architecture archive

杉本博司と榊田倫之による新素材研究所のモノグラフ『Old Is New 新素材研究所の仕事』をプレビュー
杉本博司と榊田倫之による新素材研究所のモノグラフ『Old Is New 新素材研究所の仕事』をプレビュー

現代美術作家の杉本博司と建築家の榊田倫之による新素材研究所のモノグラフ『Old Is New 新素材研究所の仕事』がamazonで発売されています。本記事では書籍の中身をプレビューします。

こちらは杉本が本書籍に寄せたテキスト。

表紙の絵柄について

この本のジャケットには抽象画が採用された。しかしこの絵は初めから抽象画として描かれたものではない。それは偶然に絵となったものだ。私は熱海にあるMOA美術館全面改修にあたって、全長17メートル、高さ4メートルの壁を6面、日本の伝統工法である黒漆喰でおおうことにした。漆喰は土だ、そしてコテで塗られる。現代建築は乾いた材料を好む。しかし伝統工法は湿式工法が多い。この巨大な壁面を目地なしで仕上げるには1面を1日で終わらせなければならない。熟達の職人が3人集められた。1人ひとりコテの運びが違う。伝統工法を用いてこれだけの巨大面を仕上げたことは、日本建築史上ないのではないかと自負している。漆喰そのものが稀になった現在、普通は白の漆喰に炭の粉を混ぜて黒にするのはさらに稀だ。乾くのに時間がかかる。数日後、その面に立ち現れたのはほぼ無意識のコテの痕跡だ。私はそこに意識を超えた美しさを見出すのだ。大昔、人が意識と無意識の狭間で描きはじめた洞窟壁画もこのようにはじまったのに違いない。
Old Is New、忘れられた古代の魂、私は現代にあって、その魂の姿をもう一度見てみたいのだ。
(杉本博司)

書籍より
杉山幸一郎による連載エッセイ “For The Architectural Innocent” 第9回「与条件を立てる / 素材絵画」
杉山幸一郎による連載エッセイ “For The Architectural Innocent” 第9回「与条件を立てる / 素材絵画」

 
※このエッセイは、杉山幸一郎個人の見解を記すもので、ピーター・ズントー事務所のオフィシャルブログという位置づけではありません。

 


 
与条件を立てる / 素材絵画

 

text:杉山幸一郎

 
 
ピーターズントーは、これまで数多くの建築を設計してきましたが、その中に実現した集合住宅は2つしかありません。
バーゼル近郊にある«シュピッテルホーフ集合住宅 / Spittelhof Housing (1996) »と、クールにある«マサンサの老人ホーム / Home for Senior Citizens (1993) »です。

今回は、«マサンサの老人ホーム »について考えてみたいと思います。

このアルプスの山の麓に建つ有料老人ホームは、ある程度のケアが必要であるけれど、自分一人で生活ができる人が入居対象となっている、いわば高齢者のための集合住宅のような施設です。

各住戸にはリビングダイニングと寝室があり、クローゼットを挟んで引き戸によって緩く隔てられています。さらに廊下側にはキッチンのボックスと水回りが付け加えられ、反対側にはバルコニーもある。
そこから眺める夕日は、クールに住んでいる人なら誰もが知っている最も美しい日常の一コマです。

玄関から入って、共用廊下を通って各住戸に入る。そして奥のバルコニーへ。
教科書にあるような平面計画でタイポロジーとしてはとても単純です。

同じ敷地内には他にもいくつかの建物が建っています。それらを、ひとまとまりとして使うこともあるのか、今回紹介する建物にはレクリエーションのための部屋はありません。代わりに廊下が十分な幅をもって計画され、また床から天井まで続く開放的なガラス窓のおかげもあって、大きな共有リビングのようなスペースになっています。

同じクール (Chur) に建っている、以前紹介した«ローマ遺跡のためのシェルター(第6回の記事を参考)»から7年後の1993年に竣工。80-90年代にかけて設計された木造の«ズントーアトリエ(第4回の記事を参考)»や«ベネディクト教会(第7回の記事を参考)»に比べるとこの老人ホームはひとまわり大きいプロジェクトです。

