕100周年記念展『死の劇場 カントルへのオマージュ』展
会場:京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
開催期間:
2015.10.10.(土) – 11.15.(日) 11:00〜19:00(最終入場18:30まで)
*休館日:会期中の月曜日
観覧料:無料
企画:京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、加須屋明子(京都市立芸術大学美術学部教授)
主催:京都市立芸術大学
出展建築家:
パヴェウ・アルトハメル
石橋義正
オル太
アルトゥル・ジミェフスキ
丹羽良徳
ミロスワフ・バウカ
松井智惠
ヨアンナ・ライコフスカ
会場構成・展示デザイン:松島潤平建築設計事務所
■作品概要
所在地:京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
設計種別:会場構成・展示デザイン
施工面積:218.00㎡
主 催:京都市立芸術大学
企 画:京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、加須屋明子(京都市立芸術大学美術学部教授)
設計監理:松島潤平建築設計事務所
施 工:池田精堂・安田知司
設計期間:2015.09.
施工期間:2015.09. – 2015.10.