SHARE 永石貴義建築設計事務所による”市川の住宅”
photo©DAICI ANO
以下、建築家によるテキストです。
東京近郊に建つ、夫婦と幼い子供の3人のための住宅である。
敷地の南側に広がる畑の大らかさを引き寄せるように、1階を天井の高いがらんとしたリビングとし、隣家の階高より半層ずれた高さとなる2階に各寝室や書斎、浴室などの諸室を配した。求められた各室の独立性により、部屋と廊下によるnLDKの構成をベースとしているが、そのあり方やつながりを少し変えている。目標としては、階段-廊下-部屋-収納というようなツリー状の関係をゆがめることで、つながらない場所につながるかのように、この小さな住宅に広がりを与えることであった。結果として、それぞれ空間上の特性を残したまま、新たに機能が上書きされている。すなわち、ステンレス張りのトップライトのような吹き抜け、 穴によって分断され階段ともつながらない廊下のような部屋、壁面収納の中に広がる洗面室兼廊下、収納から入ってドアから廊下(のような書斎)に出る寝室、丸い穴がぽっかりとあいたウォークインクローゼットのような光庭、など。丸い穴の下に広がる床下空間は、天井と床の反転した特別な場所とした。日常的な住宅のシーンのようでありながらどこか異なる空間が、その前後の脈絡は希薄になりながら、静かに隣り合っている。
■建築概要
名称;市川の住宅
所在地;千葉県市川市
用途;専用住宅
構造;在来木材
規模;地上2階
敷地面積;79.34㎡
建築面積;35.47㎡
延床面積;69.31㎡
竣工;2009年8月
設計;永石貴義建築設計事務所
構造設計;空間工学研究所
施工;山長建設工務