そして、現在のズントーデザインに見られるような、多様な素材の用い方から始まり、開口部や建具のデザイン、何より全体を取りまとめる建築アイデア«Architectural Idea»の明確さにおいて、現在の文脈に最も沿っている、初期のプロジェクトではないかと僕は考えています。

藤本壮介とWOHA マン・サム・ウォンによる「未来の建築―新しい空間とつながりの創造にむけて」をテーマに行われた講演の動画。国際文化会館の主催で行われたもので日本語同時通訳版

藤本壮介WOHA マン・サム・ウォンによる「未来の建築―新しい空間とつながりの創造にむけて」をテーマに行われた講演の動画です。2021年2月5日に国際文化会館の主催で行われたもので日本語同時通訳版です。英語でのオリジナル版はこちら

インド太平洋地域の未来を創るリーダーによるウェビナーシリーズ。第4回は、世界的に活躍する建築家の藤本壮介氏と東南アジアを代表する建築事務所WOHAの設立者であるシンガポールの建築家マン・サム・ウォン氏にご登壇いただきます。

住環境や労働環境の変化が著しいコロナ時代において、人と人、人と自然のつながりや空間は今後どのように変わっていくのでしょうか。それらのつながりや空間の創造に携わる両氏に、未来の建築像について伺います。

三井嶺建築設計事務所による、神奈川・逗子市の住宅「逗子の家『森の図書館』」
三井嶺建築設計事務所による、神奈川・逗子市の住宅「逗子の家『森の図書館』」 photo©三井嶺建築設計事務所
三井嶺建築設計事務所による、神奈川・逗子市の住宅「逗子の家『森の図書館』」 photo©三井嶺建築設計事務所

三井嶺建築設計事務所が設計した、神奈川・逗子市の住宅「逗子の家『森の図書館』」です。

急峻な小山の麓に建つ、数万冊の蔵書を納める図書館のような住まい。

「図書館」の片隅に「司書」として住む場所があればよいとの要望だった。ゆえにリビング・ダイニングといった室名の部屋はない。住宅として必要な寝室・キッチンなどの他は全て閲覧室と書架に充てている。

本に集中できるよう、”透明”に替わり意識に溶ける構成要素を考えた。

1. 緑色の壁と小さな景色。
森の記号としての緑色をメインに、意識に溶け込む色を配した。山や空を印象的に切り取る窓による小さな景色は、色のついた壁へと拡張され、壁の存在は薄れる。

2. 時間軸を混在させる本棚。
博物館から貸与を受けたもので、あえて残した傷やラベルが時間の厚みをもたらし、意識にストレスなく馴染む。

3. わずかにむくりをつけた三次元曲面の屋根。
山から覆いかぶさる木々の枝をモチーフに、小さな木材を敷き重ねた。山の勾配に合わせるように緩やかなカーブを描きつつ、短手にもほんのりとむくりをつけた3次元シェルの構造が閲覧室を柔らかく包み込む。さらに中央部にスリットを切り、隙間を押し広げるようにして光をわずかに取り込んでいる。木が束となった構造は、スリットを切られたことで量塊の重々しさが薄れ、移ろう光を受けることで木漏れ日の降る森の木々へと再び還元される。

窓は少なく物理的には閉じた空間ではあるが、透明であるよりも建築の存在は意識に溶け、本の中の世界へと思いを馳せることができる。

建築家によるテキストより
武保学 / きりんによる、三重・伊賀市の店舗「場所を見守る土産物店」
武保学 / きりんによる、三重・伊賀市の店舗「場所を見守る土産物店」 photo©山内紀人
武保学 / きりんによる、三重・伊賀市の店舗「場所を見守る土産物店」 photo©山内紀人
武保学 / きりんによる、三重・伊賀市の店舗「場所を見守る土産物店」 photo©山内紀人

武保学 / きりんが設計した、三重・伊賀市の店舗「場所を見守る土産物店」です。

小さな建築であっても、いやむしろ小さな建築であるからこそ都市の文脈におけるあり方を表明することが、充実した都市空間をつくりだしていくと信じている.

