小野寺匠吾建築設計事務所が設計した、東京・中央区の、タワーマンションの一住戸の部分改修「勝どきの2枚壁」です。商品化された住戸をパーソナライズする試みが行われています。この小野寺の試みは、こちらのページに掲載された「リノベーションからパーソナライゼーションへ」という論考にも説明されています。
東京にあるタワーマンションの部分改修プロジェクトである。
30代前半の友人夫婦が購入した自宅だが、収納が少なく物が家中に溢れてしまっていることに悩んでいた。相談を受けて、とりあえず室内を拝見したところ、単なる収納の問題だけでなく、機械的に小さく区分けされた居室によって体感空間が狭く暗く感じられ、タワーマンションから得られるせっかくの東京の眺望もそのポテンシャルを活かしきれていない印象を受けた。
そこで、まずはこの家の中で大きな隔たりを作っていると感じた寝室とリビングの壁を解体し、2つの部屋をつなぐ穴を開けるのはどうかという提案をした。この開口は、リビングやキッチンからもっと広がりを感じられるように、隣の部屋の窓の景色が見えるように意図したものである。
その際に、単に開口部付きの壁を挿入するのではなく、壁を分厚くしていくことで、そこに収納機能を持たせることにした。そうすることで斜めの奥行をもつことになった開口部は、キッチンから窓の外の景色へと視線を通し、寝室とリビングを緩やかに繋げながら、収納機能を確保することができる。
この計画では、2枚の壁という一つの仕掛けが挿入されることによって空間や生活に変化を与え個性を生み出すことを目指した。斜めの開口があいた分厚い壁は、眺望のバリエーションを増やすだけでなく、部屋同士のつながりや家全体の明るさを確保し、住まい手の新しいコミュニケーションをデザインしている。