谷口弘和設計室|HTAが設計した、京都・八幡市の「八幡の二世帯住宅 ─ 更新される農地 / 構築される長屋」です。
雛壇状の高低差のある土地での計画です。建築家は、場の可能性を引き出す在り方を目指し、“敷地と住宅が一体”となる“建ち方”の設計を志向しました。そして、基礎の接地面積を減らして“ひと繋がりの庭”が“立体的に巻き付く”様な建築を造りました。
京都府南部にある雛壇上の土地に建つ、高齢者の親世帯と息子世帯のための二世帯住宅である。
建主は、両親を見守るため二世帯住宅を検討していた。近所付き合いの継続や引越しの負担など、今までの生活を大きく変えずに負担なく暮らせる土地を探していた所、実家より徒歩3分の農地が売りに出ているのを発見し、購入を決めた。
計画地は高低差のある雛壇状の不整形地であり、かつては農地として利用されていたが長年放置され、荒れていた。理由としては、宅地にする場合に擁壁を建てなければ成らず、住宅が一つ建ってしまうくらいの莫大な費用をかける割には敷地が分断され、敷地全体を活用することが難しいためである。
周囲の住宅も同様の問題に直面しており、通例に習い擁壁を設け、敷地の半分で住宅を建てて残りは駐車場や庭など、元から別敷地であったかのように住宅と他が切り離されて活用されており、土地のポテンシャルを活かしきれてないように思えた。
この場所ならではの高低差のある豊かな敷地が、家を建てるために機械的に造成されて、小さくて平らなどこにでもあるものに書き換えられ、様々な事柄を分断している。
そこで本計画では、高低差のある敷地と住宅が一体となるような建ち方を模索した。
具体的には、低い地盤に小さいヴォリュームを置き、高い地盤から長いヴォリュームを掛け渡すことで、一切の敷地造成をすることなく、必要な面積を確保しながら、住宅を敷地に着地させる。また、敷地と住宅の接地面を最小にすることで、基礎を減らしてコストダウンを図ると同時に、人や庭が入り込める隙間を設けることができる。
こうすることで敷地全体が分断されることのない、起伏のあるひと繋がりの庭となり、立体的に住宅に巻きつくことで、外部⇄内部、敷地⇄地域、世帯⇄世帯等、大小様々なスケールの事柄を結びつけるきっかけとなると考えた。