今回、三重県伊賀市の中心部に5坪ほどの店舗を計画した.
店内には忍者や伝統工芸の組紐など、この地方にちなんだモチーフでデザインされたお土産物が並ぶ.

建築家によるテキストより

この店舗の向かいには、坂倉準三設計による「旧伊賀市庁舎」が建っている.
役所機能は移転したが、建物は今後図書館などの複合施設として活用される予定である.
ただ老朽化による改修コストの増大や建物の保存に対する根強い反対意見もあり、2年間空き家状態が続いている.

全国的に解体される流れにある近代の名建築を現代に生かすことができれば、ここは他のどこにもない価値を持った場所になる.
そういう場所のオリジナリティに目を向けて、場所をいつくしむ人が増えることを願っている.

建築家によるテキストより

場所を意識させる仕掛けとして、店内正面に大きな鏡を設置した.
商品の衣服を合わせる姿見としての役割と同時に、外の風景の広がりを店内に取り込んでいる.
内部に足を踏み入れた人は、静けさの中で鏡に溢れる風景と対峙することによって外に居るときよりも鮮明にこの場所特有の空気を感じることだろう.
それは車窓からの眺めが、実際の景色よりも記憶に残りやすいのと似ている.

建築家によるテキストより
「妹島和世氏が手掛けた日本女子大学・目白キャンパス 正式オープン」(建設通信新聞DEGITAL)

「妹島和世氏が手掛けた日本女子大学・目白キャンパス 正式オープン」という記事が、建設通信新聞DEGITALに掲載されています。妹島のコメントも紹介されています。

最も注目を集めたトピックス [期間:2021/4/5-4/11]
最も注目を集めたトピックス [期間:2021/4/5-4/11]

アーキテクチャーフォトで、先週(期間:2021/4/5-4/11)注目を集めたトピックスをまとめてご紹介します。リアルタイムでの一週間の集計は、トップページの「Weekly Top Topics」よりご覧いただけます。


  1. チームラボアーキテクツによる、千葉・流山市の保育園「キッズラボ南流山園」
  2. 辻琢磨による連載エッセイ “川の向こう側で建築を学ぶ日々” 第7回「『札』を『入』れるという功罪 – 入札による公共建築の設計業務について」
  3. 辻琢磨による連載エッセイ “川の向こう側で建築を学ぶ日々” 第8回「公共建築という学びのフィールド」
  4. 永山祐子の設計で近くオープンする、群馬・前橋市のジンズの新施設「JINS PARK」。施設内外に地域のコミュニティの場となる広場を設ける
  5. 妹島和世による、東京・銀座の、資生堂の店舗 SHISEIDO THE STOREでのウインドウディスプレイ
  6. 黒川紀章が1972年に完成させた「カプセルハウスK」を保存・公開するプロジェクトが発足。2021年5月の公開を予定
  7. 40歳未満の建築家を対象とする「ARTPLAZA U_40 建築家展」が、全国からの出展者を募集
  8. 菊竹清訓の、島根県立美術館で行われた建築展「菊竹清訓 山陰と建築」のカタログがPDFで公開
  9. 高池葉子建築設計事務所による、千葉・八千代市の住宅「床と光の家」のオープンハウスが開催。伊東豊雄事務所出身の建築家
  10. フォルム・木村浩一建築研究所による、滋賀・長浜市の「風景と暮らす家」
  11. フォルム・木村浩一建築研究所による、滋賀・長浜市の住宅「FRAME HOUSE」
  12. SAKUMAESHIMA / 朔永吉+前嶋章太郎による、東京・神宮前の自社オフィス「SAKUMAESHIMA OFFICE」。写真家の大矢真梨子が事務所の日々の状態を記録
  13. 小野寺匠吾建築設計事務所による「本棚 [R]」
  14. 山田伸彦建築設計事務所による、宮崎市の二世帯住宅「吉村町の家」
  15. デイビッド・チッパーフィールド・アーキテクツによる、アメリカ・ニューヨークの集合住宅「11-19 Jane Street」。周辺環境のコンテクストや内部の住戸タイプとも関連する繊細なデザインのファサードが特徴
  16. 坂茂の設計で2024年の開館を予定している「豊田市博物館(仮称)」。谷口吉生の「豊田市美術館」に隣接する敷地に計画され庭園は一体となるようにデザイン
  17. 佐藤可士和 / SAMURAIによる、東京・台東区の、くら寿司のグローバル旗艦店「くら寿司浅草ROX店」
  18. 藤森照信とシンガーソングライター小田和正の対談記事。二人は東北大学建築学科での同級生として知られる
  19. 子浦 中 / シオ建築設計事務所による、東京・台東区の、旧社員寮を改修したオフィスとアートスペース「花園アレイ」。起業家とアーティストによる地域社会の創生拠点を構想
  20. 吉岡徳仁によるメゾン・エルメスでのインスタレーション”Maison Hermès Window Display”

