徳山史典+弓削純平 / UNQUOTEが設計した、東京・新宿区のオフィス「発掘とラミネート」です。
既存を改修して賃貸事務所とする計画です。建築家は、限られた予算でプロジェクトを実施する為、表層の除去と保護を慎重に振り分ける“発掘作業”の様な設計を志向しました。そして、解体での下地の露出とグレー塗装等を組合わせて空間を構築しました。
十分な予算のない中で進行するリノベーションのプロジェクトはどこか発掘作業のようである。
そのままにしておくわけにはいかないが、得も言われぬ魅力を持った表層を、削りとってしまうのか、何らかの処理をして保護して活かすのか。その2択を間違えないように、慎重に振り分けていく。
とりわけ今回のケースのような特定の利用者が想定されないテナントオフィスでは、その表層の2択にほぼすべてのリソースを注ぐことになる。
飯田橋駅から徒歩数分のこのオフィスには、ヤニで黄ばんだ社長室ブースや無計画に造作された作り付けの棚、部分的に貼られたデコラティブなタイル、種類の違うものが継ぎ接ぎされた木質シートの床、ヒビの入ったガラス窓、煤けた岩綿吸音板の天井、高さの違う巾木、といった表層が備わっていた。100万円程度の予算ではスケルトンに戻して1から作り込むことはできないので、「はつり」と「いかし」の部分を見極めながら設計を進めていった。
結果としては、社長室ブースを解体、タイルや不揃い造作棚を残し、床は中央部分を解体、周縁部を残しながら、仕上の木質シートは削った部分から状態のいいものを回収、再配置して継ぎ接ぎ状態を解消した。天井はすべて解体したが、かつての天井面にハッチングをかけるように照明を配置し、記号的に「いかし」を行った。