大松俊紀 / 大松俊紀アトリエがデザインした、椅子「LYR」です。
今日まで様々な椅子がデザインされてきた。その形状は、数え切れないほどの種類があり、すでに形自体に大した意味はなくなりつつある。かといって、単純に素材だけで、新しい椅子の在り方という問題を乗り越えられるわけではないであろう。
ある時はその存在自体がありふれた風景の一部になり、またある時はその存在が異常に存在感を表徴する。そんな椅子が作れないかと思っている。ドット(斑点)が、与えられる対象とは全く無関係に、あるモノの表面を覆い尽くしたらどうなるであろうか? 絵画やグラフィックデザインではよくあることかもしれないが、それが家具や建築のレベルで立体的に表面を侵食したら、そのモノ、空間自体がどのように変容するのであろうか?
変容の様子を素直に見届けるため、椅子の形状は出来るだけ普通のものとし、素地は出来るだけ白い木肌でかつ硬い木質を持つハードメープルを使用。すべての厚みを40mmに統一することで、出来るだけ見慣れた普通の椅子の形状を装い、各部(座面、脚、背もたれなど)の在り方の差異を無くそうとした。
椅子にドットを施すために、すべての表面にメラミン板を貼り、特殊なルーターで均一に球状の穴をあけた。そうすることで、各部の在り方は更に均質になる一方、いわゆる椅子の触感は激変した。