吉阪隆正+U研究室が1957年に完成させた住宅「VILLA COUCOU」のオンライン公開イベントが開催。住宅遺産トラストの主催

吉阪隆正+U研究室が1957年に完成させた、東京・渋谷区の住宅「VILLA COUCOU」のオンライン公開イベントが開催されます。住宅遺産トラストの主催で行われるもの。開催日は2021年4月18日。要事前申し込み。

シリーズ第三回は「VILLA COUCOU」(吉阪隆正+U 研究室/ 1957 年竣工 )からお届けします。

1952年にル・コルビュジエのアトリエから帰国した吉阪の代表作のひとつであり、色ガラスを嵌め込んだ小さな開口部、トップライト、メゾネット、コンクリート打ち放しの 表情は、吉阪隆正とル・コルビュジエの親密な繋がりを彷彿とさせます。

施主・近藤等さん(仏文学者、登山家)の意向で、一切の見学取材を受けていませんでした。 この度、ご遺族の皆様のご厚意により、今回に限りオンライン上で公開させていただくことになりました。

U研究室出身の建築家であり吉阪隆正についての研究者である齊藤祐子さんの解説とともに、建築史家・編集者の伏見唯さんのナビゲートでお楽しみください。

吉阪隆正が1956年に完成させた住宅「浦邸」を、歴史家の倉方俊輔がガイドしている動画 藤本壮介が設計した群馬の「白井屋ホテル」についての、ニューヨークタイムズによるインタビュー記事。藤本とJINSの田中仁に話を聞く

藤本壮介が設計した群馬の「白井屋ホテル」についての、ザニューヨークタイムズスタイルマガジン:ジャパンによるインタビュー記事『藤本壮介の建築とアート
「白井屋ホテル」から‟めぶく”新しい街づくり』が公開されています。藤本壮介とJINSの社長の田中仁に話を聞いてまとめています。

【ap job更新】 +ft+/髙濱史子建築設計事務所が事業拡大のため、建築設計の実務経験豊富なスタッフ・新卒スタッフを募集中
【ap job更新】 +ft+/髙濱史子建築設計事務所が事業拡大のため、建築設計の実務経験豊富なスタッフ・新卒スタッフを募集中
【ap job更新】 +ft+/髙濱史子建築設計事務所が事業拡大のため、建築設計の実務経験豊富なスタッフ・新卒スタッフを募集中Nakamata Laboratory Store / photo: Hideaki Hamada

+ft+/髙濱史子建築設計事務所の、事業拡大のための、建築設計の実務経験豊富なスタッフ・新卒スタッフ募集のお知らせです。詳しくは、ジョブボードの当該ページにてご確認ください。アーキテクチャーフォトジョブボードには、その他にも、色々な事務所の求人情報が掲載されています。
新規の求人の投稿はこちらからお気軽にお問い合わせください

