小山光+KEY OPERATION INC. / ARCHITECTSが設計した、神奈川・横浜市の「関内の集合住宅(ZOOM Yokohama Kannai)」です。
関内駅から徒歩3分の横浜文化体育館前の交差点に面する角地に計画された集合住宅。
この敷地には元々、「不老町2丁目第一共同ビル」という宮内建築設計による小さな県公社共同ビルが建っていた。交差点を挟んで反対側には横浜文化会館のPFI再整備事業としてメインアリーナの工事が進められており、近くの教育文化センター跡地には関東学院大学のキャンパスも建設されていて、エリア全体が大きく様変わりしてきている。
このプロジェクトでも既存が4階建てだったが、11階建てのマンションとして計画され、22-25m2程度の小さめの面積の住戸が集まる投資用の賃貸住宅として分譲される。アリーナの正面に位置することもあり、建物全体をファサードでアピールする事も求められた。
大規模集合住宅では、各住戸からの効率の良い避難のため、隔て壁を蹴破って避難ハッチを共有できる様に住戸の前面に連続するバルコニーを設けている。しかしながらファサードの意匠としてはバルコニーを前提としなければならず、特に小さな住戸が並ぶこの集合住宅では、隔て壁が2.9m毎に必要になるため、ファサードでも住戸の小ささがことさらに強調されてしまう。
また、オーナーが一棟丸ごと所有する小規模な集合住宅であれば、バルコニーを無くしても、空調の室外機はまとめて屋上に設置できるが、分譲集合住宅の場合、空調機は個々の管理になるため、室外機置き場としてもバルコニーは必要である。香港の高層集合住宅のように、室外機を壁面の架台に設置する事も可能だが、やはりメンテナンス時の安全性を考えるとバルコニーが望ましい。
このプロジェクトでは、各階のスラブを前面まで持ち出して水平ラインを印象付ける事で、近隣の防火帯建物に馴染ませる様にしている。また、バルコニーで小さな住戸ユニットが強調されず、ファサードを大きな面として表現しつつも、内部から感じる開放感を確保するために、これらの水平スラブの間に縦糸の様に薄いコンクリートパネルを配置した。
隔て壁部分には住戸区画を兼ねた奥行きの深いパネル、それ以外の部分にも様々な奥行きのパネルをランダムに設置する事で、戸境を目立たせないようにしつつ、ファサード全体をリズミカルな面として表現した。角地のコーナー部分にある住戸の妻壁や、棟内にある機械式駐車場を囲む低層部の壁にも、バルコニー前面と同様のパネルを回すことで、ファサードを水平に連続させている。