子浦 中 / シオ建築設計事務所が設計した、東京・台東区の、旧社員寮を改修したオフィスとアートスペース「花園アレイ」です。起業家とアーティストによる地域社会の創生拠点を構想されました。施設の公式サイトはこちら。
また、本建築内のギャラリー「The 5th Floor」にて、東京藝大中山英之研究室の建築展「部屋の中の100倍の世界」が行われています。会期は2021年4月11日まで(要事前予約)。
東京メトロ根津駅から徒歩で5分ほどの池之端界隈は、昔から路地の多い街である。この地域の路地は、恐ろしく濃い人間関係と他人を意識せざるを得ないコミュニティを生み出し、そして地域の文化を作ってきた。そこにひっそりと馴染みつつ、しかしこの地域には似合わないヴォリュームの築50 年の『花園寮』という名の社員寮があった。花園寮の平面計画を眺めていると、路地に面する長屋式に連結した町家の平面形状に似ていることに気付いた。現地調査をすると生垣、季節の飾り、植栽、段差、電信柱、ブロック塀、マンホールといった路地にある特徴的な要素が見つかった。
本計画では、もう誰も住んでいないこの花園寮をスタートアップ企業向けのオフィスとアートスペースに改修し、地域に新しく受け入れられていくため、地域の特徴である路地を新しく作ることにした。この路地を中心に寮を磨き直すことで新しい地域の一面が外に出ていき、地域の憩いや潤いができる公園のような場所、地域住民と入居者の出会いの場所、入居者同士が親密なコミュニケーションを築け、次のビジネスにつながる場所を目指した。
ここには今後社会にインパクトを与える特出した人が集まり、支える場になるようにスタートアップ企業に優しい家賃設定になっている。そのため内外装とも極めてシンプル、そして築50年の建物を生かすことをコンセプトにしている。
外装は、ほぼ既存のままで路地を作った。路地には、賑わいが生まれるようにベンチやアウトドアラウンジ、路地や公園のようになるように路地にある植物を植えた。内装は、新しくなっても社員寮だったことがわかるように、間仕切りや押入の跡、浴室のタイルの形のままのモルタル、新築当時のコンクリートの様子などを残すことにした。