+ft+/髙濱史子建築設計事務所は、事業拡大のため建築設計の実務経験豊富なスタッフ、新卒スタッフを募集します。

+ft+では店舗、オフィス、住宅の新築・リノベーション、会場構成、家具やインスタレーションなど 国内外の様々な用途と規模のプロジェクトに取り組んでいます。 +ft+が探求しているのは、形態によって生まれる空気感であり、時間であり、ストーリーです。 その場所が我々の提案により纏うことになる新しい空気感に意識的になりたいと考えています。

我々は立場や経験にとらわれず、フラットでオープンな作業環境の中で、チームとして各プロジェクトのポテンシャルを最大限に引き出していく働き方を目指しています。敷地やクライアントと同様に、チーム構成も一期一会と捉え、毎回それぞれのコラボレーションでしか生まれない空間の形態や質に興味があります。

経験者の方についてはパートタイムや、プロジェクト契約などフレキシブルな働き方にも対応致します。新卒の方は、設計の思考を鍛えながら、基本計画から竣工まで一連の実務経験ができる事務所です。

楽しむ力、コミュニケーションを取る力を持った、 一緒にものづくりをしていくことのできる方の応募をお待ちしております。

デイビッド・チッパーフィールド・アーキテクツによる、アメリカ・ニューヨークの集合住宅「11-19 Jane Street」。周辺環境のコンテクストや内部の住戸タイプとも関連する繊細なデザインのファサードが特徴
デイビッド・チッパーフィールド・アーキテクツによる、アメリカ・ニューヨークの集合住宅「11-19 Jane Street」。周辺環境のコンテクストや内部の住戸タイプとも関連する繊細なデザインのファサードが特徴It occupies the site of a former garage and completes the streetscape photo©James Ewing / JBSA
デイビッド・チッパーフィールド・アーキテクツによる、アメリカ・ニューヨークの集合住宅「11-19 Jane Street」。周辺環境のコンテクストや内部の住戸タイプとも関連する繊細なデザインのファサードが特徴The south-facing entrance towards Jane Street photo©James Ewing / JBSA

デイビッド・チッパーフィールド・アーキテクツが設計した、アメリカ・ニューヨークの集合住宅「11-19 Jane Street」です。周辺環境のコンテクストや内部の住戸タイプとも関連する繊細なデザインのファサードが特徴的な建築です。

以下は、建築家によるテキストの翻訳です

グリニッジ・ビレッジ歴史地区の北西端に位置するジェーン・ストリートは、主に19世紀と20世紀に建てられた赤レンガのタウンハウスと大きなアパートが混在しているのが特徴です。この新しいアパートメントビルは、1920年代に2階建ての駐車場があった場所に建てられました。6階建てのこの建物は、地下駐車場、メゾネット式タウンハウス、ワンフロアを使用したアパートメント、ペントハウスで構成されています。周囲の構造物の大きさの違いを調整しながら、挿入されたボリュームは、通りのスケールを尊重すると同時に、その建築的背景を反映しています。

通りから見える5階建ての部分は、周辺のレンガ造りのタウンハウスを現代風にアレンジしたもので、ベース、ミドル、クラウンの明確な分節を持っています。エントランスのスケール、窓のリズム、マリオンやストリングコース(建物の外壁にある水平な装飾的な帯)の使用は、ウェストビレッジの豊かでドメスティックな建築を参考にしています。また、ファサードの色や素材にも地元のコンテクストが反映されています。

建物は左右対称の構成で、タウンハウスのエントランスは1階の両端のくぼみにあります。中央にはアパートメントとガレージのための大きなダブルエントランスがあります。窓のデザインは、住宅の構成要素ごとに異なります。例えば、メゾネット式タウンハウスにはバルコニー付きのフランス窓があり、2層あるワンフロアを使用したアパートメントにはコンクリートのマリオンで仕切られた広い開口部があります。
最上階のペントハウスは天井が高く、通りから離れています。柱と梁だけのシンプルな構造で、大きな窓からはプライベートガーデンが見渡せるようになっています。

