鈴木岳彦建築設計事務所が設計した、京都市の「醍醐の家」です。
山並みを望む住宅地に計画されました。建築家は、この場の“暮らしの可能性”を追求し、“広大なパノラマ”と“家族の親密な生活”が関係を持ち“日常を形成”する在り方を志向しました。そして、山々と向き合う三角形平面の居間が中心にある建築を考案しました。
京都市南西部、新旧の小規模な住宅が混在する住宅地を通り抜けた先で小川に突き当たり、遠方に醍醐の山並みのパノラマが突如開ける、その場所に敷地がある。
仕事の関係で日本各地を転居してきた若い家族が、定住の場所をこの地に決めた。山並みの広大なパノラマと、家族4人の親密な生活。スケールも性質も異なるそのふたつが、常に互いに関係しつつ、時にその比重を変えながら、家族の日常を形成すること。そこに、この場所に暮らすことの可能性を見た。
この計画では、それを空間の「形」によって実現しようと試みている。家の中心となる居間は直角二等辺三角の平面形を持ち、上に三角の片流れ屋根を載せる。平面的には山並みに向けて開かれ、断面的には山並みに向けて絞られる。一方、寝室や水回り、収納といった生活の諸室は二等辺に沿うL字型平面2階建のボリュームに納まり、居間はこのL字入隅に向かって断面的に開く。この空間の形によって、山並みや家族との濃淡ある関係性を築く様々な場所が生まれる。
例えば二等辺三角形平面の45度コーナー部にある家族の食卓では、空間の奥行きが浅く、また大きな窓を介して山並みと正面に向き合うため、食事を囲みながら山並みの存在が強く感じられる。
L字入隅に位置するらせん階段は、その下端では居間の水平連続窓の先に広がる山並みの印象が支配的だが、段を上がるにつれて諸室の立体的で内的な連なりの中に潜り込んでいく感覚を与える。
居間と2階諸室のつながりの度合は三角屋根が作り出す三角錐型の吹抜の形によって連続的に変化し、L字入隅部ほど大きくつながる一方でL字端部では諸室の独立性が高まる。