SHARE 特集”ミラー&マランタ”、ヴォルタの学校 / 1996-2000
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以下、建築家によるテキストです。
バーゼルのサン・ヨハン地域は、様々なスケールの建物が激しくぶつかり合うところである。居住区域、薬品会社の工業エリア、北の環状道路やライン川にある港などがすべてこの地域にひしめき合っている。そして、これらの両極端なものの間で無計画な開発が無惨にも広がっていて、今回のプロジェクトの敷地にある1960年代から使われている、もともと火力発電所のための石油タンクとして建てられた倉庫のマッシブなボリュームも、この地域に建っている。
近年の大規模な人口の流入によって、バーゼル市は学校システムの変更を余儀なくされ、とくにこの場所には新たな教育施設が早急に必要とされた。そのため1996年に、バーゼル市は12の普通教室及び特別教室と大きな体育館を含む学校のコンペティションを行った。
このプロジェクトは実際に実現されたように市街地における試みではなく、むしろ逆に街のこの地点における都市構造の細分化を強調するものである。しかし、この場所でぶつかり合う様々な用途やスケールを持った建物群をとても敏感に調停している。
この地域でとても強い存在感を持っている倉庫が、今回のデザインの出発点であった。このプロジェクトは、かつて石油タンクだったところに建設された。それは既存の倉庫と直に接していて、ファサードを倉庫に合わせている。ただ一つの違いは新しい建物の方が少しだけ高いということである。石油タンクを取り除く際に掘り込んだ深さ6mの穴に体育館を収めることで、建物のボリュームが高くなりすぎないようにした。学校の前にあるオープンスペースには砂利が敷き詰られていて、夏場は木の葉が日陰を作り出し、休み時間には学生の遊び場となっているが、同時にこの地域のコミュニティのための共有スペースにもなっている。
力強いコンクリートのファサードによって、この建物は居住地域と工業地域の接点となりえている。型枠パネルのレイアウトのおかげで、東側と西側には大きな開口があるにも関わらずファサードは建物にマッシブな印象を与えている。そのコンパクトさと、 木とアルミの窓を壁の外側に合わせて使ったことで、火力発電所のような近隣の工業施設に言及している。しかし、これは決して周りに対して無配慮な工業主義的な考え方によるものではない 。 ファサードのコンクリートの淡い黄色が、暖かみを持ちながら同時にきめの細かい滑らかなキャラクターを作り、この建物を別のクオリティを持ったものにするのだ。
(翻訳:伊藤達信)
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