1階部分には赤い顔料を使ったコンクリートが使用されており、彫刻のような強い存在感を放っています。上階はローマン・ブリックで覆われており、ストリングコース、リンテル(まぐさ)、マリオンは同じ赤のコンクリートで、全体に微妙な色の変化を与えています。通りの正面は、突き出たコーニスで覆われています。このコーニスは、1階と2階の間にある突起したストリングコースに呼応しており、ファサードに特別な影と分節を与えています。

屋外にはブロンズの手すりや窓やドアのフレーム、共用部にはテラゾーの床など、抑制されながらも堅実な素材が随所に使われています。タウンハウスとアパートメントには、カッラーラ大理石とナチュラルオークの床が採用されています。ルーフテラスとリアガーデンは、ベルギーのランドスケープアーキテクトであるピーター・ヴィルツによってデザインされ、すべてのアパートメントが自然とのつながりを持てるようになっています。

シンガポール工科デザイン大学教授のエルウィン・ビライ、韓国科学技術院教授のチョン・ジェスンによる「アジアにおける都市の未来」をテーマとした講演の動画。国際文化会館の主催で日本語同時通訳版

シンガポール工科デザイン大学教授のエルウィン・ビライ、韓国科学技術院教授のチョン・ジェスンによる「アジアにおける都市の未来」をテーマとした講演の動画です。国際文化会館の主催で日本語同時通訳版です。上に掲載した動画は日本語同時通訳付のもので、オリジナルの英語版はこちら

アジアは、世界で最も大都市が集中する地域です。しかし、近代以降続いてきた大都市化の流れに、3つの疑問が呈されています。第一に、既存の人口集中の課題に加えて新型コロナウィルスの流行を機に浮き彫りとなった密な環境。第二に、デジタル技術の進展により仕事のリモート化と分散化が可能となった現代の職場の在り方。第三に、より根本的に、ウェルビーイング(心身と社会的な幸福)を重視する人々が疑問をおぼえる効率化や経済成長を追求する都市型社会。コロナ対策やデジタル化などで先駆的な取り組みを行ってきた韓国とシンガポールから専門家をお迎えし、それぞれの国の取り組みや課題をもとに都市の未来についてお話しいただきます。

藤森照信とシンガーソングライター小田和正の対談記事。二人は東北大学建築学科での同級生として知られる

建築家・建築史家の藤森照信とシンガーソングライター小田和正の対談記事が、建設通信新聞DEGITALに掲載されています。二人は東北大学建築学科での同級生として知られています。

小野寺匠吾建築設計事務所による「本棚 [R]」
小野寺匠吾建築設計事務所による「本棚 [R]」 photo©三嶋一路
小野寺匠吾建築設計事務所による「本棚 [R]」 photo©三嶋一路
小野寺匠吾建築設計事務所による「本棚 [R]」 photo©三嶋一路

小野寺匠吾建築設計事務所が設計した「本棚 [R]」です。

友人のオフィスに設置するための本棚を設計した。

この棚は、棚板・背板梁・側板柱の3つのシンプルな要素で構成されている。それぞれの要素を構造的な観点から丁寧に価値付けしていくことで、市販の棚にはないアプローチで棚を再構築することを目指した。物を置くという行為=負荷と、棚の構成部材のスケールがインタラクティブに関係し合っている。

特に注意を払ったのが、背板梁を棚の中央部に設置し、スパンに応じて梁せいが最適化されるような方針とすることで、恣意的に設定された側板の間隔に対して形態が応答する、まさに植物の幹や枝の断面径が受けた外力の履歴によって最適化されていくようなシステムと同じ仕組みとなっている。

建築家と構造家によるテキストより

撮影においても同様に「荷重の可視化」にトライした。

雑誌1冊を1単位としてそれぞれの棚板が負担できる荷重を象徴的に表すような構成とした。棚板が担保する荷重があらかじめ設定されていることで、使い手側は可視化された荷重に基づいて棚を使用することになる。言い換えると、軽いものしか置けない場所が意図的に設定されていることで、ぎっしり本を詰め込むだけではなく、自動的に粗密が生まれたり、機能性を伴った感覚的な本棚が生まれたと思っている。

