SHARE 針谷將史建築設計事務所+ARIWRKS / 釜萢誠司による、神奈川の住宅「擁壁上/Above the Wall」
針谷將史建築設計事務所+ARIWRKS / 釜萢誠司が設計した、神奈川の住宅「擁壁上/Above the Wall」です。
この小さな家の配置を見て、ほとんどの人は、なぜ中央に置かないのか、敷地からはみ出してないか、法的に問題ないか、などと思いを巡らせる。それはつまり、人々のまちの風景に対する意識と、「制度」や「インフラ」というものが強く結びついていることを表している。わたしたちは、無意識のうちにそれらと建築の主従関係を下敷きにしてまちを見ている。でも果たして、風致地区や雛壇造成といった、近代的な制度やインフラを無自覚に受け入れて建つ建築によって、まちの風景や環境がつくられてしまってよいのだろうか。
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以下、建築家によるテキストです。
この小さな家の配置を見て、ほとんどの人は、なぜ中央に置かないのか、敷地からはみ出してないか、法的に問題ないか、などと思いを巡らせる。それはつまり、人々のまちの風景に対する意識と、「制度」や「インフラ」というものが強く結びついていることを表している。わたしたちは、無意識のうちにそれらと建築の主従関係を下敷きにしてまちを見ている。でも果たして、風致地区や雛壇造成といった、近代的な制度やインフラを無自覚に受け入れて建つ建築によって、まちの風景や環境がつくられてしまってよいのだろうか。
敷地は鎌倉の自然豊かな谷戸の中にある。もともと大きな屋敷が建っていた敷地を3分割して宅地化された1区画で、北東側には森林が広がり、南西側は住宅地になっている。前面道路とは最大で4m程の高低差がある、擁壁によって支持された雛壇造成地だ。
「擁壁」とは文字通り「壁」を指し示す言葉である。「擁壁上」とは同じく文字通り擁壁の「上」のことであり、本来は想定されない関係を示す。その関係性を利用して、建築を擁壁の「上」へ軸をズラして置くことで、擁壁と建築の主従関係をフラットにできるのではないか、と考えた。擁壁のような土木構築物に限らず、都市計画による街区割りや道路、制度がつくりだす敷地境界などと建築との、主従関係を越えたところにある建築の建ち方が、現在の都市や郊外おける新しい風景や環境を創りだすのではないか、ということだと思う。
■建築概要
名称:擁壁上/Above the Wall
所在地:神奈川県
用途:住宅
竣工:2014年11月
構造:木造
規模:2階建て
敷地面積:164.62㎡
建築面積:39.36㎡
延床面積:78.45㎡
設計監理:針谷將史建築設計事務所+ARIWRKS/釜萢誠司
構造:樅建築事務所
照明:岡安泉照明設計事務所
カーテン:安東陽子デザイン
施工:櫻工舎
撮影:長谷川健太