建築家と構造家によるテキストより
子浦 中 / シオ建築設計事務所による、東京・台東区の、旧社員寮を改修したオフィスとアートスペース「花園アレイ」。起業家とアーティストによる地域社会の創生拠点を構想
子浦 中 / シオ建築設計事務所による、東京・台東区の、旧社員寮を改修したオフィスとアートスペース「花園アレイ」。起業家とアーティストによる地域社会の創生拠点を構想正面外観。正面がエントランス、左が花園ガーデン、右がアウトドアラウンジのパーゴラである。 photo©淺川敏
子浦 中 / シオ建築設計事務所による、東京・台東区の、旧社員寮を改修したオフィスとアートスペース「花園アレイ」。起業家とアーティストによる地域社会の創生拠点を構想花園ガーデンを見る。路地のようにコンクリートベンチや植栽、くつろぐ人などがあふれ出している。1F のオフィスは花園ガーデンからアクセスすることが出来る。 photo©淺川敏
子浦 中 / シオ建築設計事務所による、東京・台東区の、旧社員寮を改修したオフィスとアートスペース「花園アレイ」。起業家とアーティストによる地域社会の創生拠点を構想オフィス。基本面積 38 m²で4人~6人向けのサイズである。隣を借りて会議室に使ってもいいし、使い方は自由になっている。 photo©淺川敏

子浦 中 / シオ建築設計事務所が設計した、東京・台東区の、旧社員寮を改修したオフィスとアートスペース「花園アレイ」です。起業家とアーティストによる地域社会の創生拠点を構想されました。施設の公式サイトはこちら
また、本建築内のギャラリー「The 5th Floor」にて、東京藝大中山英之研究室の建築展「部屋の中の100倍の世界」が行われています。会期は2021年4月11日まで(要事前予約)。

東京メトロ根津駅から徒歩で5分ほどの池之端界隈は、昔から路地の多い街である。この地域の路地は、恐ろしく濃い人間関係と他人を意識せざるを得ないコミュニティを生み出し、そして地域の文化を作ってきた。そこにひっそりと馴染みつつ、しかしこの地域には似合わないヴォリュームの築50 年の『花園寮』という名の社員寮があった。花園寮の平面計画を眺めていると、路地に面する長屋式に連結した町家の平面形状に似ていることに気付いた。現地調査をすると生垣、季節の飾り、植栽、段差、電信柱、ブロック塀、マンホールといった路地にある特徴的な要素が見つかった。

建築家によるテキストより

本計画では、もう誰も住んでいないこの花園寮をスタートアップ企業向けのオフィスとアートスペースに改修し、地域に新しく受け入れられていくため、地域の特徴である路地を新しく作ることにした。この路地を中心に寮を磨き直すことで新しい地域の一面が外に出ていき、地域の憩いや潤いができる公園のような場所、地域住民と入居者の出会いの場所、入居者同士が親密なコミュニケーションを築け、次のビジネスにつながる場所を目指した。

建築家によるテキストより

ここには今後社会にインパクトを与える特出した人が集まり、支える場になるようにスタートアップ企業に優しい家賃設定になっている。そのため内外装とも極めてシンプル、そして築50年の建物を生かすことをコンセプトにしている。
外装は、ほぼ既存のままで路地を作った。路地には、賑わいが生まれるようにベンチやアウトドアラウンジ、路地や公園のようになるように路地にある植物を植えた。内装は、新しくなっても社員寮だったことがわかるように、間仕切りや押入の跡、浴室のタイルの形のままのモルタル、新築当時のコンクリートの様子などを残すことにした。

建築家によるテキストより

Subscribe and Follow

公式アカウントをフォローして、
見逃せない建築情報を受け取ろう。

「建築と社会の関係を視覚化する」メディア、アーキテクチャーフォトの公式アカウントです。
様々な切り口による複眼的視点で建築に関する情報を最速でお届けします。

  • 情報募集建築・デザイン・アートの情報を随時募集しています。
  • メールマガジン メールマガジンで最新の情報を配信しています。